第13話 南ちゃんとお兄は…【実家訪問編終了】

『大学生になったら、もうここには来ないでくれ』

『おにーさんなんか…大っ嫌いですっ!』


――

俺が刺された話にサオが顔色を変える。

沙織「みっちゃん!それって大丈夫なの!?」

「怪我の後遺症ってこと?それなら問題無いよ。傷痕は消えないけどね」

沙織「……」

「結果的に南ちゃんのストーカーも逮捕されて万事解決だったんだけどね。南ちゃんと五月が泣いて大変だった。南ちゃんはもう見る影も無いくらい痩せてしまっていて。そして…南ちゃんはおかしくなっていった」

沙織「……」


ガチャッ…扉が開いて突然、五月が戻ってきた。


五月「お兄、ちょっと良い?お義姉さんと早速エッチとかしてないよね?」

「してるか!それを懸念するならノックをしろ!」

五月「南ちゃんがお義姉さんのことを聞いて、どうしても挨拶したいって」

沙織「…え?」


カチャ…


南「お…おじゃま…しま…す…」


そ~っと綺麗な茶髪の頭が…


「!!南ちゃん、久しぶり!相変わらず可愛いね」

南「おにーさん、そういう時は大人びて綺麗になったねとかおっしゃると女の子にモテるんですよ?」

「その格好で何を言ってるやら」


部屋に入ってきた久しぶりの南ちゃんは、五月とお揃いのコミマのパーカー姿で色気も何も無いはずなんだけど、やっぱりちょっと他の人とは比べることが出来ないくらいの可愛さで。


南「おにーさん、ご婚約おめでとうございます。今まで本当にお世話になりました」

「就職先は決まりそう?」

南「はい!バッチリです!」


南ちゃんも今は大学四年生になっていた。

(画像)リクルートスーツの南ちゃん

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093079371174822


「良かったよ。コミマへの入れ込み過ぎで世の中から隔離されちゃったかと思ってたから」

南「あれはあれです。それを言うなら、あれだけ廃れた話ばっか書いてて公立の医学部に入った五月ちゃんがおかしいです」

沙織「あの~高倉南さんですよね?いきなりですがその同人誌を是非あたしにも」

「…ノッケからそれかい!?沙織。さすがにもっと言うことあるんじゃないの!?」

「「あはは~」」沙織と南ちゃんが談笑している。

それを尻目に、俺と五月は兄妹のナイショ話を…


「(五月、ありがとうな。南ちゃんほとんど昔に戻ってる。お前のおかげだ)」

五月「(お兄に感謝されることじゃないよ…それに、南ちゃんは結局大学時代も彼氏を作らなかった。それは心残りだよ)」


あの事件の後、退院した俺に南ちゃんはぴったり寄り添うようになった…それこそ四六時中。

推薦で大学が決まっていた南ちゃんには時間がたっぷりあったのも不味かった。親御さんさえも南ちゃんの味方になっていて。

「何でもします。何でも要求してください。ご主人さま」常にそう言われているような日々。

人が変わったような南ちゃんは痛々しくて…それなのに信じられないくらい妖艶で。


『大学生になったら、もうここには来ないでくれ』

南『おにーさんなんか…大っ嫌いですっ!』

(画像)

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093079642175350


「(なあ、五月。お前が沙織に愚痴ってた『昔の彼女を引きずって、女の子紹介したのに一切、手を出さないでフラれたお兄さん』って、結局どういう意味だったんだい?)」

五月「(ん~、今だから言うけどさ)」

五月『え~南ちゃんってお兄が好きなの?』

南『…うん』

あのストーカーが始まったとき、あたしは南ちゃんに聞いたんだ…彼氏作っちゃえば?って。

お兄も想像つくと思うけど、南ちゃんってモテるんだよ…高校時代どれだけ告白されてたのかな?

…でも恋愛に臆病になっていた南ちゃんが告白に頷くことは無くて。

それでもストーカーのこと含めて好きな人くらいはいないのか?って聞いたらさ。


だから無理やりうちに避難して貰ったんだ。

うちに来た南ちゃん、とっても楽しそうでさ。

あたしは、二人に幸せなカップルになって欲しかったんだ…でも…。


…ねえ、あんな事件が起こらなかったら、お兄と南ちゃんは付き合っていたのかな…


不意に南ちゃんと沙織の談笑が止まった。


沙織「ねえ?三月さん?あなたあの事件の入院中、南さんにずっとフ⚪⚪チオで抜いて貰ってたって…本当?」


な!…待て待て待て!!


五月「…なにそれ…南ちゃんには一切手を出してなかったんじゃないの?お兄!!」

「い…いや、ほら、あの時は身体が動かなくってさ…み…南ちゃん可愛いし」

南「あはは!おにーさんの精⚪、濃くって素敵でした」

沙織「……」

五月「……」


二人「「この!女の敵め!!」」


「み…南ちゃん!助けて!」


南「あはは!やですよ~、あっ!骨はいつでも拾って一生面倒見ますので!」

沙織「三月さんの…女たらし!!」

五月「同意!!」

南「あはは!わたしも同意!」


「み…南ちゃん!あんたやっぱり俺を恨んでるんだろ…そうなんだな~!?」



―おまけ―


(約三時間後)


ガチャ!

五月「お兄~~、母さんが、お義姉さん夕飯食べてくの…って…」


「ん!………ん?」

沙織「…あん!ん!……ん?」

五月「…あらま、真っ最中でしたか」


待て!バカヤロウ…ノックはどうした!?

(そもそもうちの実家には、そんな習慣、一欠片も無かった。)


五月「…ごめん…あそばせ~」

「ま!待て!五月…」

五月「お邪魔しました~~」


バタン!ドタドタドタドタ

五月「かあ~さ~ん、お兄とお義姉さんがシッポリ~~」

あ…あ!あの野郎!!


「待て!~~~~~このガキ!!」

沙織「待って待って、みっちゃん!行く前に服を整えて!社会の窓を閉めて~~!」

沙織「…おかあさま、ものすごい笑顔だったね…」

「言わないで、サオ。お願いだよ…」


あまりにも微妙な車中。

夕飯後、沙織を送って行くからと、俺たちは一緒に車で実家を飛び出していた。


…とても、夕飯は固辞出来なかった。

事態の張本人である五月は「南ちゃんと夕飯食べてくる!」とか言ってさっさと家を出ていった。


残されたのは、何も話せなくなった俺たちと、見たことないような満面の笑顔で夕飯を振る舞うお袋……。




沙織「みっちゃん…後ろのみっちゃんの荷物、やけに多いね」

「悪い…しばらく泊めて…とても帰れないわ…」

沙織「うん…オッケーだよ…」


ファーストインパクトって大事だと思う。

結局、お袋とサオって決して仲が悪い訳じゃないんだけど、30年近くたった今でもたまに空気微妙になるもん。



…ちなみにこの後サオのアパートで、俺たちは死ぬほどエッチした。


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