ドラクエ8 バウムレンの詩(キラーパンサーの亡霊) 感動小説 DQⅧ



主人公(勇者)


口数は少ないが心優しく、仲間を思いやる青年。デルカダール王国の兵士で、トロデーン城が呪いにかけられた際にその王子としての記憶を失っている。

ヤンガス


元盗賊で、主人公に命を救われたことから彼を「アニキ」と呼び、忠実に従う筋肉質で力持ちの仲間。口は悪いが心根は優しい。

ゼシカ・アルバート


トラペッタの村に住む魔法使いの少女。兄を失った復讐心から旅に出るが、次第に仲間たちと心を通わせるようになる。自信家で自由奔放な性格。

ククール


元盗賊団の一員で、現在は修道院で騎士として働くプレイボーイ。お調子者だが義理堅い一面もあり、次第に仲間たちとの絆を深めていく。

トロデ王


トロデーン王国の王。呪いによって怪物の姿に変えられてしまったが、娘のミーティア姫と共に元の姿に戻るために旅を続ける。見た目は怪物だが、王としての威厳と知識を持つ。

ミーティア姫


トロデ王の娘で、呪いによって馬の姿に変えられてしまった。主人公と共に旅をし、時折人間の姿に戻ることもある。






エイト達御一行は、船(古代船)を手に入れ、離れた大陸に上陸して、海辺の教会にて一泊をした。


エイト達は、旅立つ前に、教会の人達から、ドルマゲスの行き先かもしれない、カジノで有名なベルガラックのことを聞いた。

妙な事件があったらしい。

そのことを聞き、ククールが興味を持った。

「へぇーっ、カジノか、一日、いや、半日で良いから息抜きは必要だろ? パルミドは、イカサマされてばっかりで赤字だったしなぁ……」

そんなぼやきを聞きながら、エイトはククールと出会ったときの事を思い出した。

(以前イカサマしていたツケが回ったんじゃないのか?……)

その言葉を言いたいのをグッと堪え、冷静に考えてみる。

「トロデ王がなんて言うかな? あ……でも強い装備はあって困らないよね、ゼシカとヤンガスはどう思う?」

エイトはゼシカを見る。

「少しぐらいならいいと思うけど、深入りしないでよ? それじゃぁ、ベルガラックで装備をと最低限の道具揃えて余ったお金ならいいかな?」

「ヤンガスは?」

「あっしは、兄貴の意見を尊重するでガス。 兄貴と(普通の)カジノかぁ……」


<ヤンガスの妄想>

金庫に預けた一部と買い物の残りの手持ちを1万Gを4等分してカジノを満喫することになった、あっしら。

「はぁ……あっという間に2500G使っちゃった。 やっぱ地道に稼がなきゃだめかな?」

兄貴の残念そうな報告、ゼシカの姉ちゃんも同じような顔色だ。

「ごめん、私も駄目だった。でも、イカサマじゃないカジノって結構楽しいのね。また貯金溜まったらやりにきましょ? で、ギャンブル運強そうなククールはどうだったの?」

「っふ、もってかれちまった。……ぐはっ……ゼシカ!何をする!」

「な、何かっこつけていってんのよ!」

「いや、これには、訳があってだな、本場のバニーガールに見惚れてしまってだな」

「「…………(もっと駄目じゃん)」」

ククールに呆れる、ゼシカと兄貴。

「まぁまぁ、兄貴。 要は元が取れてたら良いでやしょ?」

「そりゃ、そうだけど……って……ヤ、ヤンガス、それは!!?」

あっしの両腕には、交換できるだけ交換した、金ぴかで強そうな武器と防具、そしてアクセサリーそれを見て、兄貴達は目を丸くする。

「ちょ……それどうしたのよヤンガス」

「……いったいどんなイカサマをしたらそんなに稼げたんだ?」

「イカサマなんかしてないでげす! ルーレットで頭を使いやしてね……例えば、3連続、偶数が出た場合、次は高確率で奇数がでるんでげす、勿論、外れた時ように保険用ベッドもしてでげすね」

「凄い、凄いよ、ヤンガス!!」

カジノで大勝したあっしに兄貴は抱きついてくる。

ゼシカとククールもあっしを尊敬の眼差しで見るでガス。

「ヤンガス、今日はパーッとパーティーしよう、それとボクらにやって欲しいこと無い?」

「んっ?……やって欲しいことでガスか?」

「うん、何でも良いよっ!」

「……何でも、でげすかぁ……」


<ヤンガスの更なる妄想>

(想像のベルガラックの広い温泉、洗い場にて)

