まほろば

 目覚めると知らない天井だった。

 少なくともわたしの家ではないし、普通の家にもない天井だ。

 病院でもない限り。


 その後、医者たちとのやり取りを終えた。

 どうやら、出勤途中に嵐で飛んできた物に頭をぶつけて病院に運ばれてきたらしい。

 大した怪我ではなかったが、安静にとことだ。

 わたしは消毒臭い布団で、前に読んだ本に目を通した。

 パチモンの小説ではなく、間違いなくオリジナルの原作だ。

 看護師からは御変わりないですかと尋ねられる。

 わたしは、「どちらが本物かわからない」と伝えた。

「まだ混乱していますので、記憶も時期に思い出しますよ」

 業務を終えて立ち去ろうとする看護師に、わたしは尋ねた。

「君はヤマアラシを知っているかね?」

「大きなハリネズミみたいな生き物ですよね」

「多分、この世界ではな」

 どうやら、ここは元の世界だ。

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異世界嵐山嵐 無駄職人間 @1160484

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