SF的時空の操作で、博士の生活ピ~ンチ!あの散歩が…

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 SF的時空の操作も、かんちがいにはご注意。願い通りに、スピードアップできるようになったと思ったら…?

「x軸からy軸、イチ軸、ブロッコリー、亜空間までも」

 SF的時空の操作のやりすぎには、注意したい。

 人間は良いとしても、他の命がピロピロになるから。

 さて、さて。

 とある研究所で働くスティープン博士は、若いころから超優秀。

 還暦を超えた、今でも。

 私生活でも。

 日々、ペットの犬の散歩で幸せを感じるほど優秀(?)。

 「平和なおじいさん」

 そんな言葉も、似合うだろう。

 マイナス点は、のんびりしすぎた性格か。

 ゆったりタイプの良いおじいさんすぎも、痛い?

 が、今日ばかりはマイナスではない。

 のんびり心が反動を起こせたからか、ついに博士は、時空をスピードアップさせる技術を生み出せたのだ。

 「時空よ、スピードアップ!」

 横にちょこんとひざまずく犬とともに、大はしゃぎ。

 「スピードアップ、スピードアップ!」

 元気な博士だな。

 「もう、のろまとは言わせんぞ!」

 ストレス解消か?

 のんびりしすぎて「のろま」と悪口を言われてきたトラウマを変える力にもなると、期待しているようだ。

 「この技術で、だれよりも早く動けるようになるんじゃ!のろまではない!」

 博士の顔は、真剣であってほほえみを絶やさず。

 「いくぞ!」

 発明した時空操作機に、自らスイッチを入れる。

 「理論上は、まちがえていない!」

 時空操作が、スタート!

 「…おお!」

 身体が、重くなる。

 重力的な加速度が、増してきたか?

 「こりゃあ、すごい!」

 博士は、まわりの何倍もの速度で動くことが可能になった。

 今よりも、ずっと早く!

 「のろのろするな、じいさん!」

 そう悪口を言う人間など、もういないだろう。

 「何もかも、上手くいっている気がするなあ」

 が、おかしい。

 研究所に、意外な相談で訪れる人が多くなったのだ。

 「…お、た、す、け」

 「…お、れ、も」

 「…わ、た、し、も」

 なぜ?

 皆の動きが、遅すぎる。

 話すスピードも、明らかに遅い。

 「ど、う、か…」

 「じ、く、う、を…」

 ここで、ようやく気付く博士。

 「私のスピードが上がったわけでは、なかったのか!」

 博士のまわりを動く人のスピードが、にぶってしまっただけのことだった。

 「どうしよう…」

 世の中、上手くはいかない。

 博士の悩みは、深いまま。

 「これじゃ、犬の散歩に何時間かかるかわからん」

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