「どー?ヤンガス、痒いとこない?」

「ご、極楽でげす、兄貴の背中を流してもいいでげすか?」

「カジノのお礼してるのに、ちょっと悪いよぉ」

「あっしも兄貴の背中流したいでげすよ」

「しょうがないなぁ……ありがと、ヤンガス」

「あっ、あっ、あっしにはもったいなさ過ぎるお言葉でげす……」

「これでドルマゲスも楽勝だね。 本当に頼りになるよヤンガス」

「そうでげす、兄貴とあっしがいれば、ドルマゲスなんて」


<ヤンガスの妄想終了>

「……ぐへへ……溜まらんでげすねぇ……その後兄貴と同じ部屋……」

ニヤニヤと妄想するヤンガスに気づかず、三人は教会を出ようとして、棒立ちのヤンガスに気づく。

「おーい、行くぞ」

「何してんの?日が暮れるまでにベルガラック目指すわよ!」

「ヤンガス、行こう?」

「あっ、すまねぇでげす」

ヤンガスは、慌てて三人の下へ走っていった。


エイト達は、夕方になる頃、無事ベルガラックへ到着した。

いつも通り、トロデ王と、ミーティア姫(馬)は、町の外の人目に就かない所で待機となる。

「じゃ、わしは、姫とここにおるから、情報を得たら明日の朝にでも報告してくれ」

「わかりました。 じゃ、姫、また明日ね」

美しい白馬の姫の頭を優しく撫でるエイト、姫は小さく返事をした。

それを恨めしそうにヤンガスが見ている。


ベルガラックに入るが、楽しみにしていたカジノは、数日前から休業中らしい。

ククールが失望すると同じぐらい、落ち込んでるヤンガスに、エイトとゼシカは首をかしげた。

「ヤンガスってカジノ好きだったっけ?」

「さぁ、パルミド育ちだから本場のカジノ見てみたかったのかも?」

「それにしてもあの落ち込みようは……」

そして、誰にも聞こえないような小さな声で

「人生終わったでゲス……兄貴との甘い時間が……」

流石に心配してか、エイトがヤンガスの背中を優しく叩く。

「大丈夫だよ、事件を解決したらまた始まるって」

「ひょっとしたら、ドルマゲスと無関係じゃないかもしれないわね……」

「そうか、ドルマゲスか、じゃ、サクッと倒してカジノでパーッとやろうか」

「そ、そうでげすね」

そして、同じ目的のせいか、珍しく両手をつなぐククールとヤンガス。

決意に満ちた眼差しでククールが口を開く。

「ヤンガス、さっさと倒してここで遊ぼう(バニーガールと)」

「そうでげすね。 さっさと倒してしまうでがす(兄貴との甘い時間のために)」

そして、エイト達は、宿屋でみょうな会話を聞くことになる。


結論だけをいうとカジノオーナーがドルマゲスに殺されたらしい。


そして、武器と防具を調達し、旅にでる準備を整え、ベルガラックを後にする。

そして、トロデ王にそのことを報告する。

「な、なんじゃと!? またしてもドルマゲスでの犠牲者が……ぐぬぬ……一日でも早くあいつをしとめるぞ!エイト」


そして、ベルガラックを出て間もなくヤンガスが変わった場所に気づいた。

「あ、兄貴、変な場所があるでげすよ」

ヤンガスが指を刺す方向に皆の視線が集まる。

「ん?」

「黄色くて変わった建物があるみたいね?」

「サーカスとかじゃないか? とりあえず、行くだけ行ってみないか?」

「お前ら、寄り道は……ふむ……姫もちょっと興味があるみたいじゃ、ちょっとだけじゃぞ?」

一刻も早く、目的を果たしたいトロデ王だったが、ミーティアがうまく宥め、謎の建物へ向かうことになった。

いつもどおり人目につかなさそうな場所で姫と王は待機する。

「でかいでがすね……」

口が開いたままになるヤンガス。

「こ、これってキラーパンサーよね?」

到着する間もなく、そこは、広い庭の中央に丸く大きな花壇。左右に小屋が一つずつ

そして、キラーパンサーの形をした建物があった。

大きなキラーパンサーの口が大きな扉になっていて、そこには、金髪でマッシュルームヘアーのちょっと小太りな男がいた。

男の服装は、オレンジの胴着みたいなものに、豹がらのズボン。

そして、彼は、屋敷内で放し飼いされているキラーパンサーを眺めていた。

「飼われてるでげすかね?」

「襲ってくる気配はなさそうだね」

「ふーん……悪い趣味じゃないな」

様子を観察する間もなく、ゼシカがマッシュルームヘアーの男に呼びかける。

「すいませーん」

……

「んなーっ!!」

やや間があり反応がある。

そして、テクテクとその男が歩いてくる。

「よく来ただー!!ここは キラーパンサーの父ラパンさまのお屋敷だなやーっ!!」

「キラーパンサーの父?」

ゼシカ、エイト、ククールが首をかしげる中、1人喰いつくヤンガスがいた。

「キラーパンサーの乳でがすか? 美味いでげす?」

「ヤ、ヤンガス……恐らく、育ての親とかそういう意味じゃないかしら? 流石にキラーパンサーが館の主ではないでしょうし」

「メイドとかで可愛い子ちゃんはいないのか?」

「……変わった客人だが……コホンッ」

男は咳払いをして話を続ける。

「オラは、ラパンさまの家来のカラッチだなや。おめさたちもラパン様に会いに来ただか?」

その問いかけに一同は一瞬だけ頭をかしげた。

「「(キラーパンサーの父のラパンって誰?)」」

一同は後ろを向き、4人で小さく話し合う。

「屋敷がキラーパンサーってことだからキラーパンサーを愛してる人なのよねきっと?」

「面白そうだしあってみようか?」

「でかそうな屋敷だしメイドぐらいいるよな?」

「キラーパンサーの乳って美味いでガスかねぇ?」

「ヤンガス……その乳じゃないから、さっき説明したでしょ?」

「あ、そうだったでげす」

「んなーっ!! おめさたち盗賊か?」

その言葉に、庭で放し飼いされていたキラーパンサーがカラッチのを庇う様に立つ。

「ガルッルッ……」

キラーパンサーがエイト達を睨み付ける間もなく、

「……あれ?」

「か、可愛いでげすね」

「んなーっ!!ゲレゲレが一目で懐いてる……当たり前な質問になるだが、キラーパンサーは好きだか?」

エイトは、懐いてきたゲレゲレと呼ばれたキラーパンサーに心を奪われ、猫をあやすかのようにキラーパンサーを撫でた。

「んーと、好きだよ、ゲレゲレちゃんかな? 可愛いね」

「グルルッ」

「ちょ、ちょっと待っとくんだな」

『ガチャ』

慌ててドアを開けるカラッチ

「ラパンさま、実はー今……」

そして、扉は閉まる。

『ガチャ』

1,2分経ち、カラッチが戻ってくる。

「特別にー!ラパン様との面会を許可するだ!これはキラーパンサー友の会ではとっても光栄なことで……って、あれ?」

「わぁーっ可愛いっ、手触りも凄く良い」

「きっと美味いもん食って育ってるんだろうな、良い毛皮になりそうだ」

「ゲレゲレ可愛いでがすね、兄貴、これもって帰ろうでげす」

「え、それはまずいと思うよ、野生のキラーパンサーでも手なづけてみる?」

「……んなーっ!!」

個性的な挨拶にエイト達御一行はようやく気づき、立ち上がる。

「コホン……特別にー!ラパン様との面会を許可するだ!これはキラーパンサー友の会ではとっても光栄なことだ。 ありがたく面会してくるだ。」

「じゃ、お言葉に甘えて」

「お邪魔します」

「美味いもん食えるでがすかね?」

「へっへ、メイド・メイド」

口々に屋敷に入っていくエイト達御一行

「……変わった客人だ、なんでゲレゲレちゃんが懐いたんだか……」

ゲレゲレの顔を見て首をかしげるカラッチ、それに合わせて、ゲレゲレも首をかしげた。


中に入ると、大きなキラーパンサーの首から先の模型が壁にうめ込まれ、一瞬言葉を失った。

「客人よ、良く来たな。 わしがラパンじゃ。 どうやらお前さん達は旅人のようじゃな」

そこには、ちょっと小さい体系で、王様にも大臣にも似合いそうな、おしゃれな髭で、豹がらのつばの無い帽子と豹柄のローブを着た館の主が居た。

「はじめまして」

「わーっ、豹柄も結構可愛いわね、私も着てみようかしら?」

「あ、兄貴、檻の中にもキラーパンサーがいるでがすよ!」

「…ラパンさん、メイドは居ないのか?」

「……コホン!……と……お主が、ゲレゲレが懐いた者か」

ラパンは背伸びしてエイトの目を見つめる。

「……ほう? 流石、ゲレゲレが懐き、カラッチが中に通したいといっただけのことはある。 澄み切った優しい目をしておるのぉ……」

「本当でげすか?」

ラパンの発言にヤンガスがエイトの目を見つめにくる。

「……ヤ、ヤンガス!?」

「ほ、本当でがすね、本当に透き通ってて水晶みたいでげす」

「えっ、そんな綺麗な目してたっけ?」

「ふむ……」

ヤンガスの言葉に続き、ゼシカが目を見る。

「えっ……あっ、あの……」

エイトの瞳に見入る3人。と思いきやククールも仕方なく輪に加わる。

「綺麗でがすね」

「流石、ドルマゲスの呪いに抗えるだけはあるわね」

「……ふむ、役得だなぁ、オレもそんな目を持ちたかった」

「……あの……もう良い? 見られるのは慣れてないというか恥ずかしい」

「うむ、よし、決めた、お前さんならわしの代わりが務まるかもしれん。 よし。 お前さん達 わしの話を聞いてくれるか?」

「ボク達でお役に立てるなら」

「流石兄貴、兄貴は仏様のような慈悲深い方でげす」

「あんたって本当お人よしね、でも困ってるなら助けてあげないとね」

「そうだな、困ってる人がいるなら、助けてやるか、それなりの対価にも期待するが」

「おぉ、勿論じゃ、礼ははずむぞ、実はじゃな」

そして事情を語り始めるラパン。

「わしの古い友がある場所で道に迷っておるのじゃ、本来なら、わしが行って、やつを導いてやるべきところなのだが、見ての通りわしは多忙じゃ、ここを離れられん。 そこでお前さん達に我が友の道案内の役目を果たして欲しいのじゃ。 お前さん達ならきっとできよう。 どうじゃな?わしの頼み聞いてくれるかな?」

