3‐2
見飽きるほど代わり映えしない青空が広がる昼下がり。
わたしは
部分的にきついけど少しの間だからがまんしなくちゃ。
「
わたしは上半身に<
周囲のほとりより盛り上がってる高台から見える湖はとてもすんでいる。
水面までは結構高い。
ぱっと見でわたしふたり分くらいだ。
ただ危険な生き物は生息してないって本に書いてあった。
だからわたしは安心して飛び込んだ。
――やっぱり苦しくない。
理屈はさっぱりだけど、<
地中でも同じだと思う。
「ぁー、ぁー。声までふつうに出せるんだ」
変な効果。
わたしはそう思いつつ、どろっとした水底をはだしで蹴って湖面へと顔を出した。
下半身だけが水の影響を受けてる状態じゃ泳ぐのは厳しそうだ。
ここで無理したせいでバランスをくずしたらどうなるか?
きっと上半身だけ水底に埋まってしまう。
「<
時間はかかるけど仕方ない。
わたしはもう一度水中にもぐり、水底を歩いてほとりに向かうことにした。
ちょうどいい場所として選んだこの小さな湖へとわたしを連れてきてくれたのは、ほかでもない
わたしが頼んでわけじゃない。
<
数日前の竹騒動以来、
「う~るみ~ん」
こんな感じで。
やたらと人なつっこく。
「どうどう? うまくいってる?」
「確認はできたかな」
わたしは両腕を使って小さな湖から上がれるよう<
「ひよも泳ぎたかったなー。水着買おっかなー?」
「んしょ」
わたしも
「あのおっきくて白い
「勝手に帰っちゃった」
「帰った?」
「そうなの! せっかくふもふもしながらお昼寝しようとしてたのに、びーこってばひよの枕じゃないとかなんとか言っちゃってさ。あったまきちゃう」
「<
「ペットじゃないよ」
「んっとね、家族だけど家族じゃないっていうか……持ちつ持たれつ?」
対等ってことなのかな。
じゃあ枕なんかにできなくない?
「びーこはね、たまーに
「へぇ」
「でもこれが正しい付き合い方なんだってじいじが言ってた。じいじもばあばも、びーこたちに甘々なんだよ」
「ふぅん」
「ひよは甘やかさないよ。だってひよのほうが甘えるんだもん」
「ほぁー」
とりとめのない話に耳を傾けてるうちにふと、わたしは尋ねたくなった。
「そういえば
「うん。びーこはびーこだもん」
「
「うるみん! うるみだからうるみん! いいでしょ?」
「そ、そうかな……そうかも……?」
どうも
思えば、わたしは出会ったときから彼女のマイペースなパワフルさに振り回されている。
それなのに不思議。
案外いやじゃないと感じる自分がいる。
なんだか絵に描いたような青春を味わってる気分だ。
そんなひとときを送っていると、セントラリオンのほうの空から
「探したぞうるみ」
「
「問題児も一緒だったか。手間が省けた」
「はっしーこんちゃー。えいえい」
湖上に浮く
届く気配はないけど。
「うるみはなるべく早めに着替えろ。法務官が首を長くして待ってるぞ」
「法務官?」
聞き慣れない単語だった。
法務ってルールとかにかかわる言葉だよね。
わたしが元いた世界だとなんだろ。
裁判官?
それとも警察官?
「もしかしてうるみん、やらかし~?」
「おまえもだ、
「模範塾生目指してるのになんでさー!?」
「悪さがバレたとかって話じゃない。わかったらおまえはそのぬれた足をふけ。それから靴を履け」
「サンダルでいい?」
「いつも履いてるほうの靴にしろ」
「や。うちまで取りに戻るのめんどくさいもん」
「おまえなあ……」
身支度をすませたわたしたちは
もうすぐ
だから
その代わり、
わたしはひと目見て特徴的なケープだと思った。
縁にきらきらしたししゅうがされてるだけじゃなくて、胸もとのあたりに金色のバッジまである。
変な威圧感。
「
開口一番、
「先に、天使にまで手数をかける無礼をわびよう」
男性がお堅い感じに口を開く。
「私はセントラリオンで法務官を務めている者だ。
「もしかしてこの前のお兄さん関係?」
言われてみれば。
「法務官がお話ししてる最中だろ。勝手に割って入るな」
「すでに話が伝わっていたらしいな」
法務官の男性はせき払いしてから続けた。
「いかにも、そこの
うゎぁ、洋画のあらすじみたい。
「先ほど、
ここまで話してから法務官の男性は「では意向を聞こう」とわたしと
つまり顔がわかる人が必要ってこと?
写真撮ってなかったのかな。
あの不良男子と会ったってだけで戦力みたいに数えられるのは、なんだかなぁ。
「うるみんとならぜひぜひ!」
「ふぁ!?」
「
「ぇぁぇ、ゎ、ゎた――」
「よい心がけだ」
待って!?
わたし行きたくない!
行きたくないのに、そんなサクサク決めないでよぉ!?
……うぅ、断るタイミング逃したぁ。
「追跡は計五部隊で行う。すでにチームを組んでいる
「はっしーもひよたちと組んじゃえばいいじゃん」
「法務官がおっしゃったチームっていうのは追跡部隊のことじゃないぞ」
「そうなの?」
「
ふとわたしの頭の中を思い出がよぎった。
『チーム・Gの
二年前の塾長室!
「で、おれはこのチームのほうで追跡に加わることにした。即席に誰かと組むより動きやすいからな」
「はっしーノリ悪ーい」
「だだをこねるな問題児」
「ぶー」
「ゴホン。ほかに確認事項はあるか? ……なければ
そう言って法務官の男性は半円形の広場へと歩き出した。
「我々以外の三部隊はすでにセントラリオンを発っているのだ。まずは西門まで急ぐぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます