第6.5話 沙織の酔っ払ったふり大作戦

…これは、沙織と俺が初めてひとつになったときの話だ。



沙織「お願いです!今日はお酒付き合って欲しいです~!」

(画像 沙織のビジネスフォーム)

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093080330976628


付き合い出して約半年、彼女のお酒のお誘いはこの頃結構あった。

酒好きな彼女のストレス発散に付き合っているのだが、大ハプニングだった初デートのお持ち帰り事件を除けば、基本泥酔には至らない彼女とのお酒は面倒も無いし会話が弾んで結構楽しかった。


この時は木曜日でね…土日休みの彼女なら、1日待って金曜日にすれば次の日がお休みだろうに…よっぽど嫌な事でもあったのかな…って少し心配していたんだ。



残った仕事はズバリと捨ててきたと笑う彼女と21時に待ち合わせて、彼女のお気に入りの渋谷のイタリアンレストランからショットバーへのコンポに繰り出す。


心配していた割には彼女の可愛い顔は明るくて…ちょっと拍子抜けだったけど。


沙織「私…社内で『鶴姫』って呼ばれてるんです!…失礼だと思いませんか!?」

「え?…いや~…妙に納得出来る素敵な愛称に感じるんだけど…」

沙織「え~~~酷いです!」

「…酷い?なんで?」


…最初に紹介で出会ったときから思ってたんだけど、もちろん彼女は端正な容姿のスレンダー美人さんで、ちょっとロリ顔だけどそれも含めてまさに俺のドストライク。

でもそれだけじゃなくてさ、彼女の立ち振る舞いとか髪かき上げる仕草とかが艶やかで…やたら離れて見ても目立つんだ。

小さい頃からやっていたっていう茶道の作法のせいなんだろうと思うんだけど。


うん、鶴姫…お嬢様っぽくってぴったりじゃん!…と思ったんだけど(汗)


「あのですね!!『鶴は観賞する分には綺麗で最高だけど、中身は煮ても焼いても不味くて食べられない』…さんざん課のみんなからからかわれているんです!…わかりますか?この意味…桂木さんにまで納得されたら私、本気で泣いちゃいます」(涙)


「あはは…沙織ちゃん、それは言い得て妙だね」

(この子、残業大好きの仕事の鬼だもんな…)


沙織「…良く聞こえなかったんですけど、何か言いました?」

「いいえぇ!」


…後で思えば、これが本日の前振りだった。


何かこの日はお酒のペースが早いな~とは思ってはいたんだ。


でも『あの日は初めてのデートで前日の夜から緊張してやらかしたんです』と言ってた最初のデートを除けば、彼女の見掛けによらない酒豪っぷりは信頼出来るものだったんだよね。


だから、まさか!…と思ったのさ…そんな彼女が宴の終盤にまたもや前後不覚に陥ったのは。



「…一体…なんでこんなことに??」


お店に呼んで貰った深夜タクシーの後部座席。

俺の左肩には無防備なかわいい顔を寄せて幸せそうに眠る沙織ちゃん。


普段だと少しロリっぽい印象を醸し出す彼女のやや垂れた大きな瞳が閉じられてると、長いまつげが揺れて、別人のように大人びて見える。


「う……ん……」


さっきまで嗜んでいたワインの酒精が混ざる軽い寝息が何か艶かしいんだよね。


前回と違って明日も仕事の彼女を同じ服装で会社に行かせる訳にはいかなくて。


「道玄坂のホテルは駄目だな…楽なんだけど」


渋谷から西調布の彼女のアパートにタクシーで送ってから帰ると…俺の家に着くのは3時を軽く過ぎる。


「しょうがないか…明日の午前中はサボろっと!」


この半年、何度か車デートのお迎えで訪れているので、勝手知ったる彼女のアパート前。


沙織ちゃんは、タクシーの中での睡眠で少しは酔いが覚めたのか、おんぶをするほどのことは無く、肩を貸すと「ごめんなさ~い」と聞こえなくもないゴニョゴニョ言葉を発しながらよたよたと。


そして沙織ちゃんは部屋に入るとすぐベッドにへたりこんでしまった。


沙織「ふにゃ~ん…」

「…猫かよ…仕方ないなっと!」


前回と同じくシワにならないように上着とスカート、ついでにストッキングを脱がす。

彼女らしい清楚な白いパンティが、汗でほのかに女の子の匂いを醸し出してくる。

ピンクのブラウスのボタンが外れて薄紫の可愛いブラジャーが少しだけ姿を表している。


う~ん!もったいないなと思いつつ、俺はタオルケットを彼女にかけてやった。


「う~ん無防備だよな…本当に襲っちゃうぞ!沙織ちゃん。な~んて」

…まあ、そこまでがっついて酔っぱらいを襲う趣味も無い。つまんなく焦って彼女の信頼を失いたくは無かった。


彼女の鞄とかを分かりやすいところに纏めてやって、帰る前に役得でバードキスくらいなら貰ってもバチはあたらないよなっと可愛い寝息の彼女の顔を覗き込みに行って…その瞬間だった!


