第三章 紅い悪魔と七人の刺客
第1話
「お帰りなさいませ。アイナ様」
久しぶりの我が家でアイナが見た光景は、屋敷の前で一列に並んで頭を下げている使用人達の姿であった。
その光景に対し、アイナは、不快感を露わにしていた。中央にいる執事の名は、セバスチャン。執事としていかにもな名前である彼が、両サイドに六人のメイドを従えてアイナの前に立っている。
「これはどういう風の吹き回しだ?」
「アイナ様のご活躍を耳にしまして、私共も考えを改めました」
アイナは、疑心の眼差しをセバスチャンに向けていた。
「とは言え、突然過ぎやしないか? こうも突然だと、何か裏があるのではないかと勘繰りたくもなってしまう」
「確かにアイナ様の言う通りではありますが、お隣におりますシンシア同様。我々も心変わりをしたという事です」
「フン。こいつは、私に救援を求めてきたからな。その上で、命を助けてやった。つまり、私に大きな借りがある。お前達とは大分、状況が違う」
セバスチャンに、痛い所を突かれた自覚があったのか、アイナは、少し言い訳がましくシンシアとの状況の違いを語った。
「そういえば、子供達の面倒を頼んでいた者達がいたはずだが――」
「ああ。ギルドから派遣されていた者達の事ですか。あの者達の事であれば、後は、我々が引き継ぐと言って、満額を支払ってお引き取り願いました」
「全く、使用人がやりたい放題だな」
「やりたい放題という意味では、貴方様も同様でございましょう――」
「ほう。本音が出だしたか」
「ちょっと二人共、止めて下さい。セバスさんも姫様と喧嘩する為に戻って来た訳ではないはずでしょう?」
二人の緊迫したやり取りに、シンシアが、慌てて割って入った。
「そうでした。これは、失礼しました。我々をお疑いになる気持ちも分からなくはないですが、アイナ様のご活躍を耳にして、もう暫く、お仕えしても良いのではないかと考えを改めたのも事実。その事については、信じて頂きたく存じます」
「まぁ、いい。身の回りの世話をしてもらえるのであれば有り難い。一部は、子供達に占拠されているとは言え、まだまだ屋敷の部屋は、余っている。お前達の分も何とかなるだろう」
「ありがとうございます」
アイナは、セバスチャンの言葉を鵜呑みにした訳ではなかったが、これ以上の追及は無意味と考え、暫く様子を見る事とした。その為、二人の会話はこれで終わる事となった。
この日以降、アイナ達の生活は、一変した。
子供達も雑用から解放され、遊ぶ時間も増えた。それに加え、アイナの指示で、学びの場も設けられることとなった。
アイナ達は、久しぶりの怠惰な生活を満喫する事となった。
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