親心?

「えっ…紗希⁉︎」

 

「おにいちゃんは…おにいちゃんはさ…いつも笑顔だけど…ほんとは笑顔の裏側に、たまに寂しいっていってる気がするんです。だから…だから…そういうときは、ハグするといいとおかあさんが前にいっていました。なので心がさみしくてハグしたいときは、わたしでお役に立てるかわかりませんが、どうぞおっしゃってください。」

 と、ギュッとオレに抱きついた。

 

 

 紗希…

 

 紗希だってまだ心の傷が癒えていないだろに…なのにオレの心配するなんて…

 

 

「紗希…ありがとう。」

 オレは紗希を抱きしめ返した。

 

 オレのこのキモい気持ちって…親心…だったりするのか?

 

 それにしても…

 

 紗希あったけー。

 しかもいい匂いしてくるじゃねーかって‼︎

 

 

 

 ‼︎

 

 おい待て‼︎

 

 オレはガバッと紗希から咄嗟に離れた。

 

「紗希‼︎にいちゃん汗臭い‼︎ごめんな。ほら、先に風呂入ってオレの臭い落としてきな」

 と、お風呂へと慌てて誘導した。

 

「ふふ、それならわたしも同じです。」

「紗希は、いい匂いした。……あ、なんか…変態発言だったな…ごめん…」

「いえ、そんなことありません。あと、おにいちゃんのにおい、わたし大好きです」

 と、ちょっとイタズラに笑って紗希はお風呂のドアを閉めた。

 

 

 オレのにおいが好き⁉︎

 

 紗希…

 

 ごめん…

 

 変態にいちゃんのそばで生活しているばっかりに、紗希までもが変態になりつつあるんじゃなかろうか…。

 

 …

 

 しばらく困惑して座り込んだ。

 

 

 あーあー…

 

 紗希が、めっちゃ外見も中身もカッコいいおとこつれてきてさ…彼氏でーす‼︎って言って結婚しまーすって連れ去ってくれたらオレも諦めつくし…この気持ちに蓋閉めてぎゅうぎゅう押し込んで、土に埋めるんだけどな。

 

 

 恋なのか…それとも親心なのかわからない変な感情…。

 

 オレ…って…なんなんだろうなー…。

 

 

 ほんとダメダメな人間だ。

 

 

 

 …

 

 

 

 紗希は、毎日部活も勉強も頑張っている。

 それなのに、家の手伝いもしてくれている。

 

 おにいちゃんだって、学校行きなが配信しているんだから、わたし以上に大変だからって。

 

 

 こうしてオレたちは、お互い協力して支え合いながら生活している。

 

 結局オレは在学中、配信者だとバレずにいけた。

 

 

 そして高校を卒業して就職することにした。

 

 大学に行くことも考え…たりはしなかった。

 

 

 だってオレは勉強がそもそも好きじゃない。

 

 

 紗希は、頭がいいので大学へ進学してもらいたい。

 

 これが親心ってやつだ。

 

 やっぱり…オレって…紗希を好きだけど、家族として好きなんかな⁇

 

 

 もう…わからん。

 

 

 でも、大学に行かせてあげるだけのお金を用意しとかなきゃだな。

 

 

 社会人になってもオレは配信を続けた。

 

 

 今までは、昼間は高校生だったから配信のみでの稼ぎだったけど、今は昼間も働けるからかなりの余裕ある生活ができる。

 

 

 紗希も高校生になったので、勉強しながらバイトしたいと申し出てきた。

 

 お金は、気にするなと言っているのだが…社会勉強だからというので、仕方なく了承することにした。

 

 

 たぶん紗希は、オレへの申し訳なさもあるのだと思う。

 

 

 社会人になってオレはつくづく思うのだが、紗希って…いつもすっぴんなんだよね。

 

 

 高校生って結構化粧してる子いるけど…紗希は、化粧しなくてもめっちゃ肌きれいでかわいいんよね。

 

 モテるだろうな…

 

 

 てか…彼氏いるよね。

 

 

 だって…こんなかわいい子みんなが放っておくわけないもんね。

 

 

 オレもこんな子クラスにいたらもうアタックしているに違いない。

 

 

 …

 

 

 そういや、中学に入ってから大人びて彼氏がいると思っていたけど…その頃からずっと同じ人と付き合ってたり…するのかな…?

 

 外での紗希は、まったく把握してないから正直わからないし…そんなこと考えれば、考えるほど心がえぐれる。

 

 

 …

 

 やっぱりしんどい。

 

 親心か、好きなのか…

 

 

 …

 

 

 でも、これだけはわかる。

 

 紗希をとても大切におもう。

 

 

 だからなんじゃい⁉︎ってことだ。

 

 

 …

 

 

 続く。

 

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