トンカツとラーメン
午前の捜索活動が終わり、ヤマアラシは見つからなかった。
わたしは荒木に勧められて神山大学を訪れていた。学食をおごってくれるそうだ。
トンカツかラーメンどちらが良いと聞かれて、わたしは両方と答えた。
お前は高倉健かと呆れながらも荒木は券売機に紙幣を入れる。
アレはトンカツじゃなくてカツ丼だろ。
わたしは学生に席を取られまいと急いでテーブルを陣取った。
周りを見ると未来のない阿保そうな学生がチラホラいる。異世界モノと洋モノが好きそうなオタクばかりで、オタクに優しいギャルはいない。
後ほど、荒木がトンカツがトッピングされたラーメンをわたしに提供してくれた。
これがまたうまかった。
「真田君は異世界から来たそうだね」
唐突に異世界設定の話題を振られ、わたし自身も自分が異世界人であることを忘れていた。
「この世界はどうだい?」
「どうだいって言われても、前の世界とほぼ似ているとしか言えないですね」
「たとえば」
「前の世界でもラーメンもトンカツもありましたし、嵐山も京都もありました」
「それでも異なるところはあるのでしょ?」
「それは両親がいなかったり、京都が王都になってたり、グンマーが首都で東京がアフリカだったり、恐竜がいるらしいですし、あとオタクに優しいギャルがいない」
「最後のはどこの世界線でもいるわけないでしょ」
オタクに優しいギャルは衰退しました。
「しかし疑問ですね。多少の誤差はあれど、前の世界とほぼ同じ。これを異世界と言えるのでしょうか?」
確かにカクヨムの小説ジャンル規定にある異世界ファンタジーとは違うような気がする。
どちらかといえば現代ファンタジーであろうか?
「先生的にはどう思いますか?」
「私の専攻は天文学なので、文学は専門外ですからわろかりなむ」
荒木はタコそばを啜る。
ちなみにこのタコそばとはタコスそばのことであり、北部大阪の名物料理であるが前世でも知名度が低い。
そしてこの世界ではコロッケそばはないのだ。
「結局は観測者の視点で決まるのではと思うのです」
「観測者の視点?」
いまいち理解できない。
「真田君がこの世界に対して違和感に感じるなら、それは異世界と判断して良いのかもということです」
「今、違和感がありました」
「どんな?」
「違和感に感じるは誤用です。正しくは違和感を覚えるです」
「それは私が間違えただけです」
少なくともトンカツがトッピングされたラーメンを何も思わず食しているメンタルなのだ。そんなわたしが違和感など覚えることなど、あるのだろうか?
いや、ない。
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