「難しい頼みじゃなさそうよね。 エイトやりましょ?」

「おっさん大変なんっスね、兄貴、当然やるでげすよね?」

「うん、忙しいならしょうがないよね 任せてください」

「おお、すまんなぁ、場所とかについて言うからしっかり聞くんじゃぞ?」

「む……なんか面倒だな」

ククールの一言に、少し困惑し始めた、エイト達、断られまいとラパンは必至に話を続ける。

「だ、大丈夫じゃよ、お前さん達も、ここに来る道中、一つぐらい見たかもしれんが、この近辺には4つのキラーパンサーの像があるのだ」

「へぇ……誰か見た?」

「うっすらと石像みたいなのは見えたわよ?多分それかも」

「あっしも見たでげすよ、キラーパンサーの像だったんでげすね」

「それでじゃな、その4つの像が見つめる中心に、明け方にしか見えない、不思議な木があってな。 我が友は、その近くにおる。 お前さん達そこへ行って、我が友に、これを渡してくれんか?」

そして、ラパンは、エイトにおしゃれな瓶を手渡した。

金色の蓋に、まるで天使を真似たみたいに、柄のところに小さい天使の羽が生えている。中には白い粉が容器の半分程入っていた。

「……これは?」

「『深き眠りの粉』じゃ、我が友は利口なやつ故、それを渡せば言わずとも行く道を知るじゃろう」

「我が友にそれを渡したら、再び、ここに戻ってくるがよい。 その時は礼をするぞ」

「お礼……食い物でげすかね?」

「……………バウムレン……(わしが直々に行けんですまん……)」

「おっさん?聞いてるっス? お礼ってのは……」

「嗚呼、食べ物だな?それも手配しておこう。

「高台からなら、キラーパンサー像がいくつか見えよう、急いではおらんが、可能であれば1日でも早く我が友を導いてやってくれ」

「わかりました」

「後、そうじゃな、余計な荷物があれば、しっかりと預かって置くぞ?」

そして、エイト達御一行は、せっかくなので、トロデ王と姫を暫く置いてもらうことにした。

「何故ここにおらないかんのじゃ?」

「姫も王も長旅でゆっくり休んでないでしょ? 依頼をこなす代わりに泊めてくれるそうです」

「ふむ……しかし、一日も早く……」

「おっさん、上物の酒と、無農薬の野菜もあるらしいでげすよ」

「なんと!酒?……あ、いや、ふむ、無農薬の野菜か……たまには姫も美味いものが食べたいじゃろうし……少し世話になるとするか」

そして、トロデ王と姫と馬車を置き、キラーパンサー2頭に二人ずつ跨り場所を調査する。

じゃんけんで分かれた結果、エイトとヤンガス、ククールとゼシカになった。

キラーパンサーに乗る前に、地図を確認していると、ラパンが近づき、目的地の場所と石像の位置をおおまかに教えてくれた。


とりあえず、石像探しからだ。

「あっ、あれでげすよね?」

「あ、本当だ、ゼシカ、ククール、あそこ」

「おっ、早速見つけたな、とりあえず行ってみよう」

そして、右の方向を向いたキラーパンサーの像を見つけるのだが……

「え……橋壊れちゃってるね、こりゃ……回り道しないといけないでげすね」

「困ったなぁ、ここ通れたらすぐなんだけど」

キラーパンサーの像は見つかったが、すぐ傍に、深そうな川が流れていて、橋が壊れていた。

人を乗せたままのキラーパンサーの脚力では、ちょっと足りない距離だ。

「エイト、ちょっと地図見せてくれ」

キラーパンサーから降り、地図を確認する。

こりゃ、回り道はかなりな距離になるよなぁ……

「そうね、キラーパンサー使っても半日ぐらいかかりそう」

「おまけに早朝にそこにいかないといけないのよね? ちょっと疲れそうだし、キラーパンサーにも悪いわよね」

「そうだねぇ……せめてこの橋が使えればなぁ……」

「あ、兄貴! あっしに任せてください!」

「へっ? どうするのヤンガス?」

「修理でがす、一日ちょっとあれば、これぐらいの小さい橋は作れるでげすよ」

「橋かぁ……じゃ、モンスター達にも手伝ってもらう?」

「面倒だが、リーダーがそういうんじゃ仕方無いな……。 そうだな、人手は多い方がいいだろうしな」

「……じゃ、まずは材料調達してきましょ?」


そして、橋の材料を集め、エイトがスカウトした魔物達を呼び、材料調達が終わり、、夜が来た、キラーパンサー達にラパンハウスまで送ってもらい、エイト達はラパンハウスに泊まらせてもらう。

「して、どうじゃ?場所の確認は出来たのか?」

簡易的な橋を作っていることを伝えた。

「ほぉ、本当に優しい人達じゃの、あそこの橋が使えれば確かにすぐ着くじゃろうし」


そして、翌日の夕方、ようやく橋が完成した。

「やったでがすね!」

「うん、私たちが乗っても壊れないから問題なさそうよね?」

橋は、そこまで頑丈そうではなかったが、4人が橋の真ん中に集まっても、崩れそうな気配は無かった。

手伝いをしていた魔物の一匹のオークキングのオークスが嬉しそうに話しかけた。

「おでの目に狂いは無かったっスね、ここがあると魔物達も助かると思うっス、一緒に作業出来て嬉しかったっスよ」

「オークス、お疲れ様、そだ、こんなんしかないけど、チームの皆で分けて?」

そう言ってエイトは、ベルガラックで調達した、果物などをオークスに渡した。

「エイトさんのお気遣い感謝ッス、ありがとッス」

そして、魔物達は、袋の中身をどう分配するか相談しながら本来の住処へ帰っていった。

「兄貴は優しいでげすね。 モリーのおっさんの言うとおりでげすね」

「そんなことないよ、さて、いよいよ明日の朝だね」

「一日も早い方が良いって言ってたよな? 場所の下見だけ行こうぜ」

「賛成、疲れたけど、明日には確実終わらせたいわよね」

「わかった。 じゃ、キラーパンサーお願いできる?」

その呼びかけに傍で休憩していたキラーパンサーの一匹が熟睡しているもう一匹のキラーパンサーの首を引っ張り、起こす。

不機嫌そうに起きるキラーパンサー、しかし、一度大きな欠伸をすると、いつもの威厳のある目つきになる。

「じゃ、宜しくね」

エイトが2匹のキラーパンサーの頭を撫でる。

キラーパンサー達は一瞬だけ、ゴロロと喉を鳴らす。

そして、エイトとヤンガス、ククールとゼシカの組み合わせでいよいよ橋の向こうに出発する。


人が足を運ばないせいか、木は生い茂っている。

次第に薄暗くなる辺り、それでも遠くまでは見渡せた。

「あっ、あそこにも像があるわよ」

その像の場所へ近づく、橋のところのキラーパンサーの像から位置を考えると

左前の位置である。

「えーっと、四体だっけ?じゃ、後二体像を見つけないと確実な位置が……」

エイトは地図に像の位置をチェックする。

「ん……」

そんな中、ククールは、顎に手を当て何かを考えていた。

「じゃ、分担して像を探そうっか」

ゼシカの提案にククールが異議を唱える。

「いや、その必要はない」

「へっ?」

「ちょっと地図貸してくれ」

「うん」

エイトはククールに地図を渡し、像がチェックされた辺りとにらめっこをする。

そして、十数秒ほど経ち、

「わかった、不思議な木が生える場所はここだな?」

「へっ?分かったの?」

「簡単な計算じゃないか、 いいか、ラパンは、四つの像の中心にその場所はあるといったんだつまり、この像のまっすぐ先にも像はある。 そして、橋の所から一直線の所にも恐らく像はある。 で、その線を延ばすと……」

