距離
オレと紗希は、絶妙な距離感で連絡取り合ったりご飯食べなどに出掛けている。
友達以上恋人未満…みたいな?
まぁ、そもそもが家族なんだけどね…。
でもさー…なんかいもうとっていうか…ほんとはさ…心配だし放っておけないんだよね。
おにいちゃん特権でなんとか繋いでる的な?
しかしこんな不安定な感情は、闇に葬ります。
どうやって葬るのか知らないですが…。
ー急募ー
叶わない恋を闇に葬る方法って…そんなのあるわけないか。
仕方なくオレは、紗希の二十歳の成人式に着物をプレゼントして、それ以外は極力干渉しないと決断いたしました。
その決断後、オレは紗希と着物選びに向かった。
もうさ、ほんとはワクワクなんよ…。
デートみたいでさ…嬉しいんよ…。
ですが‼︎
これで最後。
いもうと離れってやつかな。
なんか…寂しいけど…いつまでもオレがこんなんじゃ紗希が前に進めないもんね。
そうこうしている間にも、着物屋さんに到着。
紗希は、あっという間にコレっていう商品を選び出し試着。
…
可愛くない⁉︎
もう…可愛すぎるでしょうよー…。
てなわけで、かわいいお写真をパシャパシャいたしましたよ。
紗希は、メイクしたり髪の毛きちんとしてから写真撮ってよ〜って言ってたけどさ、今のままでじゅーぶんにかわいいのですよ。
これでさ…当日化粧して髪型整えたらさ…ヤバいよね。
みんなの視線釘付けランキング一位になるだろうなぁ…。
紗希…おめでとう。
幸せになれよ。
と、心の中でつぶやいた。
結婚式かよっ…
そして成人式当日、朝から玄関チャイムが鳴った。
誰だろう?宅配かな?と思いながらドアを開けると紗希がいきなりオレに抱きついてきた。
「おぉ、紗希?わざわざ朝イチでここに来なくてもよかったのに」
「ううん、絶対来るって決めてたの!一番におにいちゃんに見せたくて」
「そぅかー。紗希、かわいいよ」
「ありがとうございます。おにいちゃん…」
紗希は、何か言いたそうだった。
「ん?どうした?」
「あのね、おにいちゃん…もうそろそろわたしと距離おこうかなって考えてるでしょ?」
…
バレてた。
「あー…まぁうん。そろそろ紗希も大人になるから…その…あんまりオレが執着するのもどうかなってさ…」
「あのね、わたし…実は…看護師になるって言ってたんだけど…ほんとはね…ほんとは…さ…」
「うん、ほんとは?」
…
「ほんとは、餃子の皮になりたいんです‼︎」
なんて意味不明なこと言われました。
「餃子⁉︎」
いきなりの意味不明なお言葉にオレはびっくりした。
え?オレの聞き間違いかな?
「あのー…餃子とは?」
「こんなこと言ったらおにいちゃんに嫌われちゃうかもしれないんだけど…実は…」
「うん。実は?」
「わたし…ずっと二人暮らししているころから…おにいちゃんに申し訳なくて…早く一人前になってお礼しないとって思って…でも、どうするのが一番正解なんだろうってずっと考えてて…」
「うん…」
「それで…とにかくおにいちゃん離れして自力しなきゃって思って…でも…できません」
「いいよ、オレは紗希の大切な家族なんだし。無理に離れたり自力とかしなくてもさ。寂しかったらオレいつでも会いにいくし」
…
「でも…そんなこといつまでもしていたらおにいちゃんに彼女できないですよね…だから…だから…」
「おにいちゃんは、彼女いなくても平気な人間なんだ。だから大丈夫」
と、笑ってみせた。
すると紗希は、ポロポロ泣きながら
「大丈夫っていう人は、我慢している人です。笑顔の裏側でおにいちゃんは…いつも我慢していて…わたし…重荷です…」
とポロポロがとまらない…。
「紗希ー…泣くなよ。せっかくの化粧が落ちるぞ?もうほんとオレは心配しなくていいからな。ほら、そろそろ時間だから送るよ」
とオレは紗希を会場まで送り届けた。
車を降りるとき紗希は、
「今日久しぶりにおにいちゃんのところにお泊まりしたいです」
と少し申し訳なさそうにオレをみた。
紗希にしたらもう、実家にオレしか住んでないんだもんな。
オレは距離をとるとかじゃなくていつでもウェルカムじゃなきゃいけないんだとハッとした。
「紗希、そんな顔すんなって。いつでも泊まっていいんだからな。また迎えくるから終わったら連絡して」
とこたえると紗希は嬉しそうに会場へと向かっていった。
あ、ところで餃子ってなんだったのだろう⁇
紗希が戻ってきたら聞くことにしようかな。
続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます