第5話 行き場のない女子
私「あ‥、いや‥、実は今、仕事中です。
「亜広川市」に住んでいる、ある人物を訪ねる途中だったんですよ。結構変わったお客さんで、人間の肩の高さまで雑草が伸び放題の場所を、駐車場と言い張るんです‥。ですから、その駐車場を今日、調査しに行くんです。」
大崎「‥。」
すると大崎は、急に真面目な顔になった。
大崎「なぁ、その客の名前、何か違和感なかったか?動物の漢字が入っているとか‥。」
私は驚いた。確かに、これから訪ねる件の客は「山本 姫犬」と、動物の名前がついた珍しい名前である。まさか、この人物について大崎は何か知っているのか。
私「個人情報なんで名前はお伝えできませんが‥。
はい‥。確かに、かなり変わった名前だと思います。」
大崎「おお!やっぱりな!!」
一瞬の隙をつき、大崎は素早く私のカバンに手を突っ込み、顧客情報が書いてある書類を引き抜いた。
私「ちょっと、やめてくださいよ!!」
彼のこのように強引なことをする
すると大崎は、意味不明なことを言い始めた。
大崎「悪いことは言わない。その客を訪問しちゃいかん。」
私はそれを聞いて、苦笑いをした。
私「‥いえ、仕事になりませんよ‥。」
大崎「君は今、車庫の申請書類でも作っているんだろ?警察が現地調査するまでには私がなんとかしとくから、今日は帰ってくれ。
この「山本」って男には、私が直接、草を刈り取るよう伝えておくよ。」
不思議なことに、彼は頑なに、私を「山本 姫犬」と会わせないようにしてくる。
私「そんな‥。というか、この人物は大崎さんの知り合いですか?なぜ、俺に合わせてくれないんですか?」
しかし、私の質問には答えず、大崎はスマートフォンで私の行政書士事務所の番号を検索し、電話を始める。どうやら、私の上司に交渉し、私を追い返そうとしているらしい。
私「無茶苦茶だ‥。」
大崎「ああ、どうも、「亜広川市」市長の大崎と申します。あの、おたくの従業員さんが、車庫の調査に来られてですね。『山本 姫犬』という顧客の件なんですが‥」
電話がつながったようだ。対応しているのは、私の上司だろう。
大崎「誠に恐縮なんですが、駐車場の場所は間違いありませんので、このまま書類作成をしていただけないでしょうか。はい。そうです。草がめっちゃ生えている場所で間違いありません!!
はい。はい‥。ありがとうございます!
それでは‥。」
大崎は電話を切り、私を見る。
大崎「これで、君は『山本 姫犬』を訪問する必要は無くなった。」
私「なぜ‥、そこまでこの人物を遠ざけようとするんですか?」
大崎「いやぁ‥。言ってもお前は信じてくれないだろうからな‥。」
彼は「タイヤ公園」から、足早に去ろうとする。私もそのあとを追った。
私「何かおかしいですよ!」
大崎は黙って歩く。
私「俺の仕事を妨害したんだから、その理由ぐらい教えてくださいよ。」
すると、彼は立ち止まった。
大崎「まぁ、いいぞ。ここなら、「タイヤ公園」の子達にも聞こえないだろうからな‥。」
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