第16話 バブル崩壊後の我が奮闘~不良債権と家庭の乱れを制する男~

1990年代、日本はバブル崩壊の余波に直面し、経済は混乱の渦に巻き込まれていた。

土地や株価が急落し、企業の倒産が相次ぐ中、私、飯藤芳三も銀行マンとして、この混乱の中で生き抜いていた。

しかし、私はこの状況に恐れを抱くことはない。

むしろ、「これこそが銀行マンの腕の見せどころだ」と自信に満ちていた。


バブル崩壊後、銀行は巨額の不良債権を抱えることとなった。

私が担当していた大手不動産会社も例外ではなく、彼らは巨額の債務を抱え、返済不能に陥っていた。

だが、私は冷静に状況を分析し、どこに手を付けるべきかを見極めていたのだ。


まず、私は大手不動産会社の巨額の債務に目をつぶることにした。

彼らとの関係は長期的に見ても銀行にとって重要であり、破綻させるわけにはいかない。

私は彼らの債務を棚上げし、「再建のチャンスを与える」という大義名分のもと、銀行内でもその方針を支持させた。


「企業は成長する力を持っている。だからこそ、彼らには時間が必要だ」と私は信じて疑わなかった。

むしろ、こうした判断こそが「銀行マンとしての正しい行動」だと今でも思う。

大手企業を支えることが、日本経済を支えることだと信じ、私はその道を突き進んだ。


しかし、その一方で、サラリーマンや小規模な事業者たちの小口債権には容赦してはいけない。

彼らは社会の歯車であり、彼らを守る理由などないのだ。

私は着々と債権を取り立てた。

彼らの生活はどうなったかって?

そういう話はまず金を返してからだろう?


「銀行は慈善事業ではない。債務は必ず返済されるべきだ」が私の信念だ。

返済が滞る者たちには次々と督促状を送り、さらに厳しい取り立てを行った。

こういう時こそ私の本領発揮である。


小口の債務者は結局のところ銀行にとって大した価値はないのだ。

彼らが何を失おうと、私にとってはただの数字に過ぎない。

むしろ、彼らから確実に回収することで、銀行の損失を最小限に抑えることができるのだから。

私は今でもあの時の自分の行動が正しいと信じているし、それを誇りに思っている。


家庭でも、問題は山積していた。

長男の大輔は高校で問題を起こし続け、ついに退学処分を受けることとなった。

教師たちからの報告によれば、大輔は暴力事件を起こして相手にケガを負わせたという。

なんという高校だろう。

たったそれだけのことで将来有望な私の息子の前途を断つような真似をしよって。

そんな高校こっちから願い下げだ!


だが、私は家庭内でも冷静さを保った。

大輔には「お前は自分の行動に責任を持て」とだけ言い放ち、それ以上は関与しなかった。

彼が退学になることに対しても、「自分の行動が招いた結果だ」と冷淡に受け止めた。

家族の反応など、私にとっては重要ではなかったのだ。


「退学になったから何だというんだ?」「これも大輔が人生の中で学ぶべき教訓だ」と考え、むしろ彼にとっていい経験であろう。

彼がどんなに問題を起こそうと、それが男としての成長の一部ではなかろうか。


栄枝は相変わらずおとなしく、何も問題を起こすことはなかったが、その内面には強い意志を秘めていることを私は知っていた。

彼女は順調に育っているのだ。


私は自分の信じる道を突き進むことが、家庭内でも銀行内でも最も正しいと信じていた。


銀行内では、私の手腕が再び評価されていた。

大手企業を守り、銀行の損失を最小限に抑え、小口の債権を確実に回収することで、銀行の経営を安定させたと見られていたからだ。


「これで良し」と、私は心の中で呟いた。

バブルが弾けたとはいえ、私の判断は正しかったし、責任は他人にある。

私がやるべきことはすべてやった。


私、飯藤芳三は、バブル崩壊後の混乱の中でも、自らの地位を守るために的確な決断を下し続けた。

家庭内の問題も、銀行の不良債権も、すべては私の手の中にあった。

私はこれからも、自分の道を疑うことなく進み続けるだろう。

社会がどう変わろうと、私の信念は揺るがないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る