俺は彼女に頭を抱きすくめられていた。


「え?」

沙織「…」

「さ…沙織ちゃん?」

沙織「帰っちゃうの?何で襲ってくれないの?」


少し離れて俺の顔を覗き込む彼女が、長いまつ毛を震わせ少し涙目になって俺を睨んでいる。

沙織「あたしってそんなに魅力が無いのかな」(涙)

「沙織ちゃん…もしかして酔ってない?」

沙織「…うっ」(汗)

気まずそうに目をそらす沙織ちゃん…もしかして、これ…ハニートラップか!?…まじかよ!


「沙織ちゃ~ん」(汗)


沙織「で…でも…これで帰っちゃうなんて酷すぎですっ!いったいあたしってあなたの…んんっ!」


俺は磁石が吸いつくように沙織ちゃんにキスをした。

だって…酔ってないなら…そこまでやられたなら…躊躇する理由なんかどこにも無い。


「「ん…ん…じゅる……んんっ!」」


啄むようなキスはすぐおしまいにして、俺は舌を彼女の唇の中に侵入させる…舌や歯茎を絡めとる。

チロチロと舌先を絡めて、俺が沙織ちゃんの口から舌を出すと、それを追うように彼女の舌が俺の唇を舐めて舌を入れてくる。

お互いの舌の動きを感じるたびに身体がゾクゾクと震えてしまう。

沙織ちゃんもビクンビクンと体を震わせている。

貪るような、長い長~いキス。


沙織「んんっ…み、三月さん…気持ち良いよう~」

「黙ってよ…黙れ!」


もう一度、沙織ちゃんの口中を蹂躙する。

彼女の舌が再び答える。

俺たちはキスだけで長く長く。

どろどろに融けていくような感覚。


どれくらいの時間が流れたのか…

やがて…『きて…お願い!』と沙織ちゃんが囁く。

『もう止まらないぞ』と俺が答える。

『止めないで良いんだよ』と彼女が微笑む。


だから…俺は彼女を…犯した。 


(R15規制!R15規制!!)


少しだけ…彼女は最奥が、死ぬほど感じるタイプで、もう声が止まらなかった。

だからずうっと彼女の口をキスで塞いでいた。

声を奪われた彼女の痙攣の間隔がどんどん短くなっていって…その瞬間…今でもハッキリ覚えている。


感極まった沙織ちゃんは大きくブリッジ…そして俺たちの唇は離れて…


沙織「あ~!あ~!逝っちゃうよ~、たかしさん…ごめんなさい!沙織逝ってしまいます…ぃっくう~~っ!」

「…はあっ?」


これ以上無いほど身体を痙攣させた沙織ちゃんが、がっくりと…ピクピク身体を震わせて、彼女は失神した。


呆気に取られた俺の腰の動きは止まった。

だから俺は賢者になりきれなかった。


「それはないんじゃないかな…沙織ちゃん…」


ハニートラップ仕込んでまで求めたエッチで…最後は他人呼びを噛まして一人失神ですか…こっちは新しいトラウマ級だよ!!

「…たかしって誰なんだよ…沙織ちゃん」


沙織「…う…ん、す~~す~~」

「(うわ~本格的に寝ちゃったよ…沙織ちゃん)」


沙織ちゃんが俺の手のなかで、穏やかな寝息をたて始めた。

先ほどまでの妖艶さを少しだけ残して…でも穏やかなその顔には、いつもの艶やかな清楚さも戻ってきていて。


「ちっくしょう…可愛いな…」


本当を言えば、賢者になってない俺からすれば、そのまま犯し尽くしたいくらい色っぽいんだけれど。


「まいったな~どうすっかな~やっぱり明日の朝沙織ちゃんに聞くって訳には…いかないよな~たかしさんとやらのこと…」


…こいつは紹介者の秋男くんに責任持って調べて貰うしかないなあ~と思いなから…俺は彼女の額に今更ながらのお休みのキスをしたんだ。


―(翌日)―


沙織「んっ…んっ…んっ…んっ」

「(あれっ?)」


翌日の朝、寝ぼけてぼんやりした意識に不思議な下半身の気持ち良さが流れこんできた。


沙織「あっ!あっ!あっ!か…たい」

「…」

沙織「あっ!あぁっ!あぁっ!あ…たる!」

「(え~~~っ)」

そこには朝から俺に股がって、一心不乱に腰を振る肉食系ロリ美少女がいた。


…生だった。


否応もひとたまりも無かった…だって…彼女超激しいんだもん…



俺の爆発と共に、またまた失神した沙織ちゃんが目を覚ますのに30分…現在朝の8時半、沙織ちゃんは全裸のまま俺に背を向け、顔を手で隠しながらイヤイヤを繰り返している。


