第2話

思わぬところから癒されて

誘われるように癒しのぬる水に足をつけると

蒼い空が映った水面はゆらりと画像を移ろわせ

じわり滲み出てくる、トラウマが滲み出てくる、点状に滲み出てくる

ごく薄くすりむいた、あの日のひざのように。

こんな淡い傷を見つけ出し

消毒はしちゃダメです、今はそういう時代です。

雑踏の中そう言われ

薄く薄く擦りむいた傷は、ちゃんと洗うを教えてもらえなかったばっかりに、

少しの雑菌とともに、しずかに肌色になった。

はじめは共存していたと、私は記憶しています。

しかし何も考えずこうして言葉がつらつらと

脳を経由せずにでしゃばるあたり

案外隅々の細胞まで、しっかりと我が物顔に、いえ、もはや我が物。


結局トラウマとはそう言うもので

わたしとはそういうもので

簡単に擦り傷をつくってしまって

簡単に癒されて

簡単に掘り起こされて

もう治ってしまった傷の場所を

見えないふりして1番気持ちの良い場所を

見つけて撫でてくれるあなたと共に生きたい。

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くもの糸 @comecomecat

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