第22話 ニコくん、ごめんね♡
それは授業終わりの出来事。
「……ニコ、アナタをワタクシのパーティに入れてあげますわ」
「へへっ、よろしくぅ!」
「ええ、よろしく。じゃ、行きますわよ」
「えっ、なんで?」
コネを使ってパーティに入ったは良いものの、ボクは放課後にスベリア達に連行されてしまった。
ニヤついた顔つきのシャイアと苦笑いを浮かべるジニーに両側の腕を組まれている。
……女ばっかで、むさくるしいよぉ。
「……なに?ボクの歓迎会?」
「ええ、歓迎してさしあげます。明日も明後日もね」
明日って、休日じゃん。シモンとイチャつきたいんだけどなぁ……。
でも、スベリアには助けられたから強く言えない。まあ、歓迎会ってんなら悪い気はしないし、いいかな。
だって、これからは、いつでもシモンといちゃつくチャンスがあるわけだし!
「しょうがないなぁ、じゃあお菓子は、高いやつね」
「……ま、終わったら食わしてやりますわよ。まずは、ランニングからですわね。学校の周りを3周でいいですわ」
「ヴえ゛っ!?……ここって、一周10キロくらいあるんだけど!?」
「ええ、鈍ったアナタにはちょうどいいでしょう。ワタクシのパーティに入るんです、それくらいはやってもらわないと」
ま、まさか。コイツ……。
歓迎会(体育会系)をするってのか!?
いや、待て……。明日も、明後日もって言った!?
「す、スベリア……。嘘だよね?」
「なにが嘘なものですか、アナタが足手まといになることは覚悟してますが限度があります。良い機会だから、少しは鍛えなさいな。しばらくは毎日ね」
「ひ、酷い!そんな話、聞いてないぞっ!」
ボクはスプーンだって持てないくらい貧弱なんだぞ!
一キロ以上の移動には馬車を使うし、200メートル以上はシモンを使うんだぞ!
30キロも歩けるわけないだろ!ふざけるな!
「これは人権侵害だよっ!ママにいいつけてやる!」
渾身の不満を全身で訴える。
ボクの言っていることのほうが正しい筈だ。それを理論立てて、スベリアに説明する。
けれど、友達のハズのスベリアは同情するどころか。
汚物を見るかのように目を細めては、舌打ち混じりに吐き捨てる。
「アナタねぇ……。それで良いと思っているの?」
「そんなこと、聞いてないでしょっ、って言ってるの!シモンにも言いつけてやるんだからっ!」
腕を両側から掴まれながらも、足をバタつかせ抵抗する。しかし、左隣のシャイアから脇腹を小突かれてしまった。痛い……。
「ニコ、先日アナタは野盗に襲われたましたわよね?それをワタクシが助けてあげたことは覚えてる?」
「ぅっ……!お、覚えてるけど!それとこれとは話が別だよっ!」
「いいえ、ニコ。ワタクシが言いたいのはね、なんでシモン様がピンチになったのか?という所ですわ」
スベリアから、不思議な問いかけが飛んでくる。
なんでピンチになったのか?そんなの、野盗が来たからに決まってるじゃない。
あるいは、護衛がボク達から離れるという失策を犯したから?理由なんて知らないし、関係ないよ。
そう、思っていた。けれどーーー。
「……それは、ニコが弱かったからですわ。アナタが足を引っ張ったから、彼はピンチになったのです。もう一度聞くわね?
……このままで、良いのかしら?」
「…………」
スベリアのそんな言葉に、ハッと気がついた。
なんであの時、シモンは戦わず、降伏を選んだのだろう。スベリアが来た後、彼は魔法で野盗をやっつけていた。ナイフで刺されても、ピンピンしていた。
シモンなら負けるはず、ないのに、……なんで?