沙織「三月さんのバカ…大キライ!」

「…」


…遺憾である…どこをどう取ったとしても、先ほどの淫行は俺のせいではないだろう!

…でも、俺のせいなんだってさっ!!


「…沙織ちゃん…」

沙織「知りません!話しかけないで!」


うわ~ウルトラ理不尽…埒があかないなっと!


「…そんなこと言ってると!」

沙織「あっ!…イヤっ!」

「駄目だよ沙織ちゃん…昨日さんざん確認したんだ」

沙織「あっ!あっ!イヤっ!ダメっ!」

「君の弱点は…ここだ!」


彼女は再び気を失った…その間、約10分足らず。



沙織「はうっ!…はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「おはよう…沙織ちゃん」

沙織「三月…さん」


肩で息をする沙織ちゃんを軽く抱きしめて落ち着かせる。

息を整えてきた彼女がすりすりと可愛い顔を俺の胸に擦りつけてくる。

沙織ちゃんのサラサラの黒髪の芳香を感じながら俺は優しく頭を撫で続けたんだ。



「…ごめん、あんまり気持ち良くって中で出しちゃった…」

沙織「嬉しいです。大丈夫ですよ…安全日だって分かってましたから。」

「…それってさ、もしかして最初から狙ってたの?」

沙織「うっ…」

「…」

沙織「し…」

「し?」

沙織「し…し…仕方ないじゃないですか!三月さん半年もキスもしてくれないんだもん!」


「…ごめん」


沙織「私…そんなに魅力がないのかなって…相手にされないのかなって…心配になって!」


「ごめんよ…沙織ちゃん」


長いまつげに涙をたたえた彼女。

その端正な顔に唇を寄せて、俺たちは貪るようなキスを繰り返した。



「と…ところでさ、今さらなんだけど、もう9時回っていてさ…会社、大丈夫?」

沙織「あ…大丈夫です」

「はい?」

沙織「有休取ってますから…」

「…」

沙織「?」

「…電話貸してくれる?俺も会社に連絡する」


それさ…もっと…早く言ってくれよ~~~。

…道玄坂のホテルで全然良かったじゃん!!



「はい…はい…ええもう!熱が高くて…はい!はあ…嫌だなあ…二日酔いなんかじゃないですよ!はい…明日までには頑張って治しますから…はい、宜しく!!」

※沙織ちゃん家のイエ電を借りて会社に仮病電話…まあ携帯電話もない…そんな時代です。



沙織「…何か微妙に信用されてないんですね…三月さん」

「…こういうのは方便が大事でね。嘘でも言いきらないと…向こうも半分分かって付き合ってるからね」

沙織「…はあ、良い会社ですね…三月さんのところ」



…これで俺も今日は自由の身だ。


といっても淫行やりっ放しって訳にいかないから、俺は彼女から大きめのトレーナーを借りて。


「シャワー借りるね」

沙織「あ!あの…」

「?」

沙織「あたしも…一緒に…」



「…沙織ちゃん…大丈夫?」


沙織「…大丈夫…じゃない…あたし…もう三月さんから…離れられなく…なっちゃう」

「大丈夫!離さないよ…でも…このままじゃエンドレスだな」

沙織「…だ…誰のせいだと…」


半分は君でしょ?

二人でシャワーなんかして洗いあったら…これ以上やったら…もう猿だよ。



沙織「有り合わせだけど…どうかな?三月さん」

「うん…美味しいよ!沙織ちゃん」

沙織「…ありがとう、三月さん」


遅い朝食?

