YouTuberを襲った悲劇

天川裕司

YouTuberを襲った悲劇

タイトル:(仮)YouTuberを襲った悲劇



▼登場人物

●如月 結(きさらぎ ゆい):女性。25歳。YouTuber。

●柏木百合子(かしわぎ ゆりこ):女性。25歳。YouTuber。結の友達。

●湯川浩二(ゆかわ こうじ):男性。25歳。結の専門学校時代の友人。

●警察:2人とも男性。30~40代。一般的なイメージでOKです。


▼場所設定

●結の自宅:都内のマンションのイメージで。

●喫茶店:一般的なイメージでお願いします。

●公園:都内にあるひとけの無い公園。


NAは如月 結でよろしくお願いいたします。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3643字)



イントロ〜


皆さん、こんにちは。

案内人のアンナです。


ところで皆さんは、YouTuberになった事はありますか?

最近でもとても流行っていますよね?


でも、余り度を過ぎる事をしてしまうと

自ら墓穴を掘ってしまい、炎上どころか

人生そのものの破滅を招く事もあるようです。


これからもしYouTuberになる方が居られたら、

ぜひお気をつけ下さいね。それでは又後ほど…



メインシナリオ〜


私の名前は如月 結。

私の職業はなんとYouTuber。


先日、友達がやってるのを見て

「いいなぁー」なんて思ってしまい、

それでつい私もYouTuberになってみようと

簡単な覚悟で挑んでみた。


でも、この世界も結構厳しい世界。

「軌道に乗るまでが大変」

とよく聞くがそれは本当だ。


私が立ち上げたチャンネルは全く伸びず、

もうこのまま自然消滅…?

なんて自分で言えてしまうくらい伸び悩んでいた。


ト書き〈転機〉


でもそんな時。


結「きゃあ!」


私がいつものように街中散歩を

YouTube用の動画として撮影してた時、

いきなり後ろからひったくりに遭い、

その時持っていたカバンを奪われてしまった。


結「ちょ、ちょっと!返してよ!返しなさいよ!」


その直後、何度もそう叫んだが、

相手は自転車だったのでそのまま通過して行き、

私の叫びは無駄に終わった。


(めっちゃ人気出る)


しかし自宅に戻り

とりあえずその時の動画をアップしてみると…


結「え?…なにこれ、めっちゃ凄いじゃん!」


なんと、その時の事故動画をアップした事により、

それから数日の内に私のサイトは一気に人気が出たのだ。


ト書き〈数日後〉


百合子「すっごいね!結、めっちゃ人気者じゃん!」


結「ふっふ〜ん♫でしょ?まさか私もここまで伸びてくれるなんて思ってなかったわ」


それから数日後。

私は友達の百合子と一緒にお茶しながら、

互いのサイトの人気ぶりをネタに暫く談笑していた。


そう、何を隠そうこの百合子こそ、

私がYouTuberを目指すキッカケを与えてくれた人物なのだ。


百合子は昔からYouTuberをしており、

その人気ぶりはもう不動のもの。

チャンネル登録者数も100万を超えている。


とりあえず今、私が目指しているのは

百合子みたいなYouTuberになること!


百合子「そうだねー、ヤラセでもいいから何かハプニングを取り入れてみると、もっともっと人気上がってくると思うよ♫私もそういうので稼いでた事あったから」


結「ふーん、ハプニングかぁ~」


確かに私のサイトの人気が出たのも、

あのひったくり事件があった直後だ。


当然、警察に通報して犯人はまだ捕まってないけど、

でもああ言うハプニングはサイト人気の貢献に利用できる。


ト書き〈浩二登場〉


浩二「よぉ、久しぶり!」


彼の名前は湯川浩二君。

専門学校時代からの私の友人だ。


浩二君はいつからか私に協力してくれて、

私と一緒にYouTubeサイトを盛り上げようとしてくれた。


でも丁度そんな時。


(脅迫コメント)


百合子「え?また来てるの?」


結「そうなのよ〜」


なんと私のサイトにアップした動画の一つ一つに、

脅迫のコメントが届き始めたのだ。


初めは大した事なかったけど、

最近になると本当にひどい。


(コメント:セリフの形で)


不審者「お前調子乗ってんじゃねーぞこの野郎」

不審者「今度、絶対お前をヤってやるから覚悟しとけ」


脅迫コメントどころか、殺害予告までしてきていたのだ。


百合子「ちょ、ちょっとそれってヤバいんじゃない?」


結「う、うん…でも、せっかく伸びてきたトコなのに…」


百合子「そんなこと言ってる場合じゃないわよ!警察には言ったの?」


結「え?あ、ううん、まだ…」


百合子「言ったほうがいいわよ。まぁサイトのコメントだし、公表されてる点は安心できるけど。でもちゃんとあんたの口から言ったほうがいいと思う」


結「そ、そだね…」


私は悩んだ。


せっかく人気が出てきたのに、

こんな事で警察に言っちゃったら

サイトを閉鎖させられるかもしれない。


でも確かに殺害予告…ともなれば、

そうするのが一般的に見て当たり前の事だろう。


ト書き〈数日後〉


浩二「これ、本当にアップするのか?」


結「…うん、して」


浩二「また反響くるかもしんねーぞ…」


結「…大丈夫、アップして」


それからまた数日後。

私はそれまで通り、撮り溜めてきた自分の動画を

サイトでアップしていた。

最近では浩二が動画編集を手伝ってくれたりする。


浩二がカメラマンになり、私がモデル。

こんな形で今までずっとやってきたのに、

まさかあんな反響が返ってくるとは。


だからか浩二も一つ一つの動画をアップする時に、

必ず私の顔を見て「大丈夫か?」と

気遣ってくれるようになっていた。


でも、こんな事で私の仕事を辞めたくない!

