第31話 そうだ、嫁とイチャイチャしよう。そうしよう。

 二人に別れを告げ、ギルドの外に出る。すると町の人達が忙しなく動き回っていた、その顔は笑顔にあふれ希望に満ちている。全員今回の勝利を心から喜び祝おうとしているのが伝わってくる。

 さて、嫁さん達は何処にいるのかと探していたら、中央にある町の広場にいた。ここが宴のメイン会場になるようだ。

 興味を惹かれ物陰からこっそりと様子を伺う。どうやら宴で出す料理を作っているようだ。周りには主婦の皆様と数名の女性冒険者の姿も見えた。

 マリーとソニアは見事な包丁捌きを見せていた。メイドのマリーは分かるが、ソニアは意外だったな。そしてプリムラとリラは苦戦していた。危なっかしい手つきで食材を切っていく、いつ指を切るかとハラハラしていたが、マリーやソニアそれと主婦の方々に助言を貰いながら何とか包丁を操っていく。周りの人達と楽しそうにおしゃべりしながら料理をしている嫁達の姿、それを邪魔するのも悪いと思い俺はその場を静かに離れた。

 そんなわけで、一人で町を見て回っていると、冒険者が話しかけて来た。

「ありがとう、助かったよ」

「生き残る事が出来たのは君のお陰だ」

「今度一緒に飲もうぜ。俺の奢りでな」

 代わる代わる冒険者達が集まって来る。どうやら皆この町に所縁がある者達のようだ。成程ね、命の危険がある『大氾濫』に立ち向かおうとした理由がそれか。郷里愛ある素晴らしい人達だよ。

 門番のグレッグにも遭遇した。俺の肩をバシバシと叩きながら「お前さんは只者じゃないと思ってたんだ」と調子のいい事を言い始めた。確かにこいつは俺達を注視していたから、あながち間違いでは無いか。人を見る目はあるのかもしれんな。

 やがて日が落ち始めた頃、町の中心にある広場で大きな焚き火――キャンプファイヤーに火がつけられる。

 その近くにライアンが登場した。どうやら宴が始まるようだな。

「諸君! この町を襲った未曽有みぞうの危機は去った。この危機に駆けつけてくれた冒険者や王国の精鋭達のお陰である。この勇士たちの武勇を称え、この勝利を祝おうではないかっ!」

 ライアンが高らかに右手を突き上げると、地鳴りのような雄叫びが轟く。思わず耳を塞ぎたくなった程だ。

 それが始まりの合図となり、宴が始まった。皆料理を食べ酒を飲み歌い踊り出す奴も現れた。

「旦那様、こちらをどうぞ」

 宴の様子を見ていたら、いつの間にかマリーが傍に来て料理を差し出してくれた。

「ああ、ありがとう」

 マリーから受け取った料理は、肉と野菜が香ばしく焼かれ、何かソースの様なものがかけられた……肉野菜炒めと言うべき物だな。うむ、美味い!

「これはマリーが作ったのか?」

「はい。お口に合いましたか?」

「ああ、とても美味しいよ。ありがとう」

 そう言うとマリーは満面の笑みを浮かべた。そういえばマリーの手作り料理を食べるのは初めてだな。妻の手料理、素晴らしい物だな。

「あら、マリーのだけ口にするなどはしませんわよね?」

「……私も……作った……」

「おねぇさんのも食べてね?」

 すると他の嫁達も料理を持って現れた。ソニアは野菜のサラダ、プリムラとリラは肉を焼いたもの。

 野菜のサラダは綺麗に盛り付けられ、ドレッシングの様なものがかけられていて、とても美味しかった。プリムラとリラの肉は……まあ、所々焦げていたり、焼き加減が足りなかったりと、少々問題があったが俺の為に作ってくれた料理だ。勿論、全部ありがたく頂いたよ。

「皆美味しかったよ、妻の手作りだからか、より美味しく感じたよ」

「喜んで頂けたようで何よりです」

「これからもワタクシ達が料理を作ってさしあげますわ」

「うん……次はもっと……上手に……焼く……」

「うふふ、楽しみにしていてねぇ?」

 全員料理を作る事に前向きなようだな。だがその前にプリムラとリラはもう少し料理の練習をしようか。

 夜のとばりが下り、星がまたたく時間になっても宴は続いていた。どうやら朝まで続けるようだった。

 俺達は程よい所で、宿の自分達の部屋に戻った。明日も忙しくなりそうだし、家族のコミュニケーションの時間を作りたかったからな。それと情報の共有も。

「成程……何者かの策謀さくぼうである可能性が……」

「どこのどなたか知りませんが、卑劣ひれつですわね」

「魔法に関する事なら、おねぇさんに任せてねぇ」

 皆がその様な感想を述べていたが、リラはずっと黙っていた。しかしその瞳は怒りに満ち溢れていると一目で分かる。俺はリラに近寄り、頭をポンポンと優しく撫でた。

「誰が何の思惑でこんな事をしでかしたのかわからんが、必ず見つけ出し報いを受けさせる。約束するさ」

「……うん……」

 そう言うとリラは俺に抱き着いた。その両の腕には強い力が込められている。何者かによって故郷が二度も滅ぼされかけたのだ、その心中は察するに余りある。

 そして次の話題は、慰問団についてだ。

「慰問団に王女殿下のお出迎えですか、大変重要な役割を与えていただきましたね」

「この国の王女はどの様な人柄なのでしょう、ワタクシと同じ感性だと嬉しいのですが。お会いするのが楽しみですわ」

「……緊張する……」

「おねぇさんは、魔法師団長さんの方が気になるわねぇ」

 マリーは俺が大役を受けた事を誇らしげに、プリムラは同じ姫同士会うのが楽しみな様子で言った、リラは王女に会う事に緊張しているようだな。そしてソニアはあの『賢者殿』が気になる様子。心配しなくていいさ、明日になったら嫌でも顔を合わせるさ。

「そういえば、リラは王女殿下を見た事はあるか?」

「うん……遠目だけど……」

「ふむ、どの様な人だった?」

 何でも良い、とにかく王女に関する情報が欲しい。

「とっても綺麗で……おっぱいが……大きかった……」

 あの……リラさん? それだけですか?

