第6話 【沙織視点】(なんでも)先輩が悪いんだっ!
「全部、先輩が悪いんだっ!」
秋男「お前なあ!なんでもかんでも酒と俺のせいにすりゃあ良いって訳じゃないぞ!」
このあたしがお酒で潰れる!?
あの三月さんとの驚愕の初デートから約半年、あたしはうちの課定例の飲み会で、またもや酔っ払ったふりで秋山先輩に絡んでいた。
すんごい迷惑そうな先輩。顔には「(てめえ相変わらず酔ってないだろ…ふざけんなよ!)」と書いてある。
そんなこと言われたって、こっちだって絡みたい訳があるんだから。
「なんであの人、あんなにへたれなんですかあ!?」
秋男「お前…それを俺のせいにされてもさあ…」
「だって…半年ですよ!?半年、キスもしてくれないんですよ!?」
そう…三月さんと付き合い出して半年…、それなりに上手くいっていると思っていた。
ほぼ毎週のお酒の席は楽しい。年上らしくデートプランも豊富。遠出のデートだって何度もした…お泊まりだって…と言うか最近は新宿が仕事拠点の三月さんは結構、西調布の我が家に泊まりにくる。
泊まれば当然のように一緒のベッドだ…なのに!
「先輩…私って男の人からするとそんなに魅力が無いんですか!?」
秋男「面と向かって言われれば、まじで答えにゃならんが…少なくとも俺は金を積まれてもお前に手は出さんな!」
「な!」
そこまで言いますか!?この男は!!
「先輩酷い…もう知らない!!」
腹が立ったので思いっきり嘘泣きをかます。
まあ…この男にはバレバレだが。
秋男「だいたいお前、半年前はあんなに喜んでいたじゃないか!泥酔して前後不覚になっても、手を出されること無く優しく介抱して貰えたって…良い人を紹介して貰えたって」
「…物事には限度があると思います」
だいたい半年どころか付き合って1ヶ月以内にあたしに手を出さなかった男性は今までいなかった。
…知り合った初日に手を出そうとしたバカはたくさんいたけど。
「ねえ先輩…あの人とホモ達なんじゃないですか?」
秋男「…殺されたいのかてめえ…」
「…じゃあ、元カノの先輩の妹さんと未だに…」
秋男「あいつはウィーンに帰りました!」
「じゃあ、あたし…どうすれば良いの!?」
秋男「なあ!達也!このお前の敬愛する上司は、どうすれば良いのかね?教えてやってくれよ」
後ろの席で、同期の女の子とくっちゃべっていた男の子が面倒臭さそうにやってきた。
国見達也(くにみ たつや)
一年後輩であたしの直属の部下。仕事が出来る。
達也「先輩…先輩はそのまま先輩のままで良いんですよ?先輩はそのままで魅力に溢れていますよ」
「達也…あんた…」
達也「だって先輩は…『鶴姫』なんですから」
「ぶっ殺すぞこら!!」
達也「お~怖わ!秋山先輩!殺されたくないんで向こういきま~す」
「待てこら!直属上司をバカにして!」
秋男「ぷくく…」
「なによ~~」
秋男「観賞用には最高だが中身は煮ても焼いても食べられない…本社営業部のアイドル鶴姫様か…」
「言い出したの…絶対先輩ですよね!」
秋男「濡れ衣だよ!それは」
みんなして寄ってたかって鶴姫鶴姫って…そりゃ社内恋愛も二回失敗しちゃったけどさっ!
秋男「まあまあ、みんなお前に親近感を抱いてるし、三月に至ってはお前を大事にしすぎているんだよ…もう一回酔っ払ったふりして押し倒してみたら?」
「…先輩、初回のデートで生涯初めて泥酔して潰れたあたしにあの人『酔っぱらいを襲う趣味は無い』って言い放ったんですよ?今度それやって無視されたらあたし、流石に恥ずかしくて死ねますよ?」
秋男「方法はあるんだ」
「どんな?」
秋男「あいつがそれを言ったら『わたし…酔ってませんから』って言え。ついでに泣け。多分、それで上手くいく」
本当かなあ?駄目だったら次の定例飲み会でまた思いっ切り絡みまくってやる!
あたしは作戦を練り始めた。
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