第15話 救いの眼差し
目を瞑る。それでもまだ声が聞こえるから
――――――
最初は気紛れだった。今も変わらない。
詰まらない、窮屈な里を出たら自由が待っていた。巨大樹が聳え立つガーディアンの里は何処まで行っても此方を見つめる。監視されているようで余り良い気はしなかった。
「オレはスタファノ、よろしくね。キミと出会えてオレは幸せ者だ」
今日も明日も緩やかに生きていく。遊び歩き疲れたら昼夜問わずゆっくり寝る。可愛い女の子を誘う事も屡々。誰にも邪魔されない自由な暮らしを楽しんでいた。堕落?いやいや享楽。
桃色アサガオが良く似合うキミに話し掛けたのは偶々偶然だ。目の端に止まったからに過ぎない。生まれながらに備わった聴覚の才能で余計な争いを回避して剣より花束を。
初めてだった。自分に全く興味を示さない娘、寧ろ煩わしいとさえ思われている。…だから、落としてみたくなった。その姿が態度が余計に衝動を駆り立てる。
「ふーん、騎士団長と姫かぁ。怪我はしたくないけど、何だか面白そうだ」
耳を澄まさなくとも勝手に情報は入ってくる。興味を唆られた。どうせ数日後には飽きてまた何処かへ、フラフラ旅をするんだ。旧カラットタウンにスキップを刻みながら耳の情報を頼りにティアナの元へ向かった。
ティアナとの会話の最中にも大勢の情報が右から左へ流れる。姫、天音ちゃんの位置を訊かれ咄嗟に分からないと伝えた。会話を止めたくなかった、理由は解らない。
自分の判断で此処に居ると一蹴されティアナは再び戦場に身を投げに行った。何だか眠くなって雨も降ってきたからフラフラ帰ろうとした。オレが留まったのは"あの子の事"を知って関心したから。
解らない。
「貴方は…!?どうして、…」
「さあ?どうしてだろうね」
解らない。騎士長の様子が可笑しかったから屋根の上から眺めていた。姫が呟いたように彼は獣だった。獣になりかけていた。
強ち間違っていない、そしてオレは里に居た頃に
なのに解らない。放っておけば良いのに、関係ないのに、何故助けたのだろう。勘が執拗に告げてくる、彼等が歩む道に必ずオレも加わると。痛み以上に彼等と行動すると楽しいと彼等は面白いと。
オレが知る事実、知った真実。オレンジ色の瞳が見つめる先は避けてきた争いが待つ世界。
――――――
「その法術は
「確かに痛そうだ。フッ…一本取られたな。お前は関わらないと思っていた」
「オレも直前まで思ってた〜」
「ティアナ!?」
「怪我してたからさ、運んだ。命に別状はないから安心してね」
「良かった…。ありがとうございます…」
「お礼はホラ、もう少し後の方が良いんじゃない?」
レオナルドの言動からスタファノが法術を発動する少し前に屋根の上で俯瞰していた事は事実。全く気付けなかった天音に落ち度は無いが彼がもし敵だったら戦う事すら叶わず捕獲されていた、と思考し冷や汗を一筋流した。
余計な思考に惑わされないようスタファノを見上げると彼が誰かを横抱きに支えているのが見えた。天音は反射で彼女の名を呼んだ。そうティアナがぐったりとした様子で彼に抱えられており、漸くスタファノが自分達を助けようとしている事に天音は気付く。
「星霊族、俺と闘うか?」
「ど〜しようかなぁ見逃してくれるのが一番有り難いけど…」
(星霊族…ね。オレ達そんな風に呼ばれてたんだ)
「任務だからな。無理な相談だ」
(余力はほほ無いに等しいが若造一人ぐらいは殺れる…法術を使わずとも)
仮にレオナルドとスタファノが闘ったとして何方に軍配が挙がるのか、答えはレオナルドの方だ。負傷して尚、彼はそれ程までに強い。スタファノ自身も答えは視えていた。にも関わらず笑みを絶やさず飄々とした態度で戦闘態勢に入る事すらしない。何故なら、彼は確信していた。霊族側が引くのを。