「ほ、他には、何かないか?」

「……凄く優しい……人だって……聞いた事ある……孤児院に良く……顔を出すって……」

 ふむ、慈善事業に熱心とは、感心させられるな。

 つまり「美人で優しくて胸が大きい」と……何とも言えんなこれでは。明日にでも賢者殿に聞いてみるかな。

 続いて王都での式典の話に移る。

「国としては今回の勝利を内外に示す良い機会ですわ。派手な催し物になるでしょう」

 流石は元王族のプリムラ、その辺りの事情に詳しくて助かる。

「式典に着ていく服は今のままで良いのでしょうか? 旦那様」

「ふむ、服か。俺達は冒険者として招かれる事になる。むしろこのままの方が自然だと思う」

 冒険者が突然、煌びやかなドレスや礼服を着て行ったら驚かれるだろう。まあ、こういう式典に出席する機会が増えるのであれば、新調するのもいいだろう。

「……私達は……何をすればいいの?」

「基本的には俺が代表して受け答えする。直接名指しで呼ばれない限り、特にする事は無いと思うぞ。ソニアは何かあるか?」

「いいえ、特に無いわねぇ」

 となれば、作戦会議というか「家族会議」は終了だな。

「それじゃあ、そろそろ寝るとするか」

 俺がそう言うと、皆それぞれ準備を始めた。と言ってもやる事はいつもと変わらない、装備と体を魔法で清めるだけだ。

 そして俺は大人しくベッドに腰かけていたソニアの隣に座る。

「これからお前を嫁として抱く」

「そう……おねぇさん、こういう事はしたことないの。キミに任せてもいい?」

「ああ。俺に全て任せろ」

 そう言って俺は、ソニアの唇を奪った。

「んっ……情熱的ねぇ。それでぇ、皆はここにいるのかしらぁ? 見られながら「する」のがキミの趣味なの?」

 そこに疑問を持つのは普通の感性なら当然だと思うよ。まあ、我が家が特殊なのだろう。

「私達の事は気にしないで下さい」

「それに、ワタクシ達は「家族」ですので、何も隠す必要はありませんわ」

「……それに……そんな事……気にならなくなる……」

 ソニアの質問に答えたのは、嫁さん達だった。もうこれがデフォルトになりそうだな。

 俺はソニアの帽子、マント、ブーツをゆっくり脱がせていく。そして最後に服……服なのか? これ。まあいいか……服と言う名のスリングショットの水着を脱がせる。

「少し、恥ずかしいわぁ……おねぇさんの肌、こんな色だから……」

「何を言う、美しく素晴らしい肌の色ではないか。俺は好きだぞ」

 ソニアはコンプレックスに思っているようだが、俺には褐色のエロボディにしか見えん。俺的には文句無しだよ。

「美しいなんて……そんな事言われたの、初めてよぉ……」

「そうか、ならば俺が言い続けよう。過去の分も、そしてこれからも」

 そう言いながら、ソニアを優しくベッドに横たえた……




「ねぇ、旦那君?……おねぇさん、初めてだったのよぉ? もう少し優しくしてもいいんじゃない?

 ソニアが拗ねた顔をして文句を言ってきた。顔を赤らめながらなので、本気では無く照れ隠しだとバレバレだよ。

「すまん……ソニアが魅力的だったので……つい……」

 少々……いや、かなりがっついてしまったのは事実。ソニアの肉感溢れる肢体を前にして、興奮が抑えきれなかった。猛省しなければならんな。

「ふふ、冗談よぉ。それだけおねぇさんの体が気に入ったという事でしょう?」

「ああ、最高だった」

「ふふふ、それなら良かったわぁ」

「あら? それは聞き捨てなりませんわ。最高なのはワタクシの体でしょう?」

 というプリムラの声が聞こえた。声色から少々揶揄っているのが分かる。

「ベッドを動かすので手伝って下さい、旦那様。あ、ソニアさんはそのままで結構ですよ」

 そう言って既にもう一つのベッドに手をかけているマリー。こちらは少々苛立っているようだ。あ、はい。手伝わせて頂きます。

 言われるがままベッドを動かし二つを並べる様にくっつけた。これで五人乗っても大丈夫だな、まあつまりはそういう事だろうね。

「次は……私の番……」

 大きくなったベッドにちょこんと座っているリラがそう言った。勿論、全裸だ。それに続きマリーとプリムラも服を脱ぎ始めた。

「旦那君も大変ねぇ……体は大丈夫なのかしらぁ?」

「問題無い。俺は嫁を等しく愛すると決めている、そして全員を幸せにすると。その為に努力をして全力を尽くす事に何ら躊躇ためらいは無い」

 再三宣言しているが、俺が求めているのは『最高の嫁』だ。ならば俺もそれに見合うだけの、最高の『夫』でなければ釣り合いがとれないからな。

 さあ、嫁さん達の為に頑張りますか。俺達の夜はまだ始まったばかりだ。

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