ククールは、二つの指でそれぞれの像の向く方向へ指を進めた。

2,3cm進んだ所で、指同士がぶつかった。

「ここが中心ってことだ」

「へー、ククールやるじゃない」

「まぁな、とりあえず 行ってみようぜ!」

「さっ、兄貴!レッツゴーでげす!」

そして、その場所には着いた。

そこは、野球で言うとホームベースから一塁、二塁、三塁ぐらいの感覚の広さの場所だった。

真ん中には、4個の岩が乱雑に重なっていた。

「み、見るからに何かありそうな場所でげすね」

「あ、キラーパンサーの像3つ目が見えるわよ」

「じゃぁ、あっちの方向にも今は見えないっすが、4つ目の像が見えるって訳でげすね?」

「えーと、でどうすればよかったんだっけ?」

「確か……早朝にだけ不思議な木が生えて、その場所に行って友にそれを渡せという依頼だったよな?」

「じゃ、とりあえず、帰って明日に備えよっか、キラーパンサー達も疲れたみたいだし、一緒にルーラで戻ろう!」


そして、エイトが『ルーラ』を唱える。ビューンと空に向け飛ぶエイト達御一行

無事、ラパンハウス前に着き、お供のキラーパンサーは、目を丸くしている。

そして、尊敬の証なのか、エイトの足に頬ずりをする。

「今日はありがとね、いい子いい子」

そして、キラーパンサーは、喉を鳴らした。

そんな戯れが終わり、エイト達は、ラパン宅で夕飯をご馳走になり今日の報告をした。


「ふむ、そうか、うむ、確かにその場所じゃな、わしも行きたいんじゃが仕事が溜まっておってな……宜しく頼む……我が友を」

「じゃ、明日の昼には、旅再開じゃの、ラパン殿、お世話になった」

「…………」

「ラパン殿?」

「あ、いや、すまん、考え事をな……日の出からの数時間しかその場所にはないから注意するんじゃぞ」


そして、ラパンハウスの客間、トロデ王は姫と一緒にラパンハウスの敷地内の隅にある小屋に居る。


ここに居るのはいつもの4人だ、

「どうした?エイト、早く寝ないと明日起きれなくなるぞ?」

「いや……ちょっとね……ラパンさん元気無いなって」

「そうでげすよね、せっかく出来なかった事がようやく出来るってことでげすし、どうして日に日に元気が無いんでげすかね?」

皆が考え始めた。 

「それ以前に、今回の依頼(道案内『その場所に行き深き眠りの粉を届ける』)ってなんなんだろう?」

そして、4人の推理が始まった。

数分後

「そういえば、貰ったアイテムって『深き眠りの粉』だっけ?」

「うん、そうだよ」

エイトは、袋からそのアイテムを取り出し、皆にみせる。

「友達が居るっていった場所は、明け方にしか生えない木の傍だったでげすかね?」

「なんだろ……?よくわからない」

「多分、幽霊じゃねぇーのか?」

「「えっ」」

「ゆ、幽霊でげすか!?」

「ちょっと待って、それって『古い友人を私たちが代わりに成仏しろ」ってこと?」

「それで元気が無いんでげす?……」

「う……ん」

まだ状況が掴み切れていない、エイトとヤンガスに、ゼシカは説明を始める。

「ねぇ、エイト、もし、友達と別れる時、見送りたくてもどうしても行けなかったとするわよね?」

「うん?」

「で、友人(今回の場合は私たち)に伝言を頼んで、それで、友人は返事をもらって間接的に見送った友達の最後の言葉を伝えたとするわよね?」

「うん」

「今回の件の話っスよね?」

「それで満足する?」

「……ちょっと難しくて分からないでげす」

「えっとね……結論を言えば……結局は、自分が見送れない訳だし、例え、返事をもらっても、心が満たされるわけじゃないってことだよね?」

「うん。 また例え話になるけど、その友人は私達のこと全然知らないわけじゃない?」

「そうなるでげすね」

「そんな何も知らない赤の他人に、本当に最後に伝えたかったこと言うと思う?」

「そうでげすね……。 あっしが今回の友達だとして、兄貴をラパンのおっさんに置き換えて、伝言役(今のあっしら)をゼシカの姉ちゃんに置き換えたとするでげすよね?……」

ヤンガスは、その考えを口に出すことによって、考えを整理しながら

「あっしがゼシカとは初対面、だけどゼシカが兄貴の友達ってのが分かったとしてもげすが、やっぱり、言いたいことの十分の一も言えないでげすね」

「……このままでいいのかな?ボクらが引き受けて、最後の伝言貰って」

「……分からないわね……」

「でげす……」

「……」

そんな沈黙の中ククールはベッドに入る。

「考える前に寝るぞ、1分でも早く現場に行ってそれから考えればいい、幸い橋があるんだ、キラーパンサーを使えば30分ぐらいで着く、そうだろ?確か、不思議な木があるのは、数時間って言ってたよな、急げばラパンを連れて来たりとか間に合うんじゃないか?」

