第4話 【沙織視点】残された花束
秋男「お前の家の電話には留守番電話機能が無いのか?」
「…え?確かありますよ?」
2日前の課の飲み会…社員総代の夜の連絡先交換から2ヶ月以上桂木さんに放っておかれた私は、実質紹介者の秋山先輩に酔っぱらったふりで絡んだ。男の人にここまで無視されたのは人生で初めてだった。どうせ先輩にはバレバレだったので嫌がらせを込めて思いっきりの嘘泣きも絡めてやった。
…で、現在私は、仏教面の先輩に午後一で呼び出されている。
秋男「その留守番電話機能…使っているか?」
「………」
使ってないな。一時期、会社の連絡網を使ってナンパみたいな留守伝がいっぱい入ったときに止めてたりして。
秋男「…お前んちの電話、ナンバーディスプレー機能はあるか?」
「…ありませんね」
秋男「………」
「………」
秋男「お・ま・えな~、そんなんで何で三月から電話来ないとか断言出来るんだ!」
「(ひええ)」
秋男「お前最近の平均退社時間は何時だ」
「だ…だいたい、11時?」
秋男「普通の常識ある大人はな、妙齢の女性のところに夜十時以降なんか電話しないんだよ!そういうときは留守番電話くらいいれておけ!」
「はいい~」
ヤバい、飲み会で絡みすぎたのを根にもたれている。
確かに桂木さんから電話が掛かっていた可能性はあるなあ。
秋男「…まあ良い…用事はこれだ」
「あたしのオーケストラのコンサートチラシ?」
社内回覧していたやつだ。
秋男「今度のやつ二枚頼む」
「先輩が来るの?」
秋男「俺がオーケストラなんか行くと思うか?」
ですよね~
秋男「誰が来るかは内緒だ。楽しみにしていろ」
―
―
―
「…嘘でしょ?」
オーケストラ当日、観客席を唖然としながら見ている私がいた。
予感はしていた…多分、桂木さんが来ると。だけど…女連れとは…しかも
「なんて綺麗な…女性」
しっとりとした長い黒髪を綺麗に束ねた、恐ろしく整った大人の女性の容姿。
(画像)
https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093079091119141
何よりその女性が桂木さんに向ける笑顔が…その近すぎる距離感が二人の関係を物語っているようで。
「ふ~ん、そうなんだ!」
私は頭に血が登っているくらいのほうが集中力が上がる。
「(集中!目にもの見せてやるから!)」
―
―
―
スタッフ「沙織ちゃん!花束届いているわよ!」
「…え?」
会心の演奏!アンコールを終わらせて楽屋に戻った私に花束とカードを残したのは…
「(桂木さん…デートのついでじゃなかったの?)」
『素敵な演奏でした。リードフルートの一番、流石の音色でしたね。これからも頑張って!』
「(ちゃんと…聴いてくれたんだ…桂木さん)」
「桂木さん!!」
慌てて飛び込んだ観客席には…既にほとんと人影は残っていなくて…私はただ花束とともにそこに取り残されたんだ。
―
―
―
秋男「三月からの伝言。この間のコンサートチケットのお礼に奢りたいってよ」
「…何で先輩通して来るんですか…うちの留守番電話は復活してますよ!」
数日後、何か腹の立つ笑顔で秋山先輩が話し掛けてきた。
秋男「そりゃさ、数ヶ月もご無沙汰してたんだ。あいつだって誘い難いのさ。あいつ年齢の割には高給取りだから良いもの奢って貰えるぞ」
「はあ…でも、なんかもう今さら過ぎて…」
秋男「……」
「……」
秋男「面倒臭さ!!」
「な…なによ~」
秋男「分かった!速見先輩はご機嫌斜めなんだな。まあそれはずっと放ッポリ投げてたあいつが悪い!じゃあ俺が責任持って断って」
待って待って待って!
「い…行かないなんて…言ってないじゃないですか~」
秋男「あっそ!」
…その黒い笑顔…ムカつくわ!
「秋山先輩…あの人ほんとはプレイボーイなんじゃないですか?」
なんか腹立つから…私は最後の抵抗を試みる。
秋男「…コンサートで一緒にいた女のことか?」
「…な!」
秋男「あれは…俺の妹だよ」
「…嘘だ!」
秋男「酷いな(笑)」
「……」
秋男「明日の夜は残業は無しだ。詳しくは三月に聞くんだな」
「……」
そして明日の夜、私は桂木さんと久しぶりにお会いすることになった。
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