怒涛の逢瀬を何とか終わらせて…俺たちは服に着替えて昼食兼用の食事中だった。


「沙織ちゃん、その三月さんって呼び方さ…」

沙織「?」

「何か硬いよね」

沙織「…そうですか?」


「何かもう少し砕けた俺たちだけの」

沙織「そうね…じゃあ…ミツキ?」

「(いきなり呼び捨てですか…)」

沙織「うん!これからも宜しくね~、ミツキ!」

「すみません…ちょっと、かも!」

沙織「あはは!…やっぱダメ?あたし年下だもんね…でもそれだと…う~~んと」

「……」

沙織「じゃあ…みっちゃん!…どうかなっ?」

「オッケー」


沙織「…あたしは?…あたしは沙織ちゃんのまま?…年下だから呼び捨てでも良いけどさ」

「う~ん、結婚したらサオリって言いそうだけど」

沙織「(結婚…考えてるんだ)」

「今は、恋人だから」

沙織「(やっと恋人って言ってくれるんだ)」


「…サオ」


沙織「え?」


「サオって呼んで良いかな?」


沙織「うん!…あ…でも秋山先輩の前じゃ絶対止めてね?笑われて仕事にならないよ…」

「いや…サオこそあいつの前で『みっちゃん』とか言われたら…俺一生爆笑されちまう」

沙織「あはは!…じゃあ、内緒で!」

「ん!」



沙織「…ねえ、みっちゃん」

「ん?」

突然だ…サオが端正な顔を曇らせる。


沙織「あたしさ、処女じゃないんだ…」

「うん、分かるけど」

沙織「そんなあっさりと頷かれても…あたし…色々やってきちゃったんだ」

「……」

沙織「話したら…嫌われちゃうかもしれないんだ…でもさ」

「……」

沙織「あたし…あたしさ!」


「ストップ…サオ」

沙織「…え?」

「それ…現在進行形の話?」

沙織「違うよ!そんな訳無い!!…ううん…正直、昨日までは…ちょっと燻る思い出も有ったけど…今は全然!…本当、誰かさんの鬼畜セッ⚪スのせいで!」


「…だったら良いじゃん!」

沙織「…え?」

「昔の話ならさ」

沙織「で…でもさ…どこかからみっちゃんが聞いちゃったらさ!」

「それも含めてサオだろ?」

沙織「……」


俺は笑ってサオの大きな瞳を覗き込んだ。


「昨日さ…痛くなかった?俺の」

沙織「全然!あんな大きいの初めてだったけど…あそこ中に擦れて…奥がとっても気持ち良くって!」

「その具体的に対比してるだろう『大きい!』って話は、ちょっとだけ何だかな~なんだけどさ…痛いって良く言われたのよ」


沙織「…誰によ!」

「む…昔の話だよ!」

沙織「む~~」

「頼むよ…許してくれよ」

沙織「…分かったわよ。確かにその大きさなら…痛がる人はいそうだよね」

「でもさ、昨日のサオは受け入れてくれた…処女だったころのサオだったら無理だったかもしれないよね」

沙織「…うん、絶対無理!」

「その即答の根拠を…ほんと聞きたくなっちゃうけど…コホン、だからさ…今のサオだから良いのさ…俺はね」

沙織「なんか…うまくまとめられたような」

「だ、だからさ…サオは無理して昔のことなんか話さなくてもさ…」

沙織「あたしはみっちゃんの過去聞きたいかも!」

「は、話がズレテきた…」

沙織「…なんてね…冗談だよ。ありがとうみっちゃん…今のあたしを見てくれて」


「うん…愛してるよ、サオ!」


鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔になったサオ。


沙織「み…み…みっちゃん!…も…もう一度!聞こえなかった」

「や~だよっ」

沙織「え~~~」


それから…沢山の話をした。話題は尽きなかった。

あっという間に…時は流れていったんだ。




沙織「…帰っちゃうの?」

「うん、明日、仕事…そんな顔しないでよ」


楽しい時間だった。でも俺たちは一緒に暮らしている訳じゃないんだ。


沙織「…ぐすん」

「またすぐ泊まりに来るからさ」

沙織「!!うん!いつでも来て!」

「そんなこと言ったって…サオ、普段は残業で午前様じゃん(笑)」

沙織「だから…これ」

「おま…これ合鍵…そんな簡単に」

沙織「簡単じゃないよ」

「……」

沙織「簡単なんかじゃないよ」

「…分かった。ありがたく!…うちにもおいで!母親と妹いるけど」

沙織「うわ~、ハードル高~い。でも行く!」

「うん…じゃあね」


沙織「あ…」

「?」

沙織「みっちゃん…お願い」

「ん?」

沙織「さ…最後にもう一回」

「ん…キスだね」

沙織「え…エッチしよ?」

「(ほんと…肉食系だ)」

沙織「だ…駄目?」

「…良いよ…お姫様のおおせのままに!」


はじめたら、一回で済む訳もなく…

結局…俺が帰ったのは…次の日の始発だった。

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