「流石、ククール!」

「おぉ、あっしちょっと感動したでげすよ、じゃ、早く寝るでげすね!」

「うん、そうしよっか、おやすみー」

「「おやすみ」」


そして、朝は来た。ゼシカとククールが殆ど同時に起きた。

「ゼシカちょっと起こしておいて貰えるか? ちょっと顔洗ってくる」

「ん? 分かった」


そして、ククールは部屋を後にした。


『トントン』

ラパンの部屋にノック音が響いた。

「な、なんじゃ!? カラッチか? まだ、起きるには少し早く無いか?いったい朝からどうしたのじゃ? 暫し待たれ……よしっ、入って良いぞ」

「邪魔するぜ、っつ……玄関も凄かったがやっぱ部屋も凄いな……」

そこには玄関に負けず劣らないキラーパンサー関係の装飾があった。

そして、枕元近くの台には、若いラパンとキラーパンサーの写真立てが飾ってあった。

「ん?……お主は、……ククールじゃったかの? どうしたのじゃ?」

「一つ聞きたいことがあって来た」

「ん?……なんじゃ?」

「オレ達に友達の見送り頼んだこと……後悔してないか?」

「…………」

「分かった。 朝っぱらから邪魔したな。 しっかり依頼してくる、お礼とやら期待しているからな?」

「……してない」

その言葉にククールはもう何も言わなかった。

「……」

『ガチャ』

扉が閉まって数秒後、部屋で小さくラパンが言葉を続けた。

「(してない)…………訳が無いじゃろ……バウムレン……」

ラパンは、枕元近くに飾られた、一匹のキラーパンサーとの若い頃の自分の2ショットの写真立てを手に取った。

そして、写真立てに、雨粒の雫のような物がポタポタと落ちた。

「バウムレン……」

ラパンは、2度目の名前を呼ぶと、声を殺し、泣き始めた。



そして、ククールが部屋に戻ると、ゼシカとヤンガスが出発の準備をしていた。

「おい、エイト、いい加減起きろ」

「……ぅぅ……むにゃむにゃ」

「ふわぁ……夜明け前に起きるって辛いねぇ……」

「ふわぁぁ……あっしら、なんで早起きしてるんでげすっけ?」

その問いかけにゼシカとククールがやれやれとため息をつく

「ラパンの依頼を果たしに行くんだろ? もしラパンを連れて行くとしたら急がないとだしな」

「!……そうでげした、急ぐでげすよ! 兄貴、兄貴、依頼のため早起きでげすよ」

その言葉にようやくエイトの目も覚ます。


外に出るが、辺りはまだ薄暗かった。

しかし、カラッチがキラーパンサーに餌をやっていた。

「んなーっ!! エイトさん達早起きだか」

「お前も早起きじゃないか」

ククールがカラッチと会話をする。ヤンガスとエイトは眠たそうに時折欠伸をした。

「そりゃ、オラは、この子らの餌やりがあるだなや」

「急いでるからキラーパンサーの準備をしてくれないか?」

「んなっ!! 勿論、準備できてるだなや、じゃ、ラパン様のご依頼宜しく頼むだ」

そして、キラーパンサーに乗ること、約二十分ちょっと、目的地の場所が見える場所へついた。

まだ、広場の真ん中に石がまとまってるだけの場所だが少しずつ変化が現れた。

「あれ?……」

エイトは、ほんの一瞬の瞬き(まばたき)をし終わると同時に異変に気づく

「どうしたの?エイト……ってあれ!?」

「上のほう見てみるでげすよ!」

「なるほど、これが不思議な木か」

キラーパンサーで近づきながらの約1分、

はじめは、うっすらとしてよく分からない半透明だった大樹が1分も立たないうちに、はっきりとした木になった。

その木は、まるで百年以上この場所を静かに守っているような立派に、違和感無くそびえ立っていた。

「凄い……あ……あれ…」

「ん?あ! 水色のキラーパンサー?」

「し、新種でげすかね?ラパンのおっさんに見せたら喜ぶんじゃないでげす?」

そこには、木の周りをうろうろする体は、薄い水色で模様は濃い水色のキラーパンサーがいた。

「やっぱりなぁ、幽霊だ、新種じゃねぇーよ、でも、見せたら、きっと、いや、絶対、泣いて喜ぶだろうな」

「あ、あれがラパンさんの言っていた友達?」

「そうだろうな、エイト、ラパンからもらった瓶とキメラの翼貸してくれるか?」

「どうしたのククール?」

「ちょっとラパン連れてくるわ、帰っちまわないように引き止めててくれ。」

そういいながらもエイトは袋を漁り、ラパンから貰った瓶とキメラの翼を渡す。

「ゼシカ降りてもらえるか? ラパンしょって来ないといけねぇーからな」

「分かったわ! じゃ、なるべく早くね」

「男と乗るとか、こんな事態じゃなきゃ、自らするなんてバカげたことしねぇーんだがな」

そのククールらしい発言に、3人が笑う。

そして、ククールとククールの乗ってたキラーパンサー(ゲレゲレ)は、キメラの翼でその場から消えた。

「あ、瓶渡しちゃったけどいいんでげすか? あっしらが見送るんじゃないんでげすか?」

「見送ろうにもククールが持って言っちゃったからね」

「それじゃ、私達は、あの子を引き止めておきましょ」

そして、エイトとヤンガスもキラーパンサーから降り、三人と一匹のキラーパンサーは水色のキラーパンサーの元へ向かった。

やがて、エイト達の気配に気づいたのか、水色のキラーパンサーは、驚かせないようになのかゆっくりと近づいてくる。

「のー……そこの旅の者、ちょっと話を聞いてくれぬか?」

「これが、ラパンのおっさんの古い友……でげすか」

「むっ? そなた今ラパンといったか? それは、恐らくわしの主人だ」

「えっと、話って何かな?(とりあえず引き止めないとね)」

「私達で力になれるなら聞くわよ(そうね、時間を稼ぎましょ)」

「申し遅れた、我が名はバウムレンである。主人であるラパン様の命令により、使いに出たのだが行く道が分からなくなってしまったのだ、通りすがりの旅人に聞くのも可笑しな事だが、お前は知らぬか。わしは、どこへ行くはずだったのか……。」

