第9話 猫と母の天然攻撃ターン

時は1990年代、あの頃は東京から松戸・柏にアプローチする国道6号線が「永遠に終わんないんじゃないか」って勢いの金町付近絶賛道路工事中だったので、渋滞を見越しての早めの車移動。


沙織「ねえ…おうちに連絡入れてる?今から行くよって」

「もちろんだよ。お袋も妹も大喜びで三つ指揃えて待ってるよ」

沙織「…嘘」

「うん、嘘ぴょん」

沙織「……」

「……」

沙織「みっちゃん!!」

「…と、言うことで、お袋が家にいるのは分かってるんだけど特に話してない」

沙織「妹ちゃんは?」

「いるかいないか分かんない」

沙織「……」

「三つ指よりは良くない?」

沙織「…くっ…分かった、分かりましたっ!」

はい、サオ陥落~~。

沙織「へ~~、ここがみっちゃんの部屋なんだ~」

「……」

沙織「それにしてもさ」

「……」

沙織「誰もいないじゃん!」


北柏駅から12分。こじんまりとした一戸建てが我が実家。そして俺の部屋は一番環境の悪い二階北側の洋室6畳間(笑)。


「い、いや、母は買い物あたりだよ。すぐ戻ってくるって」

沙織「本当かな~誰もいない自宅に若い女の子連れ込んで何をしようとしているのかなっ?」

「そ~いう、オヤジ臭いこと言わないで。それに誰もいなくはないでしょ?」

?「フ~~~っ!フ~~~っ!」

沙織「……」


そう、我が家にはもういっちょう、家族がいる。

動物嫌いだった親父が亡くなったとき、みんなで話したんだ。

親父がいたら出来なかったことをやってみようって。

その結果。


沙織「…この猫ちゃん、怒ってるんだけど」

「うん、発情期でさ。こいつ雌だから、サオに敵愾心バリバリみたい」

猫「フ~~~っ!フ~~~っ!」

沙織「……」


こいつが俺に懐くのは発情期だけだ。


沙織「この子名前は?」

「あいちゃん」

沙織「可愛い~!あ・い・ちゃん!…全然反応しないんだけど」

「対外的な名前だからね」

沙織「は?」

「おい!にゃ~!」

猫「な~~ん」

沙織「……」

「あいちゃんってのは、動物病院とかで書く名前。普段はみんな、にゃ~とかタヌキとか好きに呼んでる」

沙織「……」

猫「フ~~~っ!フ~~~っ!」

沙織「桂木家がどんな雰囲気か分かったような気がするわ」


悪かったね!どうせ奔放なB型一家だよ。

ガチャ、、、突然部屋のドアがあいた。


?「三月~~、誰か来てるの~?あんた昨日も連絡無しに外泊して…って、あらあらまあまあ!」


我が家の女帝、母登場。


沙織「お、お邪魔しております、おかあさま!私、速見沙織と申します。よろしくお願い…」

母「三月!お…お母さんは悲しいわ!あんたやっと女の子を家に連れてきたと思ったら、こ、こんな犯罪行為を!!」

沙織「…は?」


母は思い込みが激しいO型。


「母さん、落ち着いて聞いてくれ。あんたが何を考えているか大体分かるが、まずは言葉にしてくれ。何が犯罪行為なんだ?」

母「未成年淫行行為…不純異性交遊…」

「…やっぱり」


本当、気合いの入ったサオの端正な容姿は…女子大生通り越して、女子高生に見えるんだよ!!

(画像 母に不純異性交遊を疑われる沙織)

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093079154043105


「母さん、彼女、俺と三学年差。早生まれだから24歳」

沙織「お…おかあさま…これを」


サオが名前とか住所をうまく隠した顔写真と生年月日の分かる運転免許証を出してきた。


「ほえ~、わざわざケースを作ってるんだ。うまく隠してあるね~」

沙織「居酒屋で何回使ったことか…お酒飲ませて貰えないんだもん!」


うん、例えスーツ姿でも、サオに対して「未成年、お酒駄目!」って言う店員さんは多いと思う。

母「ごめんなさいね、沙織さん」

沙織「い…いいえっ」

母「それにしても可愛らしいかたね。三月はやっぱりロリコンだったのね」

「母さん!それは沙織に失礼…!」

母「あんた、大学生の頃は中学生の子と付き合って…あらやだ、お飲み物を持ってくるわね」


しれっと爆弾を投下しながら、なんかウキウキと母が出て行った後には、温度の下がった我が部屋が…


沙織「さて…今の中学生淫行犯罪の件、キリキリ吐いて貰いましょうか!!」

「ご…誤解だ!た…確かにあの子は中学三年生だったけど、これには訳が」

沙織「みっちゃんの…どスケベ変態~!」

沙織「…なるほど、家庭教師の相手先の女の子を食べちゃったと」

「凄い言いようだな!おい!」

沙織「だって…」


サオが不貞腐れている…頼むよお袋!


沙織「…で、どうしたのよ、その子とは」

「…その子はサオも知ってる子だよ」

沙織「…へ?」

「…秋男の妹さん」

沙織「…」

「…」

沙織「嘘!?あのコンサートの時の!?」

「そうだよ」

沙織「い…幾つなのよ彼女!」

「コンサートのときは、21…にギリギリなってなかったかな」

沙織「…嘘、あんな大人びた…」

「中学のときもあんな感じだったぞ?私服だと年齢不詳で」

沙織「……」

「だから!俺は断じてロリコンじゃないの!」

沙織「それはそれで…もう何て言ったら良いか分からないよ~。何であの人より私なの~?」

「そんなこと言われたって、今の俺はお前が良いのっ!」

沙織「やっぱり…みっちゃんって…ロリコンなんだ~(涙)」

「その自傷発言に俺こそ何て言ったら良いか分からん!そんなに俺をロリコンにしたいのか~!?」


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