「アナタがいつまでもそんな調子なら、またこの間のようなことは起きるでしょうね。シモン様はお強いのに、弱いアナタが人質に取られてしまって。
……それを盾に彼は犯される」
「あっ……」
ボク、か……。
ボクのせい、だったのか。
あのとき、シモンが強いと野盗にバレてしまった場合。ボクが真っ先に狙われ、人質にされたことだろう。
シモンは、それを防ぐため、奴らの下衆な要求を飲んだというのか……。
身を呈してまでも、ボクを守るために……。
「…………」
「アナタがそれでも良いと言うのなら、もう知りませんわ。さあ、答えなさい。
ニコ、アナタはどうするの?」
「…………ぼ、ボクは」
ボクは。
そんなの、知ったことじゃないよ。
ボクは偉い人。ボクが強くなくたって護衛がいるんだから、そっちに任せたらいいんだよ。
訓練なんて、ボクにできる訳が無いし。
できないことをやるなんて、非効率だ。
ーーーそう、頭では分かっているのに。
「やる、やるよ……シモンは、ボクが守るよ……」
「フッ……まったく、言うのが遅すぎですわ」
なぜか口が固まって『やらない』とは言い出せなかった。けれど、不思議と後悔もない。
あの日のようなことは、絶対に起こしたくないから。
だから、これでいい。
……しかし、シモンはボクが守る、か。
いい言葉だな。確かに、ボク自身が強くなって。
堂々と正面から、この手でシモンを抱くというのも良いかもしれない。
すっごく、ロマンチックだ。
……よし、それでいこう!
ボクはやる、やってやるぞ!
「ニコくん、頑張ろうね♡」
顔を紅潮させたジニーが、心底愉快そうに笑う。
ジニー……。
そんなに、ボクがパーティに入ることを喜んでくれるのか……。やっぱりボク達心友だね。
「ジニー、ボク頑張るよ!絶対にシモンを守るんだ!」
◇
ちゅぷ……。ちゅ……。ずっ、ずっ……。
粘っこい音が、室内に響く。
学校に来てからというもの、彼女とは何度かこうしているが、いつもとは一点、違いがあった。
それは、今日のこれは火傷の治療ではなく。
自然な流れでこうなったということ。
「ひひ……、先輩♡キス、しちゃいましたね」
「あ、ああ……」
思い返せば、十数分前のこと。
日も落ちて暗くなった頃、ジニーが訪ねてきた。
話を聞けば、どうやらお嬢様はスベリアパーティの訓練を行うようで、これから毎日遅くなるかもしれない。とのことだった。
今日も、あまりに身体が出来上がっていないためニコとスベリアだけ居残りで訓練中らしい。
ジニーはそれを教えるため、来てくれたとのこと。
ーーーそして。
『汗かいちゃいました。……お風呂かしてくれませんか?』
『かまわないよ』
『それと、訓練で身体も痛めちゃいまして……。良かったら、また魔法で治してくれませんか?』
『わ、わかった……』
俺に断る理由もなく。
彼女と風呂に入ったわけだが。
その日は、何かがいつもとは違った。
『ほらぁ♡早く身体洗ってくださいよぉー』
『う、うん』
一年前に彼女の身体を見た際には、覚えなかった興奮。しかし、1年という月日が流れ成長した彼女の身体は綺麗だった。
控えめだった彼女の胸は、お椀のように膨らんでいる。股間はツルツルのままだが、尻にも確かな肉がついている。
幼さの残る以前とは違い、彼女は確かに女になった。そこで初めて、全裸の美少女と風呂に入っている。なんて事実に、気がついた。
汗がしっとりと身体に張り付き。照明が彼女の身体をテラテラと輝かせる。
たまらず、俺の股間が疼くのを感じた。
こんなに興奮したのは、ドロシー様と初めて会った以来、かもしれない。
『はーっ……はーっ……』
『あれ?シモン先輩……?』
薬液を掴み、彼女の身体を抱きしめるように塗りたくった。もはや、我慢ができない獣のように彼女の身体にがっついてしまう。
