第7話 「重要な部屋に入れないこと」 《ぬこ》

今小生はたいへん困っている。何故かというと(重要な部屋)に入れなくなってしまったからである。

小生はキャットタワーを2基所有している。その1つはリビングの窓際。日当たりがよく気に入っている。そしてもう1つは北側の部屋の窓際で、ここは外界をより近くで観察できる、まさに警備にはうってつけの場所なのだ。

その重要な北側の部屋のドアが閉ざされて入れなくなっているのである。

「開けろ!開けてくれ!」とドアの前で叫んでみたが開く気配はない。

それともう1つ不可解なのが、この家には舎弟として小生が色々世話を焼いてやったり教育をしてやったりしているものがあるのだが、その者の姿が見えない。時折、扉の向こうから「げほんげほん」という音は聞こえる。

かと思うと(重要な部屋)からやけに赤い顔をした舎弟がフラフラとした足取りで出てきて水を飲んだりしている。

《主》が時々食料を持っていっているので、そのドアが開いた隙にサッと入ろうと試みたのだが「ダメ!」と言われ、あろうことか足で!小生を部屋の外に追いやったのだ。

さすがの小生もこれには憤慨し、「シャァーッ!」と怒号をあげたのだが、これがいけなかった。

この後、《主》の前で正座をさせられ、こんこんと説教されることになったのである。

北側の警備が手薄になっているのに!何と呑気な人間共か!

しかしもうよい。そういう事なら小生にも考えがある。

リビング側の警備からも手をひかせてもらおう。キャットタワーに乗ってなどやるものか!ストライキだ!

こうして「どいてよ〜」と言われようが何と言われようが、小生はいつも《主》が座っている場所でとぐろを巻いてやるのである。

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