うすべに百合皿にて

釣ール

現実郷

 今は万人受け目当ての名前に変更された隠れ家がある。

 隠れ家なのに万人受けって観光目当てじゃないかとツッコミどころはあるけれど。


 晴天せいてん百合園ゆりぞの

 それが今の隠れ家の名前。

 その前はおっさんがたむろしていた「うすべに百合皿ゆりざら」という名前だった。


 百合皿ゆりざらの意味は湖のような場所にひっそりと咲く百合をタバコふかしながら知り合いのおっさんに連れられて子供だった自分はギャップ差って単語をここで知るのだ。


 子供の頃といってもそんな昔じゃない。

 自分が今、十九歳だから二〇〇九年頃まではうすべに百合皿ゆりざらだった。


 すっかり家族連ればかりで今の彼女と進展があったらここに来たくなるくらいには思い入れのある場所になっていた。


 だがうすべに百合皿だったかつての泥臭い過去は拭えない。


 ここの百合が美しく見える理由はヒトの生き血をすすっているからと聞いた。

 情報源の知り合いはもうこの世にいない。


 だから詳しくは分からないけれど、大半は連れてかれたけものと人間の死者の血で大地は染まっているのかもしれない。


 管理者がこの百合達を手放てばなしたくないからしぶしぶテーマパークにしたのかもしれない。


 そしてここでタバコを吸っていたおっさん達も文句を言うことはなかった。


 秘密主義を貫いている彼らに敬意けいいを評して自分も喋るのやめようかな。


 新しい生活のためにも。

 今日も百合は咲いている。

 咲いているその場所には何が埋まっているのだろう。


 これが自分のただの思い込みなら幸せなことはないが、それを知ることはなく嗜好品しこうひんを今の百合園にて楽しませてもらう。


 思い出語りがなんか感想になってしまった。

 いつかうすべに百合皿についてねほりはほり聞かれるのも困るから今の「晴天の百合園」に慣らしていくか。

 よかった。

 大してこの場所に思い出補正がなくて。

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