第26話 唯とのGW①

 新学期がスタートした四月も、気がついてみれば意外と早いものである。月の終わりになると、いつも早かったなぁって思っちゃうよね。


 そして、一年の中でもかなり盛り上がるであろう、ゴールデンウィークが始まる。どれぐらいの連休になるかは様々だが、今年の俺たちは九連休となっていて、かなり恵まれていると言えるだろう。


 今年は去年と大きく違い、色々な予定がある。この一年……って言うよりも、この一ヶ月で俺の学生生活は大きく変化した。つくづく、俺は運が良い奴だ。


 今年のゴールデンウィークは、いったいどうなるのだろう――



◇◇◇



 ゴールデンウィーク初日。俺と唯は朝早くから電車を乗り継ぎ、高松駅に着いていた。俺の地元でもあり、唯と最初に出会った場所でもある香川県だ。

 大学生になって、再会した唯と来てみると……何か時代の流れを感じるよなぁ。



「朝早く出た事もあって、良い感じの時間に着いたね。それにしても、だいぶ高松の方も変わった? 私も昔の記憶だから、曖昧だけど……」


「そうだな。唯がいたのがだいたい十年前と考えると、結構再開発されてた気がする」



 十年って、考えてみるとめちゃくちゃ長い。思い出とかは鮮明で最近のように思えるけど、日にちや年数で考えてみると、めちゃくちゃ昔のように思えてくる。十年もあれば、風景もガラリと変わってしまうはずだ。



「らっくん、まずはを食べに行かない?」


「もちろんだ。を食べないなんて、ありえない」



 少し昼食にするには時間が早いが、お腹も少し空いたのでタイミングとしては良いだろう。

 香川といえば、まず最初に食べるものは決まっている。俺と唯も、同じ事を考えているに違いない。



「「まずはうどん!!」」



◇◇◇



 高松駅からまた電車で少し移動し、俺と唯は市内の商店街の方に来ていた。

 俺としてはよく通った場所で、親の買い物に付き合ったこともあったし、アニメショップや本屋にも何回も通った。発売日当日に欲しかったから、放課後によくここに来てたな……


 あと、この商店街には色々とグルメも充実している。名店、と言われる店もあるぐらいだ。全国で商店街はどんどんなくなっているという話を聞くが、俺たちの地元の商店街は再開発したこともあり、まだまだ活気がある。



 俺は唯を案内しながら、人気のうどん屋に向かっていた。高校時代も何回か通った、県内でも有数のうどん店だ。

 ちなみに、香川は珍しい事にうどんのチェーン店はほとんどない。チェーン店が出来ても、個々の店の力が強いために、売れ行きが全然伸びないらしい。何かかっこいいな。元々特別なオンリーワン。



「おっ、ここだここ。まだ昼前だから、人も少ないみたいでよかった」



 昼の時間帯になると、人気店だとアトラクションぐらい並びますからね。ただ、うどん屋はセルフという事もあってめちゃくちゃ回転が早い。


 特に人気店の店員さんは、洗練されていてプロだ……! と感じる。

 注文を聞いてからうどんを提供するまでの早さ、メニューの料金をすべて把握していてのレジ打ちの早さ、そしてあの店員さんの愛嬌……! 全てが最強なのである! 



 おっと、つい地元愛を語り過ぎてしまった。話の本筋に戻りましょう。



「え~と、私はかけうどんの小で!」

「あ、俺もかけうどんの小で」



 俺と唯は迷いながらも、共にかけうどんを注文した。

 さぁさぁやってまいりました。二限は、うどんのメニュー講座のお時間ですよ!


 まずはオーソドックスなかけうどん! 値段も安く、うどん本来の味をめちゃくちゃ楽しめる!

 暑くなれば、ひやかけ! その名の通り、冷たいかけうどんだが……これまたダシが絶品! 氷水で冷やした冷やしうどん、ざるにあげたざるうどんも捨てがたい!



 少しマイナーなメニューもご紹介しよう! 

 香川で有名な釜玉うどん! ゆでたての麺と玉子の絡み合う感じが絶妙! ご飯、海鮮、肉、鍋、麺……何に合わせても美味しい、最強の玉子を信じろ! 玉子って、そう考えるとめちゃくちゃモテモテやな。


 俺としておすすめするのが、醤油うどん! 大根おろしやレモンをのせて、醤油で食べるのがこれまた絶品! 温かいのも冷たいのも美味しいので、オールシーズン食べれるぜ!

 

 玄人の君には、カレーうどん! やっぱ、カレーとうどんは最強の組み合わせなんですわ。

 あと、しっぽくうどんってのもあるぞ! 野菜が数種類入っていて、寒い季節には絶品!


 はぁはぁはぁ……これにて、君もうどんマスターだ! えっ、誰も聞いてないって? またまた~! うどん食べたくなってきたくせに~! えっ、ラーメン派? 時間がないから、ラーメンはまた今度な。



 いかんいかん、うどんにめちゃくちゃ興奮してしまった! 何か唯が怪しげな目線で見ているし、ここは少し落ち着いておこう。



 冷静さを取り戻した俺と唯は、空いている奥の席に座って、いよいようどんを食べ始める。



「うぅ~やっぱり美味しいっ! 昔に食べた記憶だけが頼りだったけど、やっぱり香川のうどんは一味違うね! 私の記憶は、間違ってなかった!」


「唯も俺も同じで、香川から出る時にうどんの美味しさに気がつくんだよな。鎖国してるのか?」


「香川の場合は個人で経営している人とかもいるから、なかなか難しいよね……」



 香川に出てから気づく、地元の良さ。地元を出ると、どうしても地元マウントしたくなっちゃうんだよなぁ。地元愛、バリバリ持ってます。



「らっくん、それでこれからどうする? 家族とかと会う?」


「うーん、それは面倒くさくなるからやめとく。時間も限られてるから、懐かしい所を回る感じで良いんじゃないか」



 親と唯を会わしたら……絶対に面倒くさくなるに決まっている。今回の地元に帰ってきた件については、黙っておこう。



「懐かしいところって、やっぱ学校とか?」


「おう。電話してみたら。受付して学校内に入ってもいいって」


「本当!? それは楽しみ!」



 地元は地元で、やっぱり良い。

 改めて、地元愛と地元の良さを感じることができました……

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