「〈法術 辻風〉…!」
「リュウシン…!!怪我は…?」
「大丈夫とは言い切れないけど僕はまだ戦えるぞ」
(風使い…面倒な)
一歩前へ踏み込んだ矢先、レオナルドは攻撃よりも先に防御に徹した。意識を取り戻したリュウシンがレオナルドの攻撃を阻止し立ち上がった。予想外の助っ人の登場が、リュウシンの意識が戻る時間稼ぎになっていた事は誰も知らない。また、彼が今の状況を全て理解するには余りにも余裕が無かったが同時に余計な事を考えずに敵に集中するには程良い怪我具合だった。
?「レオナルドさんっ…!!」
「決心したみたいだねジャンヌちゃん」
「丁度良いところに。お前は風使いを…」
「すみません、私は…私はこの人達とは戦えません。戦う以上にレオナルドさんに今、伝えないといけない事があります!!」
「なに?任務を放棄してもか?」
「はい。放棄してでも!全てを擲ってでも!」
「早く聴いてあげなよ。そうしないと……手遅れになっちゃうかも」
「星霊族が何を知ってる?」
「ジャンヌちゃんのコト!」
「あの人の言ってる事は半分正しいです…。お願いします。私の一生のお願いです!」
「そのセリフ前にも聞いたな。あー…分かった分かった。姫サマ次会う時までお互い生きてると良いな」
「姫さま……ありがとう」
「!」
照らし合わせたようにジャンヌが撤退を提案する。彼女の意思は固い。レオナルドとて悪人では無い。スタファノは兎も角ジャンヌの意思の変わりようは側で彼女を指南してきたレオナルドが誰よりも感じており、一生のお願いと何度も聞いた聞き覚えのある言葉を再度、真っ直ぐに伝えられたら諦めざるを得ない。
「君は…何者なんだい?」
「何者でもないよ。オレは」
(一体どうなってるの?)
「スタ、ファノ…マリーさんは無事?」
「うん。その子なら友達がちゃんと家まで、送ってあげてたよ。でもオレに訊きたい事はそれだけじゃないでしょ?」
「教えてくれるの?」
「治療したらね。彼の傷は深い」
「…僕が運ぶよ」
レオナルドとジャンヌは煙草の残り香と共に立ち去って行った。後に残されたのは敗北と疑念のみ。勝ち逃げされた、敵わなかった。喉の奥に引っ掛かる感情は一先ず置いて天音は今一度強くリオンを引き寄せた。呼吸は整っても心臓の鼓動は治まらず、未だ煩い。
言いたい事を一言にまとめ、リュウシンはスタファノに問いかけるが望んでいた回答は得られず、代わりに緊張状態から解れた天音がマリーの無事を確かめる。彼ならばきっと彼女の行方を知っている、漠然とした質問だ。傍らで眠るリオンの傷の深さを指摘され、触れる手が強張る。既に血は止まっていたが傷口を見ない天音では血で濡れた手で触れたところで分かりようも無かった。
「オレ達も此処を出よう」
旧カラットタウンを去る者共に夕暮れの陽光が射す。
こうして長い長い一日が終わりを迎えた。
――――――
―回想―
「ん」
(身体は動く…)
ジャンヌは目覚めて状況を理解する。目の先には友達の知り合い兼任務の妨げになる敵が倒れていた。痛みは伴うが動けない訳ではない。起こさぬようにチェーンクナイを取り出し狙いを定める。
(敵前で気を失う…覚悟は出来てるよね)
「悪く思わないで…!」
?「待った」
「は!?」
(耳長…だれ)
桃髪の女戦士の心臓に突き刺そうと振り上げた瞬間、背後から手首を掴まれ抵抗出来ずに腕を降ろされる。
丁度良く影が掛かり背後の男の全身は見えなかったが一度見れば忘れない特徴的な長耳を有している事は視えた。ひょろりとした体型に似合わぬ握力でジャンヌを制すと男はパッと笑った。
