第34話 皆とGW……?

 ゴールデンウィーク最終日の昼。今日は俺の一人暮らししているところに集まって、色々と遊ぶ事が予定されている。


 俺が準備や最後の掃除をしていると、ピンポーンとインターフォンが鳴った。モニターで確認すると、青春同好会の女性陣が来ていることが確認できた。



「皆でまとまって来たのか。ってか、新はいないのか?」


「「「「……」」」」



 俺が部屋に招き入れて問いかけると、あら不思議! 誰も喋らない!

 まぁ俺のところが集合場所になると、必然的に新が一人になるわけで……。新以外は皆女性だし、忘れられてもしょうがないのかもしれない。新、強く生きろ。その気持ち、俺も分かるぞ。



 新も俺と同じ経験をしたか……と面白がっていると、ブルブルとスマホが振動する。何の通知が来たのか確認するためにスマホを見ると、新からのメッセージが来ていた。



『ごめん今日無理。お前らだけで楽しんで』



 ここで普通なら、何か体調を崩したのか? とか、急な予定が入ったのか? というメッセージを送るだろう。

 新が体調を崩していればお見舞いに行くし、新に急な予定が入ったなら俺たちで今日は楽しむだけのこと。



――でも俺にだけ感じる違和感。



 関係が長いからこそ分かる親友の何かとしている様子。

 体調や急な予定が入ったぐらいなら、新は俺にちゃんと報告する。俺はこの新のメッセージから、何か異変が起きている事を感じ取った。



「あっ楽、新くんからのメッセージ? 何て来てる?」


「那奈ごめん。俺、ちょっと行ってくる」


「ち、ちょっと!」



 何もなければそれでいい。

 でも俺には、親友に何か起きているとしか思えなかった。だからこそ、俺は動く。



 ◇◇◇



 俺は急いで自分の家を出て、最寄りの駅へと向かう。

 新の家には何回か行った事があり、豪邸と言えるくらいの立派な家に住んでいる。


 とはいっても、焦ってすぐに飛び出してきたのはまずかったな……。スマホと財布しか持っていないし、那奈たちに何の状況説明もしていない。軽くメッセージを送っておくか。

 

 そう思ってメッセージを打ちながら電車を待っていると、駅に向けて走ってくる唯が見えた。



「はぁはぁはぁ。らっくんってば、ほとんど何も言わずに出ていっちゃうだもん」


「悪い。どうにかしなきゃという思いだけが強すぎて、真っ先に行動してた」


「那奈ちゃんから少し聞いたのと、らっくんの様子を見て思ったんだけど……」


「ああ。新に何かあったのかもしれないんだ。何もなければそれでいいし、何かあるなら早く動いた方がいい」



 唯も俺が焦っている理由の答えには辿り着いたようだ。ただ理由までは分からず、黙って俺の言葉を待っている。



「新ってさ。人と話している時はあんな感じだけど、昔はもっと酷かったんだぜ?」


「え?」


 

 唯が聞き返したのと同じタイミングぐらいで、広島行の電車が到着する。新が住んでいたところの最寄りの駅は、俺や大学の最寄りの路線ではないので乗換えをする必要があるので、少し時間がかかる。



「続きは移動しながら話すよ。唯も一緒に来てくれるんだろ?」


「もちろん。皆で行っても良かったんだけど、人が少ない方がいいかなって思って」


「助かる。あとで那奈たちにもちゃんと謝らないとな」



 ◇◇◇



 那奈たちに今の事情を改めて説明しながら謝罪のメッセージを送り、俺は唯に新の事について話し始める。

 那奈たちは俺の気持ちを理解してくれて、一度帰ってもらう事になった。俺の部屋で待っていてもいいという提案もしたが、申し訳ないと断られたたのでこういった流れになったというわけだ。後日、ちゃんと謝らないといけない。菓子折りも準備しないといけないかも。



「……で、新の事だ。新は俺が大学で出来た一番の親友……それは唯も分かってるよな?」


「うん。二人はいつも一緒にいるし、めちゃくちゃ仲良さそうだもん」


「新と出会ったのは、一年後期のある講義でだった。たまたま隣の席になった新が、ちょっとここの答えを教えてくれみたいな軽いノリで、今と同じように話しかけてきたんだ」



 新はコミュニケーション力が高く、誰とでも気さくに話せるタイプ。人脈がとても広くて、人付き合いを上手く活用しながら自分は効率よく生きる……それが新なんだ。

 だから、最初はめちゃくちゃ腹が立った。俺はめちゃくちゃ自己中心的な奴が嫌いだし、こんなクズ大学生と何か関わりたくないと思っていた。


 ただここで拒絶すれば、また面倒な事になる。

 俺は優しく答えを教えて、さらには解説まで加えてやった。そんな俺も使えると思ったのか、新は連絡先を交換しようと言い出し、同じ学科という事で距離も縮まっていった。



「最初はめちゃくちゃ嫌いだったんだけど、とあるきっかけがあってな。これは昔の話なんだけど……」



 新とまぁまぁ話すようになった時、新が告白されたという話を聞いた。新の顔は整っている方だと思うし、あのコミュニケーション力を持っていれば、告白される事も全然おかしくないと思った。


 俺は新と会った時、少し弄るような感じでその告白してきた子と付き合うのかと質問した。新はそんな俺を少し冷めた目線でこう言ったんだ。



『あほか。付き合うわけないだろ』



 こいつは本当に嫌いだ、と俺がまた思った瞬間だった。那奈の件や自分が奥手という事もあって、俺はその告白してきた子に肩入れしていたのかもしれない。



『どうせ俺とは付き合えないし。メリットもないし』



 無性に腹が立った。こういった偉そうにしている奴が、俺は本当に嫌いだったから。



『あ~その方がいいわ。こんな自分の事だけ考えているクズ野郎と付き合わない方が、よっぽどその子のためだ』



 俺が我慢できずに新に言うと、新は物凄く怒った。そりゃぁ、今まで見たことないような凄く怖いぐらいには怒っていた。

 ここから新とさらに険悪になるのだが……この喧嘩が今となっては、大きなポイントだったのかもしれない。



「ここまでが新との出会いというか、まぁ第一章みたいなもんだな」


「らっくんと新くんって、最初から仲良くなかったんだ」


「新も今より性格が悪かったんだよな。でも、ここから俺と新の関係は大きく変わる」



 この喧嘩をきっかけに、俺と新はまたぶつかる事になる。




 ただその喧嘩をきっかけに、関係は大きく変化したんだ――

 





 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る