その気持ちがどうしても強かったから、

私は負けたくない気持ち一心で動画をアップし続けた。


ト書き〈事件〉


しかし、ついに事件が起きた。


結「きゃあ!」


私が公園でスタンドに立てたカメラで自撮りしていた時、

急に背後からやってきた男に私は取り押さえられてしまい、

危うく殺されそうになったのだ。


男は覆面をかぶりながら手に刃物を持っており…


不審者「大人しくしろぉ!」


とかなり大きな声で叫んだ。

ここは普段からひとけの無い公園。

だから私は絶対絶命!?


「きゃあ!」と思いきり叫び声をあげながら、

とにかく誰かに気づいて欲しい…

その一心で抵抗していた。


絶対あのコメントを送ってきた不審者の男だ!

その男の声も動画用に撮影している

このカメラにしっかり録音されている。


その時だった。


警察「大丈夫ですか!?オイやめろ!」


2人の警官が飛び込んできた。

不審者の男は「おっ?!」と言った感じに驚いていたが、

予期しない出来事に恐れをなしたのか。


それまで捕まえていた私をさっと放し、

そのまま茂みの中逃げよう逃げようとした。


でも私はその時勇気を奮(ふる)ってこう言った。


結「お巡りさん撃って!アイツを撃ち殺して!!でないと私、これからもずっと狙われちゃう!!!」


かなり大きな声で叫んでいたのだろう。

警官2人は少し驚いていた。


そして1人の警官が不審者の男を追い、

もう1人の警官が私に質問してきた。


警官「連絡をくれたのはあなたですよね?」



解説〜


はい、いかがでしたか?

意味怖のヒントはわかったでしょうか?

簡単に解説します。


結はYouTuberとしてかなり人気が出始めていました。

でもそんな折り、脅迫のコメントが届いてしまいます。


それを受け友達の百合子に相談してみたところ…

「絶対警察に言っといたほうがいい」

との事で、結もそうしようかなぁと少し思いましたが、

それでも彼女のサイトは人気が出始めたところ。


そんな事をすれば

サイトの閉鎖に追い込まれるんじゃないか?

そんなふうに結は心配してしまいます。


そしてそんな脅迫に負けたくない一心で、それまで通り、

撮り溜めてきた動画をサイトにアップしていました。


しかし、もう気づいた人はいたかもしれませんね。

そう、これは全て結の狂言でした。


実際に結を脅迫してきた不審者などいません。


結はいっときから、専門学校時代の友人・浩二と

一緒にサイトを盛り上げようとして行きます。


この不審者騒動は、実はこの浩二と結託してやっていた

ヤラセの「不審者騒動」だったのです。


ストーリー中に浩二が結に言っていた…

「アップするけど大丈夫か?」や、

「また結構反響が来るかもしんねーぞ」

との言葉は全て、不審者からの反響ではなく

世間からの反響の事でした。


このヤラセ騒動が上手く行くかどうか分からない、

そんな不安がどうしても浩二にはあったのでしょう。


しかし浩二は結の勢いに流される形で

結局、全面的に協力してしまいました。


そしてこのヤラセがはっきり分かるヒントが

ラストにありましたね。


公園で動画を自撮りしていた時、

結はついに不審者に襲われました。


でもそこは「普段からひとけの無い公園」でありながら、

襲われてすぐ警察が駆けつけてくれます。


そして警官のラストのセリフ、

「連絡をくれたのはあなたですよね?」


こう言いますが、なぜ結は前もって

ここで事件が起きる事を知っていたのでしょう?


この場面では、襲われてから結が

警察に電話をかけるシーンなど1つもありません。


つまりこの場面の全てが結の計画だったと言う事。

更に結は最後に…


「お巡りさん撃って!アイツを撃ち殺して!!でないと私、これからもずっと狙われちゃう!!!」


と警官2人に大きな声で言います。

これはその不審者を「死人に口無し状態」にする為。


ここまでくればもう解るでしょう。

そう、その不審者の男こそが実は浩二でした。

結はサイトを盛り上げる為、浩二まで利用していた…

という事。


結はハプニングがあればサイトの人気が出る!

と言うこの事に味を占め、浩二を協力者にし、

不審者そのものを演じさせていました。


なので、結のサイトに脅迫のコメントを送ったのも浩二。

浩二が自分の携帯から送っていたのです。

まぁそのうちその携帯も処分するつもりだったのでしょう。


なんともずさんな計画としか言い様がありませんよね。

こんな事件で日本の警察が犯人を撃ち殺す…

なんて事は普通ありえないのに。


欲望で盲目になってしまうと、

こんな事すら解らなくなるのでしょうか。

皆さんもぜひ気をつけて下さいね。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=3LMVCJV_lfU&t=65s

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YouTuberを襲った悲劇 天川裕司 @tenkawayuji

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