第14話

 アイナ達は、捜索場所の漏れや重複ちょうふくが発生しないよう等間隔に距離を空け一列に並んだ。

 そして、腰をかがめ地面を注意深く見ながら、少しずつ移動して行った。暫くすると、テレサの仲間のチャラ男が声を上げた。

「おっ、見っけ」

 チャラ男の元に皆が集まり、手にしていた指輪を確認した。

「これは……、違いますね……」

「何でだよ、ギルドの指輪だろ」

「宝石がありません。きっと別の方の物かと……。それに裏に書いてある名前も違うようです」

 カティアにそう言われ、皆でその指輪の内側を覗き込む。確かにエレナとは書いていない。

「マジかよ、紛らわしい!」

 カティアに否定され、チャラ男は、思わずその指輪を投げ捨てようとした。


「ちょっと待って下さいっ!」

 カティアが大声を上げて、その行動を制止する。

「何だよ、急に大声出して」

「それも誰かの形見の品です。街に持ち帰りましょう」

 カティアは、そう言うと指輪を受け取り、大切そうに袋にしまった。この出来事を皮切りに、その後もギルドの指輪は、次々と発見された。

「結構、沢山落ちているんですね……」

 シンシアは、拾い上げた指輪の内側を確認し、エレナのものでないと分かるとカティアに手渡した。カチャリという軽い金属音を響かせて、指輪は袋の中へと収まっていった。

 その音を聞くと、シンシアの表情は更に曇っていった。指輪をカティアに渡す度に、その音は鈍い音に変わっていった。それは、指輪の数の多さを皆に伝えていた。


 アイナは、そんなシンシアの様子を気に掛けつつも、捜索の手を休める事はしなかった――不器用な自分は、掛ける言葉を持ち合わせていないと考えていたからである。


 そんな最中さなか、視線の先に光るものがある事に気付いた。


 アイナが、その指輪を手にしたちょうどその時、テレサの声が、周囲に響き渡った。

「あったわ! これよ! やっと会えた……」

 テレサは、そう言いながら、見つけた指輪を両手で包み込み泣き始めた。

「良かったですね、テレサさん。本当に良かった……」

 カティアは、テレサのそばに駆け寄ると、嬉しそうに言った。彼女の目には、薄っすらと涙が浮かんでいた。

 更に仲間達がテレサを取り囲むように集まると、皆、一様に喜びの表情を浮かべていた――アイナ一人を除いて。


「私は、運が良いのか、悪いのか……」


 アイナの右手には、白い宝石の付いたギルドの指輪が握られていた。

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