我慢
紗希は、中学生になりバレー部に入った。
勉強も部活も全力で頑張る紗希。
…
頑張るのは…いいことだけど…紗希は責任感がとても強い気がする。
だから少し心配なのだ。
この前、夕飯を二人で作っていて紗希が腕まくりをしたんだけど…オレさ、見ちゃったんだよね…。
手にあるアザをさ…
「紗希、その手どうした?」
「え、あー…バレーでさ。でも大丈夫!全然痛くないし」
と、アザを軽く摩る紗希。
…
アザできて痛くないとかあるん?
「でも…冷やした方がよくない?ちょっと待ってな」
救急箱からゴソゴソとあさって、オレは紗希の手を優しくとり湿布を貼ってあげた。
「え、そんな大袈裟にしなくても…」
「いや、絶対痛くないわけないし。湿布たくさんあるから毎日貼って寝なよ?」
たくさんの湿布を紗希に渡した。
すると紗希は、さっき貼ってあげた部分をさすり、
「ありがとう」
とにっこり返しをしてくれた。
…
「あー、…おぅ。」
オレはどうにもこうにも紗希の笑顔に慣れない…。
暗いところからいきなり明るいところに放り出されたんか?ってくらいな心情になる。
笑顔が眩し過ぎるんよ…
次の日オレは早速紗希用に、たくさんの湿布を購入した。
そのついでにサポーターも買った。
このサポーターがあれば少しは、痛み軽減できるかな?
そんな紗希は、とっても遠慮深いんだが…誕生日プレゼント…何あげよう…。
今までは、かわいい文房具とかプレゼントしてたけど…中学生ってなにが一番嬉しいんだろうか?
…
わからなかったオレは、図書券をプレゼントすることにした。
これなら参考書とかも買えるし、本だって好きなの読めるもんね。
あと、もう一つオレはプレゼントを用意していた。
早起きの紗希と一緒に朝ごはんを食べてゆっくりした。
その後掃除したし、やることも終わったし、夕飯前に少し散歩しようと紗希を誘ってみた。
ちょっとびっくり顔の紗希だったけど、喜んでついてきてくれた。
近くの公園にはいり、オレは自分のバッグからサプライズプレゼントをだした。
「ジャジャーン‼︎サプラーイズ。ハッピーバースデー」
とバレーボールを出した。
紗希は、目を丸くして
「えっ?さっき図書券もらったのに」
と驚いた。
「まぁ、あれもプレゼントなんだけど…こっちがメインかな!ほらパス‼︎」
と言いながら紗希にボールをパスした。
「えっ…、あ、ありがとう!」
ボールをキャッチして嬉しそうに紗希は、ボールを抱えた。
「ほら、そのまま練習しようぜ?紗希、パス‼︎」
ボールよこせの合図をすると紗希がオレにボールを優しく投げた。
それからトスの練習をしたりしたんだけど…
めっちゃボールが手に当たると痛くね?
…
全然痛くないなんて…紗希の強がりめ。
それからオレたちは、しばらくトスの練習をして家に帰ることにした。
「そろそろ夕飯作らなきゃだから帰るか」
「うん。……あ、おにいちゃんみて。空…きれい」
そう見上げるキラキラした紗希の視線の先をみると、ほんとにきれいな夕焼けだった。
帰り道、家まで帰るのに…なんか夕日をバックに紗希と並んで歩くのは、最初で最後なんじゃないかってオレは少し寂しく思った。
なんでオレは今までもったいないことしてきたんだろうな。
もっと素直に家族を受け入れておけばよかったと、いまさら遅いけど反省した。
とうさん…かあさん…ごめんなさい。
そう心の中でつぶやいて、ピンクと水色の美しい空にオレの気持ちを届けた。
届くかわからないけど…どうしても心からのお詫びをしたくなった。
家に入り、オレは紗希に手が痛くならないようにと買っておいたサポーターを渡した。
「これで、少し痛みが軽減されるといいけど…」
「もう、おにいちゃんは心配性ですね。先輩がそのうち慣れてくるとアザできなくなるって言っていたから大丈夫なのですが?」
と、いいつつサポーターを大事そうに抱えていた。
「紗希はさ、あれだよ?我慢すると頑張るって意味たまに間違えてるから、だからおにいちゃんが頑張りすぎるなって教えてあげてるんだよ?どうしても痛い時は、見学したり休んだりしてもいいんだからね?無理は、しない‼︎わかった?」
と、オレは優しく紗希の肩にポンって手をおいた。
すると紗希が驚くべき行動をしてきた。
「なら、おにいちゃんも優しさの笑顔の裏側をわたしにきちんと伝えてくださいね」
とオレに抱きついた。
⁉︎え…紗希⁉︎
え…?
優しさの裏側って…
もしかして、オレが紗希を一人の女性としてみていたって…バレてた⁉︎
⁉︎
えっ⁉︎
続く。
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