?「オレ考えたんだ。考えて助ける事にした何でかは解らないけど兎に角、死んでほしく無いから。殺すのは待った…ね?」
「何言ってるのか分からない…私にとって敵なら先ずは、あなたから始末するまで!」
「ジャンヌ」
「私の名前!どうして、…」
「ジャンヌちゃんキミの名前でしょ。友達はマリーちゃん、一緒に居た人はレオナルド。どうして知ってると思う?あ、因みにオレはスタファノだよ〜」
「…惑わされない。この人の仲間なら私が」
「仲間か〜。それいいね!じゃあ仲間だ。ジャンヌちゃん、どうしても戦いたいの?」
「邪魔を、するなら」
「そっかオレは戦いたくないなぁ…。どうしてもって言うなら"あの子の事"を言いふらしちゃおっかな〜?」
「!……っ」
レオナルドさんに教わった教訓、戦場において一番厄介な敵は自分より格上では無く相手のペースを崩し自分のペースに乗せる事が出来る人。このタイプには大きく分けて二種類居る。人を無自覚に巻き込むムードメーカー的なタイプと意図的に崩して戦意を削ぐ頭脳タイプの二種類、スタファノは正に後者だ。対処法は相手に情報を与え過ぎない事と相手の言葉を跳ね返せる心の強さを持ち合わせる事。何方も後手に回った今の状態では彼に勝てないのは明白だった。
「何で知ってるか知りたそうな顔してるよ教えよっか?」
「…」
「別に大した事じゃないけどね〜。ただ遠くの音が良く聴こえるってだけだよ。例えばオレは旧カラットタウンの何処に居てもキミ達の会話は聴こえる。何度も切り落としたくなったけど偶に便利なんだ〜」
「…全部聞いてたってこと……」
「うん…!言いふらされたくないでしょ?だから見逃してくれない?ジャンヌちゃん。命を懸けてるあの子をキミは見捨てられない。ティアナはオレが連れて行く。答えが出たら教えてね」
スタファノはティアナを横抱きにして連れて行く。ご丁寧に行く先を分かるようにして。答えは決まっていた。レオナルドさんに話したが最後、私自身も命を懸ける覚悟をしなくてはならない。
(マリーちゃんありがとう。教えてくれて)
―回想終了―
―――――― ―――
旧カラットタウンにて霊族二人が残った。二人のその後の会話は誰にも聞こえない。
「それで、話ってのは?」
「レオナルドさんを信頼して話します。マリーちゃんが教えてくれた"あの子の事、毛色の違うネズミ"の話です」
「!…ほう」
《煙立ち昇る青空は爽快な夜を迎えていた》
――――――
―――
(此処は何処だ……俺は一体…何処まで)
深く、深海。
暗黒の海に落ちてゆく感覚が延々と続く。息苦しくない代わりに思考回路が阻害され複雑に絡まった深海から這い上がる為の能力が得られない。
(海に落ちたら……人間は無力だな…)
一部の光も差す隙間が見当たらない。口を開こうとすれば声が泡となり消える。
考えなしに右手を伸ばす。
誰が態々、暗黒の深海に落ちてまで伸ばした右手に掌を重ねるのか……。
騎士長は沈みゆく。身体と思考が無理矢理剥がされている感覚を味わいながら。
――――――
(一度に色んな事が有り過ぎた)
あれから、カラットタウンへ戻りスタファノが手配した…と言っても実際は彼に絆された女の子達の手を借りて期限付きで一軒家に過ごせる事になり、食事も喉を通らぬ内に夜が訪れ治療の必要が無い天音は一人、眠れない夜が明けるのを待っていた。
意識があるリュウシンはスタファノと共に治療に使う薬草を取りに行き、ティアナと特に重症のリオンは安静に眠っていた。夜空の星を見上げられずに夜が更けていく。願い星は地に落ちない。
(クヨクヨしたって何も変わらない!)
