【番外編③】 ゆうこさんの訃報①
【沙織 目線】
錦野ゆうこさんの訃報が入ってきたのは、夏の暑さが少しだけ柔いだ9月の中旬。
状況が何も分からないまま、
「「かあさん…」」
秀世「お義母さま…」
家には、優と三里亜の兄妹。それに優の嫁ちゃんの秀世ちゃん、三里亜の親友の明美ちゃん、そして…両親が九州に向かってしまった
そして…もう一人。
実乃里「沙織さん…」
「実乃里さん…心強いわ」
実乃里「…いえ…私なんか何も」
たまたま、ヨーロッパから帰国していた実乃里さんが、渡欧予定を未定にして残ってくれていた。
そして…南ちゃんもこちらに向かってくれている。
わたしは…わたしたちは幸せものだ。
優「…あんな五月おばさんは…初めてみた…」
妹ちゃんは泣いていた。泣いて泣いて…あまりの状況に正太郎くんは妹ちゃんのそばを離れることが出来なくなった。
そして…パパは…
「あたしも付き添うからっ!」という我が決意はやんわりと…でも有無を言わせぬ強さで断られてしまった。
「親父!その言い方は…」言いかけた言葉を優が思わず引っ込めてしまうくらいに…パパの表情は見たことの無いもので…心配した子供たちがあたしに寄り添ってくれるなか、あたしたちは…パパたちの連絡を待っている。
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実乃里「わたしは…錦野ゆうこさんのことを少しだけ先生から聞いたことがあります」
三里亜の実母である実乃里さんは、時が経った今でも
その信頼に満ちた口調は…彼女が初めてをパパに捧げた中学三年生の頃から変わらないのだろう。
「錦野ゆうこさん…パパと妹ちゃんの恩人だと聞いているけれど」
実乃里「…命の恩人だと先生は話されてました。親友で…誰よりも優先するのだと」
「…」
実乃里「…実は…初めて先生に告白した際には…私は断られているのです。『ゆうこちゃんの返事待ちだから』って」
「…」
実乃里さんの昔の写真を南ちゃんに見せて貰ったことがある。
…信じられないような…美少女だった。
そんな彼女を袖にしてでも…パパはゆうこさんとの約束を守りたかったんだ。
私たちは知らない…錦野ゆうこさんのことを何も…知らない…
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「…お通夜が終わったそうよ…」
待ちに待ったパパからの連絡…
「…死因は乳ガン。発覚時はステージⅢ、でも」
和也「…転移したんですね…」
「…」
「…それと…パパがやっと承諾してくれたわ。明日の朝一の飛行機で、あたしは九州に向かいます。告別式は間に合わないけれど」
実乃里「…わたしも行って良いですか?」
南「おねーさん…わたしも!」
「…ええ、一緒に行きましょう。わたしたちの知らないパパとゆうこさんを探しに!!」
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この話は、時系列としては
「おれの嫁は高校一年生の箱入り娘」
https://kakuyomu.jp/works/16818093082453176757
の約一年後になります。
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