第4話

「……驚いた。本当に人がいるのね」

 背後から聞こえた声に、男は驚きのあまり「うわぁ!」と叫びながら大きく肩を跳ねさせた。

 慌てて振り返ろうとしたため覗き込んでいた発射台を倒し、そのまま自分も尻餅をつく形になってしまった。発射台の崩れる大きな音を気にもせずに声の主を探す。

 きょろきょろと首を左右に振るまでもなく、男の視界に人影が映る。男はずっと夜にいたから、暗闇の中でもしっかりとその輪郭を捉えることができた。

 そこにいたのは幼さの残る顔立ちの少女だった。女の子?どうしてここに?疑問が脳内で渋滞する中、その子の赤い瞳がやけに眩しかった。

 男の動揺を気に留めるべくもなく、少女は言葉を投げた。

「初めまして。私は看取り屋。死神、と言った方が伝わるかしら」

「看取り、屋……」

 男は未だ唖然としたまま、なぞるように聞こえた言葉を繰り返す。少しずつ冴えはじめた頭の中で、知っている、と記憶が呼び起こされる。

 確かに聞いたことがある。看取り屋。余命幾許もない者の前に現れる、運命の運び屋。死の証人。

「……死ぬのか、ぼくは」

「ええ」

 少女は告げる。きっぱりと。

「あなたの死体を夜に焚べるために来たのよ」

 シニカルに、あるいは不敵に。夜明けの気配を引き連れて。

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