思えば屋敷にいた頃は、ずっとドロシー様に抱かれていた。それが急になくなったのだ。
休日には彼女に会いに行く予定だが、数日間抜いていないなど、久しぶり。
気づかない内に、相当溜まっていたようだ。
だから、俺は耐えられず、治療を望む彼女に女を感じてしまっていた。最低だ、俺は。
けれどーーー
『ひひっ、ひひひっ!』
彼女は、そんな俺に引いたりせず。
あろうことか、怒張しはじめた股間に手を伸ばしては、それをグッと掴んできた。
たまらず、『なにをする!』と彼女の顔を見る。
間近でこちらを見つめる彼女の上気した顔。
『ふふっ……』
その唇が、本当に。
本当に、すぐ近くにあって。
その間も、股間を甘く弄られていて……。
それでーーー
ちゅっ。
治療ではない、キス。
それを、ドロシー以外の女性と、初めて。
俺の方から、彼女と交わしてしまった。
「ご、ごめんっ!こんなこと、してしまって」
「ひひっ、先輩って、本当バカだなぁ……やっぱり私が管理してあげないとなぁ……」
抱きしめた彼女の身体を離し、この場から逃げようとする。けれど、女性とは思えないほどに強い力で抱きしめられて、拘束される。
耳まで赤く染まった彼女は胸元に顔を埋め、俺の乳首をなめていた。
「お、おいっ!」
「先輩から手を出したんですから、これくらい良いですよね?……れろれろれろ、っと」
長く、細く尖らせた舌が、俺の身体を這い回る。
ゾリゾリと。それでいて柔らかく濡れた感触にたまらず声を上げてしまう。
「うっ……」
「ふふふ、可愛いなぁ♡こんな可愛い先輩が、私を求めてくれるなんて……。本当、不真面目で良かったぁ♡」
「や、やめろ……」
「はーい♡やめまーす♡」
胸元を無遠慮に舐めていたかと思えば、意外とアッサリとジニーは退いた。
なんなんだ、彼女は……。
見知った存在であったハズの彼女の知らぬ顔。
爛々と輝くその瞳に、少しだけ慄いてしまう。
……けれど、股間はそんなことは気にならないようで、久しぶりに触れる女の感触に、愚直に立ち上がっていた。
「じゃあ、先輩♡改めて、治療をお願いしますね」
「……分かった」
「あ、でも!おちんちんが辛かったら、いつでもお相手しますよ!」
「…………」
誘うような、煽るような彼女の言葉。
それに、何も返すことはできず。
ただ、チンコをおっ勃てながら、黙って彼女の身体を舐め始めた。
◇
…………
「ひい……ひい…………。やっと、終わった」
訓練を終えたボクは、ヨタヨタと生まれたての子鹿のように歩いていた。
壁に手をつきながらじゃないと動けない。
もう、限界だった。
「シモ〜ン、きてぇ、……シモ〜ン」
部屋の近くまで行って呼びかけるが、反応がない。
この時間なら居るはずなんだけどなぁ……。
「あれ、ニコくん終わったのかい?」
「なんとか終わったよぉ、疲れたぁ……」
シモンは来ないけれど、どこからともなくジニーがひょっこりと顔を出した。
彼女は全身からホカホカと蒸気を出しており、激しく汗をかいている。
長風呂したのかな?
顔も真っ赤で、フラフラと歩いている。
彼女も訓練がキツかったのかもしれない。
「ジニーも、大丈夫?フラフラじゃん」
気になって、彼女に声をかける。
けれど、笑っている彼女の顔は幸せそう。
隠しきれない喜びを、フラフラと踊るように表現していた。
「うん、大丈夫。今はちょっと痛いけど、これは幸せな痛みだからね。とっても、幸せ」
訓練の痛みが幸せなんて、ジニーってドMなのかな?
身体が痛いなんて、嫌に決まっている。現にボクだって、筋肉痛で泣きそうなのに。
痛みが嬉しいなんて。
ジニーが、そんな笑みを浮かべられる理由が。
ボクには、分からなかった。
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