「大丈夫!…私に出来る事をしよう!」
昨日のどんより雨とは打って変わって快晴の朝。助けられてばかりの自分は数日程度で完治する傷痕と向き合い只管、考えていた。自分に出来る事は何かを。自分だって戦える何時までも守られていてはいけない。
「?…ティアナの声?」
いざ、部屋の扉を開けると眠っている筈のティアナの声が彼女の部屋から聞こえてきた。良く耳を澄ますとスタファノとリュウシンの声も微かに聞こえた。きっとティアナの目が覚めたのだ。早く会いたい一心からノックをせずに勢いに任せ部屋の扉を開けた。
「ティア…えぇーと……どう言う状況!?」
「天音おはよー。あはは…どう言う状況なんだろうね」
「〜〜あ…!」
「んー?あ、の続きは?教えてほしいなぁティアナ?」
リュウシンは扉に近い壁に寄りかかっており天音の存在に逸早く気付き挨拶を交わす。半笑いでチラリとティアナ達の方を見つめる。
右腕と頭部に包帯を巻かれたティアナはベッドで大人しく寝ていたが今朝、目が覚めスタファノに助けられたと聞かされた瞬間、椅子に座る彼の胸倉を掴んで何か言いたそうに口を動かしては目を泳がす。
スタファノは胸倉を掴まれても驚くどころか寧ろティアナの伝えたいことを感じ取りニヤニヤと口角を上げて催促している。
天音が突っ込みたくなるのも無理はない。
「〜っだから、あ…」
「あ〜?」
「っ!!あ…りがとう…助かっ…た」
「小さくて良く聴こえなかったな〜?もう一度言って……」
「〜〜〜ふざけるな!!やってられるかっ!あんた聞こえてるだろう!?あんたにだけは二度とお礼なんて言わん!」
「うっ女の子にグーで殴られたのは初めてだよ……」
「フン。自業自得だ」
目を逸らしながら普段とは驚くほど小さい声量でお礼を伝える。素直に礼を言う彼女は助けられた事実、助けてもらはなければ
リュウシンも天音もスタファノの耳の秘密を既に知っており自業自得の言葉に心の中でそっと頷いていた。
「君達、その辺にして…天音が引いてるよ」
「天音ちゃんおはよ〜!」
「ム。天音、起きてたのか」
「あー…うん。おはよティアナは怪我とか大丈夫なの?」
「大丈夫だ。この通り完治してる」
「良かった…改めてスタファノありがとう!
……それでその、リオンの怪我は……?」
天音の本命、一番訊きたい事だった。昨日、血で濡れた両手を洗い流した後リオンの側へ付いていようと決めていたがスタファノが治療に集中する為だと言って結局、部屋への入室が許可されず天音はリオンの現状を知らなかった。まだ眠っているのだろうか、怪我の具合はどうなのか。
「…」
「…」
「…手は尽くしたよ。でも…」
「!そんなっ…」
「あ、天音!」
神妙な面持ちで語るスタファノに嫌な予感が過り最後まで聞かずに飛び出すと、リオンが眠る部屋に駆け足で向かった。リュウシン等も後に続き彼女を追いかける。
―――
「い、生きてる……」
「?生きてるよ?」
「君が紛らわしい言い方するから…」
「全く、人騒がせな奴だなあんたは」
「スタファノって呼んでよ。オレには親が付けてくれた立派な名前があるんだから!」
部屋へ入るなり直ぐさま心臓の音を確認する。トクトクと一定の感覚で刻まれる心音に安堵の溜息を零す。少々体温が高いのが気掛かりだが彼の寝顔は苦痛を感じている様子は無く問題ないだろう。リオンの落ち着いた心音に安心した天音はゆらゆらとその場に座り込む。
「で、リオンは何時起きるんだ?」
「さあ?」
「あんたなぁ…!」
「わっ怒らないでよ〜。オレもさ手は尽くしたんだ、でも彼は目覚めない」
「どう言う事?」
「傷は全部治したよ。ホントは女の子しか治したくなかっけど。昏睡の原因も何となく心当たりはあるんだ。だけどオレの力じゃ死なせないのが精一杯だった。…抗う力が彼自身に足りない。
例えるなら深く暗い森の中に迷い込んだ感じかな。無いはずの出口を探して彷徨ってる感じ…。キッカケがあれば目を覚ますかも知れない」
陽気な雰囲気から一変、真剣に語る口はスタファノの根の部分である真面目さを体現していた。意味のない嘘はつかないと、かつて彼は語っていた。
「このまま目覚めなかったらリオンはどうなる?」
「それは…オレにも分からない。もしかしたら目覚めない可能性も…」
(リオンが…死ぬ!?)
