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数時間後
夕暮れ前にクレアは現れた。安心してる様子だったのでパーティーも懐中時計も何とも無かったようだ。
彼女から話を聞くと、やはりパーティーでクレアと皇太子の仲を壊そうとする者がいたらしい。
主犯の令嬢は皇太子は自分が好きなのだと、実際にはあり得ない発言や事実とは異なる情報を公の場で広めた…が、それにより皇太子の反感を買い、好かれるどころか嫌われ最後は牢獄に連れていかれたそうだ。
皇太子はクレア一人を想っていたが、見知らぬ令嬢に隙を見せない為にあえて色々許していたらしい。その件に関してクレアは許せなかったと言ったが理由を聞いて納得したそうだ。
クレアに壊れた懐中時計を押し付けたのも彼女、彼女は修理された懐中時計を見て「あり得ない!」と大声を出したらしく、それで皇太子の私物を盗み壊したのがバレたとの事。
「とにかく、あなたのおかげで助かったわ…改めて礼を言わせて」
「これが仕事だからな、大事な時に壊れなくて良かったよ。
とりあえず改めて見たが、新しく壊れた
「ありがとう…」
シェズから懐中時計を受け取ったクレアは幸せそうな表情をした。
本当に婚約者(皇太子)が好きなのか、政略結婚とは言え、流行りモノとは違って2人には愛があった。
たとえ誰かが皇太子に色仕掛けをしても彼が選ぶのはクレア一人、彼女を心から愛してるから…誰も2人の仲は引き裂けないだろう…。
まさか流行りモノのような出来事が身近で起きるとは思ってなかった。
今回の依頼人は皇太子の婚約者であるご令嬢…
午前中に話した通り、クレアは大金を用意した。
しかし依頼費の2倍以上ある…これにはシェズも受け取れない、まさか2倍以上用意してくるとは思ってなかったようだ。
流石皇太子の婚約者であり公爵令嬢…敵に回したら勝ち目は無い、クレアが我が儘で傲慢な令嬢じゃなくてホントに良かった…。
クレアは2倍の依頼費だけでは足りないから受け取って欲しいと言ったが、シェズは受け取れないとハッキリ言った。
言い方は悪いがシェズも金には結構余裕がある、むしろ
長い譲り合いの末、クレアは2倍の依頼費を支払った。
金銭を受け取る時、シェズはクレアにある事を話した。
「社交界で私の事は広めないで欲しい。ひっそりとやっていきたいんだ」
「な、何故?皇族御用達の修理屋になれるのに?」
「それが嫌なんだ。頼む、詳しくは言えないが…あるモノに目をつけられてしまったんだ」
「っ!!魔女狩りの事ね(貴族で魔女と見なされて被害を受けた人もそれなりに居るから危険性はわかるわ…)わかったわ、貴方とお店の事は広めない。でも殿下…皇族には隠しきれないかもしれない」
「権力者には勝てないよなぁ…そこは何とか頑張ってくれ」
「や、やれるところまでやってみるわ」
「頼んだぞ」
クレアが快く引き受けてくれたので、これで貴族社会にシェズの事が必要以上に広がらないだろう。
貴族の依頼人も何人かいるが、皆に広めるなとは強く言っているが…完全には守ってくれないだろう。しかしクレアなら上手く動いてくれるかもしれない。
クレアは皇太子妃になる公爵令嬢だ、下手に動いたら皇族を敵に回してしまうから貴族達は黙ってるしかない。
しかし社交界が良くても皇族はそうはいかない。
どんな手を使ってでもシェズを見つけ出すかもしれない…
クレアの後ろには皇族がいる…しかも直したのは皇太子の
…ホントにクレアに頑張ってもらうしかない…
その後、クレアは店を出て帰って行った。
シェズも店を閉店させ、ウィアの懐中時計の修理を始めたのだった。
★☆★☆★
数時間後 夜
城に戻ったクレアは皇太子と居た。
シェズの事を上手く隠しながら懐中時計の事を話していた。黒みがかった茶色に橙色の瞳をした好青年が皇太子のようだ。
「そうか…君にも迷惑をかけてしまったな、コレを直してくれた人にも礼を言わなくてはな」
「でしたら手紙はどうでしょうか?いきなり殿下が訪れたらあの人も驚いてしまいます…」
「うぅん…そうだな…会って礼を言いたいが、ワタシが変に動いたらその人と店に迷惑をかけてしまうなぁ。では手紙を書くことにしよう」
「でしたら手紙は私が届けますわ。私が行けばあの人も安心してくれます」
「う、うん…頼んだよ…」
「??」
クレアの話を聞き終えた皇太子はどこか不安げだった。
「その、短時間とはいえ…君がそこまで心を許してしまう人が居るとは…
意味があるとは言え、あの者に身を許していたワタシがまだ許せないから…その…」
「まぁ…フフッ ご安心を、この時計を直してくださったのは女性ですわ」
「なっ!? そ、そうか…すまない、勝手に男性と思い込んでいた…」
「わたしが外で男を作ってたと思いで?フフッ あり得ませんわ。わたしが想いを寄せるお相手は殿下だけですから」
「ありがとう…すまない」
「どうしましょうか、皇族の権利等を使ってあの人と店を探しだしたりしないと約束してくれますか?そしたら許してあげます(これは無理があるわよね…流石に殿下でも出来な「約束しよう、君とその人に迷惑をかけないと誓うよ」なっ!」
まさかの答えに驚くクレア、てっきり出来ないと言われると思ったが…そこまで黒い性格ではないようだ。
「本当ですか? いきなり調べたって言いませんか?」
「言わないよ。それに皆が皇族に近づきたいと思ってる訳じゃないと知ってる。コレを直してくれた人もそちら側だ…礼は要らないからそっとしていてくれって事だろう、ならワタシも深く関わらない。お礼の手紙を送るだけにしておくよ」
「ありがとうございます」
どうやら上手く行ったようだ。
クレアの頼みでなくても、彼は動いたかも知れないが…取り敢えず良かった。
その後、皇太子はクレアの部屋を去って廊下を歩いた。
その時…紺色の髪と金色の瞳をし、右耳に赤い水晶の耳飾りを着けた青年と
「こんな時間に何処へ?」
「……」
「…側室の子とは言え、君も皇子だ。皇族として相応しい行動をした方が良い…
…【魔女狩り】なんかと繋がりを作ったりしないでくれ…」
「何をしようが俺の勝手だ 邪魔するな」
「……」
皇太子として、そして兄として心配もしてるようだった…
皇太子は暗い表情をして部屋に戻って行ったのだった。
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