「そうなんだ……もうちょっとヒント無いのかな? どういう使いだったのかとか…」

「うーむ……暫し待たれ……むむむっ!? なんか変だ……数日ならまだしも……わしは……何年もを同じ所をぐるぐるしている気がする、しかし……それでは……」

バウムレンと名乗るキラーパンサーは口ごもった。

暗い雰囲気になった間もなく、ゼシカが話しかける。

「バウムレンさん、ラパンさんってのはどういう人だったの?」

「むむっ!?我が主人のことか? そうだなぁ……最高の主人であり、良い人間であった……」

そして、バウムレンは、主人ラパンについて語り始めた。

久々の会話のせいだったのか、最初のぎこちないしゃべり方はすぐに消え、ラパンとの日々を思い出す旅に、バウムレンは次第に笑顔になっていった。

そして、その自慢話を三人は、幸せそうなバウムレンの顔を見ながら聞いていた。



<ラパンハウスへ戻ったククール>

ククールはキメラの翼のお陰で僅か数秒でラパンハウスへ着いた。

二人とも屋敷の中らしい、ククールはキラーパンサーを連れ屋敷に入る。

「んなーっ!!ククールさん?皆さんはどうしただか?」

「ん?他の皆はどうした?もう終わったのか?」

「ラパン、話がある」

「んなーっ!ラパン様にその言葉遣い……」

「良いんじゃ、……分かった、カラッチ、少し外に出ておれ」

怒るカラッチをよそに、ラパンは、何を言われるのか察したのか、カラッチを下げようとした。

「んなっ!?……わ、分かりました」

そして、カラッチはゆっくりと外へ出た。

「たとえ話は得意じゃないから、ゼシカから聞いたやつをそのまま言う」

そして、ククールは、昨日の話をそのまま口頭で伝えた。

「見ず知らずのやつがいきなり『ラパンの知り合いです』と言ってきたら、信用は出来ても、見ず知らずのやつだから本当に言いたいことが言える訳がないよな?」

「…………」

「恐らくだ、あいつは、ずっとお前を待っている、だから死を受け入れず彷徨っているんだ」

「……ふむ……言わんとせんことは何となく分からんでもないが……」

ラパンの表情は、部が悪いのか、僅かに曇った。

「全く知らない誰かが、そいつから伝言を貰って来たと言って、お前は信じれるか?」

「……」

「オレは出来ない、直接本人から言われたんじゃないと信用できない」

ラパンは、静かに言葉を受け続けた。

「…………もし、『仕事があるから無理だ』と断ったら?」

「……力づくでも連れて行ってやる、なんなら、これを今すぐ床にぶちまける」

そして、ククールは、エイトから受け取った『深き眠りの粉』を握って見せた

「…………わしは……行っても」

「仕事よりも大事なものがあるだろ? 大事な友を見送れないような馬鹿に会長が務まる訳ないだろ」

「…………」

「百歩譲ってオレがそれの会員だったら、少し遅れても良いから、会長の一番大事な友の話の便りを読んでみたいと思うぜ?」

じわりじわりと、ラパンの目に滴が溜まりはじめた。

「……わしは、行ってもいいんじゃろうか? 6年も待たせて……」

やがてラパンの瞳から一筋の滴が毀れた。

「バーカ、涙見せる相手が違うだろ、それに、大事なのは結果なんだよ、最後ぐらい見取ってやれ、最高の主人ならそれが当然だろう」

「わしが間違っておった……」

そして、ラパンは、ククールに貸していたキラーパンサーに近づき、しゃがみ、頭を撫でる。

瞳から毀れる雫を、キラーパンサーは、ちょっとざらざらしている舌だが、顔を傷つけないようにゆっくりと拭ってくれた。

「ク、ククールよ……3分だけ待ってくれぬか……」

「……今いっても3分後でも大差ないと思うけどな……心の準備できたら行くぞ」

ラパンを慰めるキラーパンサーを残し、ククールは外に出た。

そして、屋敷の外に出るやいなや、カラッチと目が合う。

「んなーっ!……終わっただか?ラパンさ……」

ドアに触れるカラッチをククールはそっと制した。

「今は一人にしてやってくれ、見送りに来る覚悟つけてんだ」

「……はぁ……御見それしましただ。 ただものじゃないだね」

カラッチは、一度深い礼をすると、わざとらしく背を向け庭の手入れをし始めた。

そして小さく独り言を呟いた。

「類は友を呼ぶってやつだな、きっと、ヤンガスさん、ゼシカさんも凄い人なんだろうな」


そして、数分後、ラパンが出てきた、涙の後がうっすら残っていたが、先ほどまでの顔とは違っていた。

「カラッチ……友に会ってくる、数時間ばかり開けるぞ」

「んなっ!! ラパン様、道中お気をつけて!」

「ククール宜しく頼む」

「待ちくたびれたぜ、そいつとは、あいつらが話し相手しててくれてるからな」

そして、ラパンとククールは、キラーパンサーに乗り不思議な木へと急いだ。

「何故わしが男と……」

「バーカ、こっちの台詞だ、 今、お前を乗せて無ければ、ゼシカの胸背中で感じれた幸せな思い出しかなかったんだからな」

「ふむ……それはすまんかった、しかし、風とはこんなに気持ちがいいもんじゃったか……久しく忘れて折ったわ」

「安心しろ、今度乗るときはもっと気持ちのいいモノになってるだろうからな、しっかりつかまっておけよ」

「だ、誰に口聞いておる、キラーパンサー友の会の会長、ラパンじゃぞ!?」

「へいへい、それは失礼しました」

「……ありがとう……旅の者」



<不思議な木前>

「して、今のラパン様は何を?」

「えーっと、詳しくは知らないけど、毎日、キラーパンサー友の会の書類で忙しいみたい」

「そうか……適うなら……もう一度会いたい……ラパン様に」

「きっと会えるでげすよ!」

「ええ、今連れてきてくれてるから」

「むむっ!? それは誠か、楽しみだ……ぁ……ぃゃ……仕事に差し支えないんだろうか?」


そして、その数秒後、橋の方向から、ククールとラパンを乗せたキラーパンサーが現れる。

「おーい、連れて来たぞ」

「あっ」

「来たみたいでげすね!」

「バウムレン、すまん! またせたのぅ!!」

「ら、……ラパン様……」

そして、2匹のキラーパンサーとバウムレン、そして、ラパンとエイト達が不思議な木の前に集まった。

「バウムレン……」

「ラパン様」

バウムレンは、何年ぶりかの主人との再会を果たした。そして、何年ぶりかの涙を流した。

ラパンがバウムレンに触れようとした時だった。

もはや、魂だけの存在のバウムレン結局は、空を掴むだけであった。

「そうか……もはや抱きしめてやることも出来ぬのか……」

「「………」」

その時だった。 ラパンを連れて来たキラーパンサー(ゲレゲレ)がバウムレンの傍に寄った。

「グルル……」

ゲレゲレは、心配そうに喉を鳴らした。

「なんと……誠か……むむ……迷ってる暇は無い……ありがたく少しの間体を借りるぞ」

バウムレンの魂は、ゆっくりとそのキラーパンサーに重なった。そして、まるで体に吸い込まれるかのように、一つになった。

「ぉ……6年ぶりの実体……良いもんじゃな」

「バウムレン?」

「ちょっとだけ、体を貸してくれるといっての、その好意に甘えさせてもらった」

「嗚呼、バウムレン、バウムレン……」

ラパンは泣きながらバウムレンの魂の宿ったゲレゲレを抱いた。

「おぉ……久しいな、ラパン様は……温かい」

「バウムレン……わしは、わしは……最低じゃった……見ず知らずの旅人に、お前を見送れと頼み……先ほど、このククールがわしを呼びに来なければここには……」

「……ラパン様、どうか辛い顔をしないでくれぬか、今来てくれているじゃないか、会いたかった……ラパン様……」

「わ、わしもじゃ……バウムレン……」

「ラパンさん、まだこの木が消えるまで時間ありますよね?」

「ん……そうじゃな……後、1時間~2時間って所じゃろうな……」

「最後のひと時をかみ締めるぐらい味わって一生消えない思い出にしろ」

そして、ククールは、『深き眠りの粉』をバウムレンに分からないように、ラパンのポケットへ入れた。

「……何もかもありがとう、わしは、一生心残りをしてお……」

「ラパンのおっさん、それはお別れが住んでからゆっくり聞くでがすよ」

「それじゃ、邪魔になるからちょっと遠くに行こうか」

そして、エイト達ともう1匹のキラーパンサーは、ラパンとバウムレンの魂を宿したゲレゲレを残し、不思議な木を後にした。


そして、二人っきりになったラパンとバウムレン

「……」

「……」

暫くの間何も言わず、二人は抱き合っていた。

「わしらは、幸せじゃったな……」

そう言ったのはバウムレンであった。

「……」

「ラパン様? 暫く会われないうちに耳が遠くなられましたかな?」

「……嘘をつくな、わしを誰だと思っておる、主(ぬし)の主人にして、キラーパンサー会の会長、ラパンじゃ」

今度は、バウムレンが口を閉ざした。

「……」

「……大丈夫じゃ……思いっきり泣いて良いぞ……もし、旅人達に聞かれていようとも……誰一人……笑わんじゃろうて」

「……このバウムレンは、ラパン様に使えてし、幸せで……」

「もういいて、強がらんで、さぁ……6年間の不満わしにぶつけるんじゃ」

「……ふ、不満なんてある訳……」

バウムレンが強いて言う、だが、ラパンは怯まない。

「も、……もう、いいじゃろ?……泣いてくれ……わしも泣きそうじゃから……泣いてくれ……バウムレンが先に泣き、わしが謝るように泣けば、通りが行くじゃろ?……」

「ほ、本当に、不満なんか……これっぽっちも無いんじゃ。 じゃが……やっと会えたんじゃから………それで、泣いてよいか?……」

「は、はよぉっ、泣け!……わ、わしの、命令じゃぞ……」

バウムレンが泣くよりも、ラパンは先に泣き出した。

「ラパン様……ずっとずっと……会いたかった」

「わ、わしもじゃ……仕事が忙しいからという理由でお前から逃げとった。」

ラパンは知っていた。バウムレンが辛くない訳が無いことを、バウムレンが亡くなり、魂だけになり、6年経ったのだ、その6年もの間、ただ一人、ラパンの使いを果たそうと彷徨い続けていた。