「キッカケとは何だ」
「さっき森の出口の話をしたね。出口がない場合は自力で作り出すか、外からこじ開けるかのどっちかしかない…キッカケは外からの介入の事〜」
「外からの…どうやって?私に出来る事ならっ!」
「…」
「…リスクがあるんだね」
「まぁ…ね。三日経っても意識が戻らなかったら試してみるよ。この方法は匙加減が難しくて失敗すれば死ぬからね」
(オレが)
「そんなことよりお客さんが来てるよ〜」
不安は募るばかりで、出来る事をしよう。と意気込んだものの実際自分に何が出来るのだろうか。あの時、自分が出て来なければ彼はもっと巧く立ち回れたのでは、自分の所為で彼は目覚めないのでは、とネガティブな思考が重く纏わり付く。
そんな一抹の不安を払拭したのは通常営業に戻ったスタファノの軽やかさだった。背を押され玄関先で彼の言う客を迎え入れる。扉を開けるまでは誰が来てるのかスタファノ以外、知らなかった。誰かと言うと?
―――
「マリーさん!カルムさん!それにカナちゃんも…!」
「お礼とお見舞いにどうしても来たくって」
すっかり血色の良くなったマリーと付き添いのカルムとカルムと手を繋ぐカナを招き入れる。無事だと聞かされていたが、いざ目の前で元気な姿を見ると安堵感が桁違いだ。
「マリーの事、本当にありがとうございました。なんとお礼を言ったらいいか…」
「私からも…ありがとうございました…お陰で友達に会う事が出来ました…」
「そんなっ…畏まらないでください…私が巻き込んでしまったようなものですから……」
「…」
張り詰めていた空気を和やかす為に客人にお茶を饗す。カナにはクッキー等のお菓子を振る舞う。これまたスタファノに惚れている女の子達が彼の為に残して行ったものだ。
「リオンさんにもお礼を言いたいのですが…」
「あ…リオンは、…」
「リオンは今眠ってるよ。彼、朝が凄く弱いんだ。起きたら僕から伝えておくよ」
「そう…ですか」
(リュウシンありがとう…)
カルムがリオンにも礼を伝えたがるのも当然の行動だった。リオンを探し辺りを見渡すカルムに言い淀む天音。そんな天音の変化に逸早く気付いたリュウシンが透かさず怪しまれない程度に嘘の理由を話す。
「ところで、その小包は…?」
「あぁ、そうでした。実はやっと修繕が終わって…是非聴いてもらいたくて持ってきました」
「オルゴール!」
「天音、リオンには内緒で聴こう。後で起きても遅い、寝坊する彼が悪いんだ」
「うんっ」
ティアナが指差した
小声で天音に提案するリュウシンは人差し指を立て悪戯っ子のように笑いかける。彼なりの優しさと励ましを受け取りほんのり温かい気持ちになる。
「懐かしい音〜!お姉ちゃんまた遊ぼうね」
「もちろん!」
お菓子を頬張りながらカナはオルゴールの音に懐かしみ天音に懐く。意外にも子供の扱いに慣れている訳は彼女が孤児院で暮らしていた頃に自分より幼い子供の面倒を任され過ごしてきた為である。
明けない夜はない。朝の陽射しが天音達を照らす。壁の向こう側、底知れぬ海のような深い眠りに溺れる彼にも朝日は届いていた。
目覚める時を待っている。
――――――
―――
オマケ
「煙草、辞めた方が良いですよ」
「…辞めるさ明日からな」
(この煙草親父、辞める気無いな……)
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