第2話

姉が自分の家に帰った。

私の生活は【いつも通り】になった。



家に帰っている途中、部活中のはずの岸辺が私の肩をたたいた。


「なに?部活は?」


「会って早々、それは冷たくね?」


「別にいいでしょ。岸辺だし。」


「なんだそれ(笑)」


「部活は?今日部活休みの曜日じゃないでしょ。」


「今日は自主休みだよ。休むのも大事だから~。」


私と岸部は腐れ縁だ。

小中と同じクラス、帰る方向も同じ。

人と関わるのは嫌いだけど、必然的に関わる時間ができるので

クラスの中で一番気を使わなくてもいい人間だ。


「そういえばさ、咲ちゃん帰ってきたんだろ?」


「そうだね。」


「大丈夫だったか?」


「何が。」


「何がって親とか。大変じゃなかったか?」


「    別に普通だよ     」


「飴はいつも何でもない顔するから少し気になって・・・」


「それってさ、同情?」


「いや、それは、」


「同情ってさ、する側に取ったら、気分いいのかもしれないけど、

される側にしてみたら、よけい惨めになるからしないほうがいいよ、」


「飴?」


ハッとする。

感情的になってしまった。

心配して、自主休みとか言って部活好きな人の時間をもらっているのに



「思いあがるなよ。」


「は?」


「俺の自己満だよ。お前のこと友達だと思っているから、

大丈夫っていうのを確認して俺が安心したかっただけだ。」


「う、うん。」

私の顔を指さしながら、少し怒った風にそう言われて返事しかできなかった。


「大丈夫じゃないのはわかった。」


なぜなのかわからないけれど、なんだか情けなくなって黙っていると

岸辺は


「ま、俺にできることなんてないと思うから、先行くわ、またな。」


と言って自転車をこいでいった。



その背中を見ながら、私はゆっくり歩き始めた。







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