会おうと思っても会えない、ゴールの無い迷路の中延々と彷徨い、

只、只、『明日は会えるだろう』『もうすぐ会えるだろう』それを胸に歩き続けたバウムレン。

ラパンは泣いた。辛い6年間を送ったバウムレンを思い。

バウムレンは泣いた。本当に素晴らしい主人で、今こうして自分のために泣いてくれていることに。

「ラパン様……わっしは、本当に辛く無かったんじゃ」

「も、……いつまで嘘をつくのじゃ! 本当に……頑固な……」

そう言い掛けるラパンにバウムレンは、一つの言葉を送った。

「だって……わしは、いつでも……『いつの日も、心に……』」

その言葉を聞き、ラパンはまた泣いた。


それは十年ほど前のことだった。

「カラッチ……ちょっと庭の掃除をしておれ……気が散る」

「んなーっ!? ぅ……オラ、邪魔しちゃったんだか?……分かりましただ」

「……妙な口癖のやつを雇ったなぁ……」

そう言ったのは、すぐ隣に居たバウムレンだった。

当時、キラーパンサー友の会は、出来立てほやほやで、会員も少なかった。

そんな中、親しみやすいキャッチフレーズがあればということになった。

ラパンとバウムレンは悩んでいた。何かを思いついたようにラパンが一声をあげる。

「『今日も明日もキラーパンサーのため!』はどうじゃ?」

「……まんまじゃのぉ……短くして『パンサー』はいかがかな?ラパン様」

「ほほぉ……キラーっ外国語では、物騒な意味だからのぉ、そうしよう」

そして、話し合うこと数十分。

「いつの日も、心にパンサー! はどうじゃ?」

「語呂のいい言葉のぉ、して、どういう意味なのじゃ?」

「常にパンサーを思いやる気持ちを大事にって意味じゃ」

「ほほぉ……では、わしは、『いつの日も、心にラパン様』じゃな」

「ふむぅ、そう言われるとこそばゆいのぉ」

そういってラパンは癖なのか、帽子のちょっと下の後頭部を掻く。

「一応聞くがどういう意味かの?」

「何があろうとわしは、ラパン様に使え、それ以外でも、それ以上でも無いという意味です」

「……いつの間に口が達者になったのじゃ?」

「そりゃ、ラパン様と色々会話を交えるためにも、一つでも多くの人間の言葉を理解しないといけないなと」

「ふむ、ありがとうのぉ、お前は最高の友じゃ」

「ラパン様も、最高の主人です」

「さて、早速カラッチに、キャッチフレーズの意見を貰うとするか」



「……というと……お前はずっとわしのこと思っていたのか?」

「はい、ラパン様のこと考えながら、自分のペースで歩いておりました。」

「……しかし、6年じゃぞ? 6年は長すぎるじゃろ?」

「……6年というと、ラパン様と過ごした時間の3分の1じゃの」

「……」

「だ、大丈夫じゃわい!この通り、退屈せず今日まで歩いてきた。 わしが言うんじゃから、そうなんじゃ」

ラパンはその言葉にも聞き覚えがあった。


『……ラパン様……わしの不注意出そのような怪我に……本当に申し訳ない……』

『なーに、気にするな、わしにはこの傷、痛くないぞ』

『しかし、そのような大怪我、痛くない訳が!』

『ええい、煩いのぉ……大丈夫じゃ! わしが言うんじゃから、そうなんじゃ』


「ラパン様……」

「ん?なんじゃ?」

「ラパン様があの時そういった理由が今分かりました」そう言おうと思ったが

それは、6年間辛かった、辛かったけど、心配させたくないからそう言ったと言ってしまうことと同じような気がして、バウムレンは、出かけた言葉を飲み込んだ。

「……んーとじゃなぁ……そうじゃ、カラッチは元気か?」

「そうじゃなぁ、 相変わらず」

ラパンは一呼吸おいた、そして、カラッチの顔を少しだけ真似ようとしたまま

「『んなーっ!!』が口癖じゃが、元気にやっておるよ、今じゃ大事な右腕じゃ」

「ははっ、流石、ラパン様、お上手です、うまくやっておられるようでわし、安心しました」

バウムレンは、カラッチのモノマネに笑うが、それと同時に、そこにもう戻れない現実を思い口ごもった。ただ、ラパン様にだけは心配をかけていけないと作り笑顔を装った。

「うむ? あやつらから、わしのこと軽く聞いていたんじゃなかったのか?」

「色々聞けたが、やはりラパン様から、その言葉を承りたかった、わしは幸せじゃ」

それに気づかずか、ラパンは話を続ける。

バウムレンは思う、自分の幸せなんかどうでもいい、主人が幸せならそれ以上は望まないと。

「そうか……」

そういわれ、ラパンの頭にあの時言われたククールの言葉が蘇った。

『まったく知らない誰かに共通の知人の言伝貰ったそいつから伝言もらったとしても信用できるか?』

『オレは出来ない、直接本人から言われたんじゃないと信用できない』

そう、つまりそういうことだ、例えば、伝言で何か信じられないことを聞いたとする。

そして、その伝言を信じる自分も居るが、嘘だろう?と否定する自分も居る。

そんなことになるのなら、自分で聞きに行けばいいのだ。

それしか方法が無い。

もし、自分がバウムレンの立場で、見ず知らずの人に頼まれたらどう思うだろう。

最後の最後まで会えず、最後会えたと思ったら見ず知らずの人が、信頼の証を持ってきて

『そうか……』としかたなく現実を受け入れるのは少し酷なことだと。

「ラパン様……何か悩んでおられるのか?」

「いや、……大丈夫じゃ、只……こうしてお前と喋るのが最後だと思うとの……」

「……わしは、無事生きてきたから、余計な心配はしなくてよいぞ?」

「ぁ……」

ラパンはようやく思い出した。行きたくても行けなかった理由

それは、バウムレンを見送るのが嫌だったこと

でも、それがバウムレンを彷徨わせた原因にもなってしまう。

時間など作ろうと思えば作れたではないか、時間が無い、忙しいと言い訳をつくり、バウムレンの死から逃げてきた。

そう……結局は……ラパン自身だった。


だからゆっくりとラパンは口を開けた。

「すまん……バウムレン……わしが……お前を彷徨わせていた……」

「……そう言われてもよく分からぬが……」

「いくら忙しいとはいえ、仕事量を増やし、睡眠時間を減らせば、ここにはこれた、ここに来る橋の一つが壊れておったんじゃが、わしになら金の力で治せた、そして、直った結果がこれじゃ、(ラパンハウスから)たった30分もかからぬ所へこれなかった。 いいや、わしの意思じゃ橋は直せなかった、そして、バウムレン……お前の死を受け入れられなかったのじゃ……」

「……」

バウムレンは何も言わず静かに聴いていた。

「だって、そうじゃろ?お前がどこかで生きておるって、お前とお別れしなければ、そう考えられる、死んだのは間違いでどこかで幸せに生きていると、ここ命を司るの木で彷徨っているのも嘘なんだと」

