第6話 未来に向けての果敢なる進軍~大学卒業と進路~
安保闘争なる合戦ごっこから足を洗った私は新たに見つけた代返・代筆要員をフル活用しながら順調に単位を取るなど、健全な学生生活を送っていた。
私生活では私の愛を精一杯注いでやったのに強姦されたと思わね言いがかりをつけてきた女が出てきたり、妊娠させてしまった女に付きまとわれたり、賭け麻雀でしこたま巻き上げた下級生が大学の総務課に密告するなどのトラブルもあって、その時はまた父に面倒をかけてしまったものの何とか平穏に大学を卒業することになるのだが、私の卒業後の進路に大きな変化があった。
家業を継げなかったのだ。
私は大学在学中、経済学を学ぶ傍ら実家によく帰省して家業の一つである金融会社の仕事を手伝っており、これは父に命じられていたことである。
卒業後の私に金融会社を任せるための修行だったのだ。
ちなみに長兄は不動産部門を、次兄は産業廃棄物部門をすでに担当していた。
私が手伝い始めたのは大学一年の夏休みの時くらいだったが、早々にこの仕事はなかなか自分の性に合っていることに気づく。
それから四年間の間に客の返済能力と貸していい限度額を見る目が養われ、貸した金の回収にも大活躍。
私はどちらかというと貸した金の回収が性に合って楽しんでやっていたくらいだったが、父には私の働きぶりを張り切り過ぎだとよくたしなめられていた。
だからだろうか、就職活動の時期になった時に父は申し訳なさそうに金融会社は長姉の夫であり私よりずっと前からウチの金融会社で働いていた義理の兄にやってもらうことになったと言われた時はショックを受けたものだ。
なんでも、私は全体的にものを見通す力がまだないというのである。
すっかり継げるものと思っていたのでテーブルを破壊したり、近くにいた従業員を殴ったりして駄々をこねる私に父はある銀行への入行を勧めてくれた。
それは我が家の会社の主要取引銀行で、大学の時と同様すでに話をつけているというではないか。
親の愛を大いに感じるべきではあったが、その時の私は期待を裏切られたと思ってムシャクシャした落胆が押えられず、東京の下宿に戻る途中で肩がぶつかったり目が合った通行人相手に発散。
やりすぎて拳の骨を折ってしまったこともあって、しばらく機嫌が直らなかったものだ。
私に性奉仕させていた女学生相手にもかんしゃくを起こし、逃げられてしまったのは腹立たしい。
とはいえ、何日か思い直してみると銀行員も悪くなさそうだと考えるようになった。
給料は会社を任されるより少ないであろうが一般的には多い方だし、やっていると見栄が大いに張れる職業である。
なにより金勘定やら相手の懐具合を探るのは父の会社を手伝っていたから業務に関しては超新卒級の基礎が固まっている。
私は銀行への入行を決めた。
一旦決めたらもうどんなことがあっても揺らぐことはない。
これは私の美徳だ。
昭和38年4月、私は東京都千代田区に本店を構える東京首都銀行に入行した。
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