第14話 組織D
馬の群れが森の中に現れ、黒い鎧をまとった兵士たちが俺たちを囲んだ。
彼らの目には冷酷さと狡猾さが浮かんでいる。その中心に立つ一人の兵士が声を上げた。
「そこにいるのは対象番号L-37か! 逃げられると思うなよ、奴隷風情が!」
リリカの顔には、隠しきれない恐怖が浮かんでいた。
(よくもリリカを怖がらせてくれたな。お前たちには俺が絶望を教えてやる)
「ゲロ、ゲロゲロ?(お前ら、死ぬ覚悟はできているんだろうな?)」
兵士たちは木でできた短剣を携えている俺の姿を見て笑い声を上げた。
「何だ、このカエルは? おもしろい冗談だ!」
おもしろい冗談だ? それはこっちのセリフだ。
姿かたちだけで相手を侮るとは、さすが異端者の組織、Dの一員と言ったところか。
「ゲロゲロ(リリカ、下がっていろ)」
短剣を構え、敵を睨みつけた。この短剣は、リルカが丹精込めて作ってくれたもので、ただの木の枝ではない。リリカの優しさと努力が込められた特別な武器だ。
リリカの短剣を見つめると、体中に力がみなぎってくる。まるで彼女の想いが直接俺に伝わってくるようだ。
「ゲロ、ゲロゲロ!(さぁ、粛清の時間だ!)」
兵士たちが一斉に攻撃を仕掛けてくる。俺は素早く動き、リリカを背後に隠しながら敵の攻撃をかわす。短剣を振り、光の軌跡が鋭く描かれる。
一人目の兵士が近づいた瞬間、跳躍する。そして空中で旋回してその背後に回り込んだ。短剣を振り下ろし、その兵士の鎧を貫いた。兵士は声を上げる間もなく倒れた。
「何だ、こいつは!」
敵は驚きと恐怖に包まれている。
この隙を俺が逃すはずがない、次々とDの兵士たちを倒していった。
リリカを守るため、俺の動きは鋭く、正確だった。かつての勇者としての戦闘の勘が蘇る。
剣を握るのは久しぶりなのに、体が覚えている感覚が驚くほど自然に戻ってくる。
それにリリカが作ってくれた短剣は、見た目以上に強力だった。木の枝を削って作られたとは思えないほど鋭く、手に馴染んでいた。
彼女の思いやりが込められたこの短剣は、まるで守護の力を宿しているかのようだ。
短剣の刃が敵の鎧を軽々と貫くたびに、俺はその力強さに驚きを感じた。
通常の武器ならば通用しない相手でも、この短剣はまるで彼らの防御を無視するかのように切り裂く。
「対象番号L-37を返せ!」
と叫ぶ兵士がいた。その声が俺の怒りをさらに煽る。
「ゲロ……ゲロ?(返せ……だと?)」
俺の攻撃は止まらなかった。短剣を振るい、敵の鎧を砕き、兵士たちを次々に倒していく。
その間も、リリカの安全を第一に考え、彼女を守るために最善を尽くした。
兵士の一人が突き出してきた槍を素早くかわし、俺はそのまま短剣で反撃した。
敵の鎧を貫き、致命的な一撃を加える。敵は呻き声を上げて倒れた。
「対象番号L-37を連れてアジトに撤退だ! このカエルは悪魔か何かだ! 俺たちでは手に負えない!」
別の兵士が命令を下すが、俺はその前に立ち塞がった。
「ゲロゲロ?(させると思うか?)」
短剣を振り上げ、その兵士の顔に恐怖を刻んだ。俺の動きは速く、敵の反応を超えている。短剣の刃がまた一人の敵を倒す。
リリカのために戦う俺の姿勢は揺るがない。彼女が見守っていることを感じながら、俺は戦った。かつての勇者としての戦闘技術と本能が蘇り、俺を勝利へと導く。
最後の一人の兵士が、俺の前に立ちはだかった。彼は他の兵士とは違い、明らかに強力なオーラを放っている。
「貴様……ただのカエルではないな」
彼は長剣を構えながら言った。
「ゲロゲロ(そうだ。俺はお前たちを滅ぼす者だ)」
短剣を握りしめ、彼に向かって前進した。
一対一の戦いは、瞬時に決着がついた。
彼の攻撃は速く、鋭かったが、俺の短剣の動きはそれを遥かに凌駕していた。
刃と刃が交差する間もなく、俺の短剣は彼の防御を突破し、致命的な一撃を見舞った。
ケロキングとしての圧倒的な力と勇者としての戦闘経験が一体となり、敵を圧倒するのに苦労はない。
彼は驚愕の表情を浮かべたまま、地面に崩れ落ちた。
「貴様、一体何者だ……」
「ゲロゲロ(俺はブラッドだ)」
短剣の刃が彼の鎧を貫き、彼の瞳に驚きと恐怖が浮かんだ。
「まさか……魔王……?」
彼は最後にそう呟き、地面に崩れ落ちた。
俺は息を整えながら、リリカの方を振り返った。
「ゲロゲロ(リリカ、大丈夫だよ)」
「カエルさん……わたしのせいで血がいっぱいついてる……」
彼女の目には涙が溢れていた。そっと頭を撫で、その涙を拭い取った。
「ゲロゲロ(大丈夫、慣れっこさ)」
リリカはその言葉に頷き、俺の手をしっかりと握り返した。
その瞬間、俺たちの絆がさらに強まった気がした。
「ふふふ、まるで本当の勇者様みたいだね。きっと勇者様はこんな風にみんなを守るために血がいっぱいついちゃって、それで血みどろ勇者なんて呼ばれてたんだろうね」
それだけが血みどろ勇者なんて呼ばれた理由ではないんだけどな。
でも、うれしいよな、こんな風に思ってくれる人もいたんだから。
「ゲロゲロ(リリカを守るためなら、俺は何でもする)」
リリカは涙を拭い、少し笑顔を見せた。その笑顔が俺の心に希望の光を灯した。
その時、俺たちの周囲の静けさが急に破られた。さらに馬の蹄の音が聞こえてきていて、追加の兵士たちが到着したのだろう。
「ゲロゲロ(リリカ、しっかり俺の後ろに隠れていろ)」
リリカは頷き、再び茂みに身を隠した。俺は短剣を握りしめ、新たな敵に立ち向かう準備を整えた。
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