「……」

「結局は……わしがお前の魂を彷徨わせていたのだ、許してくれ……辛かっただろう?この6年間……」

「……それでも、わしは胸を張ってはっきり言うぞ? 最後にラパン様にこうして会えた。 ラパン様がわしのために泣いてくれた、ラパン様は、ずっとずっと思っていてくれた、こんなに幸せなことは他には無かろう、わしは世界一幸福な人生を送ったキラーパンサー・バウムレンだと」

「……」

「さて……そろそろ旅立とうとするかの、なんでじゃろ? 泣く所なぞ、見せたくなかったし、見たいと思ったこと無かったのに……いざ、見せられ、見せて……となった訳じゃが……良い冥土の土産になりそうじゃ」

「む……わ、わしが先に泣いたのか?」

「そ……あ、失礼しました、わしが先に泣いたから、見せて、見せられ でした、でも……泣くって凄いですね、胸のモヤモヤ?的なものがいっきに外に出たって感じで」

「……うむ……わしも……そんな感じじゃ……わしももっと語り合いたいが、仕事もあるし……時間じゃの……」

「……最後に、ラパン様を導いてくれた皆に礼が言いたいが、良いかな?」

「そうじゃの……本来は彼らが見届け……ぁ、いや、なんにせよ彼らのお陰であることは間違いないな。 よしっ」

「おーい、おられるか旅人。 時間になるが、最後にバウムレンが礼を言いたいそうじゃ」

そして、少し離れた所にいたエイト達御一行は、ゆっくりと近づく。

「よぉ、言いたいこと言えたか?」

そういうククールにラパンは

「うむ、本当にありがとう……」

そして、ラパンは、ポケットから『深き眠りの粉』を取り出した。

そして、それを左手に持つ

「旅人達よ、我が主人を導いてくれたことに感謝する。 お蔭でこのバウムレン最初から最後まで幸福な人生であった」

「……やっぱりお別れでげすか?」

「しょうがないでしょ? 天国いってまた次の命もらって地上に生まれるかもしれないんだから」

そして、バウムレンの魂は、ゆっくりと体を借りていたキラーパンサーから離れた。

「体をありがとう……一番幸せな一時であった」

「グルルッ」

体を貸したキラーパンサーは満面の笑みを浮かべた。

「そうか、わしの名はそんなに有名なのか、わしに体を貸したことを自慢するが良い」

そんな微笑ましいやりとりをみて皆が笑顔になる。

「……久々のバウムレンらしさじゃなぁ……ありがとうな……バウムレン」

バウムレンの魂に触れられる訳が無いが、まるで触れられるかのように、ラパンは最後に優しく頭を撫でた。

そして、撫でられるバウムレンも目を閉じ、幸せそうにその行為を受けた。

撫で終わると、二人は最後に真剣に見つめあった。

「ではのぉ……我が友よ」

「……ラパン様、あ、ありがとうござい……ござい……」

バウムレンは、『ありがとうございました』そう言おうとしたのだろう、しかし、その言葉を発することに、口元が何故かそれを拒んだ。

「ございます、で良いんじゃよ? これからもずっと友達なんじゃから」

「……」

バウムレンは、口ごもった。涙は流れていないが、少し寂しそうに、愛おしそうにラパンを見た。

「元気……での……」

深き眠りの粉を右手に持ち変え、左手で封を開けた。

反動でほんの微量の粉が舞う

それだけでも幻想的な光景だった。

そこには、水色と白の半透明のもやが現れた。

そして、中身をゆっくりと撒く、

「「うわぁ……」」

「こりゃ凄い」

「し、神秘的でげすね」

目を疑うような光景だった。足元の周りに水色と白のオーロラが漂う

そして、天への階段のようなモノも現れた。

「では、わしは行く……」

「……嗚呼、わしもキラーパンサー友の会、会長としてこれからも頑張るぞ」

「そ、そうじゃ……風邪とかには気をつけて、わしの分まで長生きしてくれ」

「わ、分かっておる……」

「な、なんでじゃろ……時間はいっぱいあったというのに……いっぱい言葉が思い浮かんで……」

「バウムレン……わしも一緒じゃ、でも……わしらは、目を見たら互いのこと分かるじゃろ?」

「……そうだったな……久しく忘れておった」

「うむ……」

それは、5秒ほどの時間だった、呼吸さえも止めているのではないかと思うほど、ただ、じっと、互いは、互いの目を見るために、集中している姿。

「では、行ってくる、今度は思いっきり遊ぼうの、嗚呼……今思えば背中に乗せてちょっと走りたかった」

名残惜しそうにバウムレンはラパンに背を向けた。

ラパンはふと何か気づいた。

「バウムレン……わしも……世界一幸せな人生じゃった、お前が……わしの全てじゃ」

その言葉に、バウムレンは、ビクッと一瞬だけ止まったが、振り向かなかった。

そして、気のせいだったかもしれないが、バウムレンの顔の下辺りに薄い水色の雫のようなものが毀れていた気がした。

バウムレンは、一息置いて最後の言葉を言った。

「……人生じゃった……じゃなくて人生じゃ、でしょ?わしの分も幸せになってくださいね」

そして、天の階段を上るバウムレンに、ラパンは大きく手を上げた。

「いつの日も、心に、パンサー!」

心なしか、最後にバウムレンは笑ったような気がした。


そして、徐々に消えていく天の階段とそれを上るバウムレン。

完全に消える間もなく、ラパンがゆっくりとエイト達を見た。

「ありがとう……さっそくだよりに今日のことを書かないとじゃな……そじゃ、お礼は……」


そして、エイト達は、ラパンからバウムレンの鈴を貰うことになり、ラパンハウスで最後のご馳走を食べ、ラパンハウスを後にし、4人とトロデと姫(馬)は旅だつ。

「それにしても、ククール頑張ってたわね、珍しい」

「ふっ、恩は作っておいて損はないからな、ドルマゲス倒したら会員で可愛子ちゃん紹介してらう予定だ」

「……ははっ、ククールらしいね」

「そうね、それはともかく、倒したらまた、皆で食べに行きたいわね、ラパンさんの話面白かったし」

「いやいや、ご馳走も最高でがすよね!」

「じゃ、改めて打倒!ドルマゲス!」

「「おぅ!」」

「でげす!」



















ラパン会長の!いつの日も、心にパンサーだより 第○○○回


今回は少しばかり便りが遅れたことを詫びる。

しかし、皆に報告したい出来事がある。

何人かは知っておるかもしれんが、この会を作るキッカケとなったバウムレンという

わしが最初に心を許したキラーパンサー、今回はその話をしようと思う。


なんとも不思議なことだった、皆も知る我が相棒、右腕的存在のカラッチが突然、旅人に一目で『ゲレゲレ』が懐いたと、わしは少し運命を感じた。 そして

結果を言えば、その旅人のお陰で6年間のもやもやが晴れたという訳じゃ。

わしは、カラッチに許可を出し、旅人を招きいれた。

オレンジのバンダナをしたエイトという人間の瞳を見たとき

吸い込まれるような気持ちだった。とても澄んだ綺麗な瞳をして追ったのじゃ

……(中省略)……

そんなわけで、エイト、ククール、ゼシカ、ヤンガスという旅人を見かけた際は

わしの一番の恩人であるからして、何か力になってやっておくれ、聞くところによると、大魔王を倒そうとしておるらしい、馬鹿らしいと思う人もやつもおるかもしれんが、わしは、あやつ達ならきっとやれると思っておるぞ


では、今回はちょっと長くなったがいつもどおり


「いつの日も、心にパンサー!」

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