第27話 唯とのGW②

 うどんを食べ終えた俺らは、少し商店街をぶらついた後、俺たちが昔通っていた小学校に向かっていた。


 ちなみに商店街にあるアニメショップに行き、生粋のオタクである俺と唯は、二時間弱ぐらいのオタトークを繰り広げてしまったのだが……えっ、その話はお蔵入り? 尺がないって?

 

 そこのあなた、アニメショップはどこにでもあると思いましたね? 

 ちっちっち。各店舗にそれぞれの個性があり、品揃えも違うからこそ、色々なアニメショップにオタクは行くのだ! オタク最高! オタク万歳!

 

 えっ、オタクの話はどうでもいいって? 全く、これだから最近の子は。もうわがままねぇ。

 とまぁ……そんなオタク思考を繰り広げているうちに、もうすぐ目的地に着きそうだ。



 俺と唯が出会った思い出の場所に――



◇◇◇



 平戸ひらど小学校。俺と唯が出会い、思い出の場所でもある学校だ。

 俺と唯は、事務室で話をして受付を済ませ、来客用の名札を受け取る。



「らっくん、昔にこういうの憧れなかった?」


「あ~なんか分かる。休日の学校、少し気になってた。全然違う雰囲気だし」



 今思うと、小学生の時って純粋な子供だったよな。変な事にハマったり、何かに憧れたり……あの頃の俺は、一日をどれだけ楽しむかって事しか考えてなかったと思う。



「らっくんと違って、私はそんなに通っていないからあれだけど……こんな感じだっけ?」


「俺も小学生の時の記憶だから曖昧だな……でも、少しずつ思い出してきた」



 唯と話しながら、校内を見て回る。記憶が曖昧な所もあるが、靴箱や廊下、教室などの雰囲気は全然変わっていなくて、徐々に俺も昔の記憶がよみがえってくる。

 


「おおっ! こっちには校訓、こっちは校歌の掲示じゃん。俺も六年間歌っただけあって、校歌は少し覚えてるぞ」


「校歌かぁ。私は転校が多かったから、校歌は全然覚えられなかったなぁ。やけに自然を語るよね、校歌って」


「転校多いと、何が何だか分からなくなりそうだな……」


「本当だよ。山と川は絶対出てくるし、何か信念とか語り出すし」



 やっぱ、山と川って頻出ワードなの? まぁ校歌は代々歌われてきたものだから、風景も大きく変わっているんだろうなぁ。



「らっくん、こっちには給食の献立表があるよ!」


「給食も、今となってはめちゃくちゃ懐かしいな……」


「らっくんは、何か好きなメニューとかあった?」


「カレーとか揚げパンとか、ベタなやつは好きだぞ。特にフルーツポンチ、あれは一番テンションが上がる」



 カレーとか揚げパンって、本当に何であんな美味しいんだろうね。俺の嫌いなほうれん草と小松菜、チーズさんたちも、あの美味しさを見習ってほしいものである。


 給食って苦手な食べ物が多いほど、地獄になってしまうシステムだからな。ある女子なんか、嫌いなものが多すぎて、絶対お腹空くだろっていうぐらいの量になってたし。

 ちなみにフルーツポンチは、いつもの汁物の枠がフルーツポンチに丸々置き換わるので、めちゃくちゃ甘党の俺は、物凄くテンションが上がるってわけ。レギュラーゲストが、スペシャル番組でハリウッドスターに変わった感じ。



「私もフルーツポンチは好きだったなぁ。野菜は嫌いだったけど、徐々に食べれるようになってた」


「給食ってその効果があるからすごいよな。俺も牛乳を六年間飲んだら、流石に飲めるようになってたわ」



 流石に毎回登場する、不動のレギュラーの牛乳さんは飲めるようになりました。だんだんと牛乳の味に慣れていき、矯正されていったんだよね。何このシステム? いつか凄いボールでも投げれるようになるぐらいの、凄い矯正プログラムなのでは?



「そういや、私たちの教室ってどこだったっけ?」


「いい質問ですねぇ。俺も流石にハッキリは覚えてないけど、二階だった気はしてるんだよなぁ」


「何か有名なコメンテーターさんいた?」



 俺たちが授業を受けていた教室はハッキリと分からないものの、教室内の雰囲気は変わっていないので、めちゃくちゃ懐かしい気分にはなるけどな。

 作品が色々と掲示されていたり、後ろにロッカーがあったり、読書用の本棚があったり……ここで過ごした思い出が、次々と頭に浮かんでくる。



「そういや、朝の読書の時間あったね。あの頃は、私も読書アンチだったなぁ」


「ラノベや漫画とはいえ、ここまで俺たちが本にハマるとはね。昔の俺もアニメは好きだったけど、成長してここまでガチガチなオタクになるとは」


「あはは。それに、大学に行ってまたらっくんと再会するなんて、本当に夢みたいな話だ」



 あの頃の俺は、勝手に立派な大人になると思ってた。

 進学して、ある程度のお金を稼いで、結婚して……幸せな人生を過ごすものだと思っていた。成長した今だからこそ、何も考えていなかった昔に戻ってみたい。


 そんなセンチメンタルな気分になっていると、唯にそっと手を握られる。

 俺は少し驚きながら、唯を見る。唯は優しい目をして、真っ直ぐ俺を見つめていた。



「大丈夫。らっくんは、絶対大丈夫。私たちがついているから」


「……唯、ありがとうな」


「えへへ。今だけは、こうして手を握っててあげるね。今は私の番っ!」


「何だよそれ」



 ああ本当に、唯にはいつも助けられてばかりだ――


 

 今も昔も、唯はいつも優しく手を差し伸べてくれる。そんな唯がいたからこそ、今の俺がいる。本当に、唯は大事で頼りになる幼馴染だ。



「これはね、私を救ってくれたお礼」


「お礼?」


「らっくんはさ、渋谷先輩から私を救ってくれたでしょ? だから私も、らっくんの役に立ちたい。そしていつか……」



 唯はそう言いながら最後の言葉を飲み込み、俺の手を強く握る。



「唯?」


「ここから先の話は、またいつかの時かな。今はフェアじゃないし。困らせちゃうだけだもん。とにかく楽には感謝してるから、そのお礼をしたいってだけ!」


「もう充分、唯からは色々なものを貰ってるよ」


「だったら。たくさんのお釣りも全部、持っていってね?」


「ほんとに、唯には敵わないな」



 



 こうしてゴールデンウィーク初日は、唯と楽しい時間を過ごす事ができた。

 幼馴染の唯と再会できた俺は、本当に恵まれている。



 

 改めて、唯はとても大事な存在と思う一日だった――



 

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