8.魔女とクリスティナ

「シェズ、あなた魔女でしょ?」


「!!…」



 クリスティナはゆっくりとシェズの方を向き直しながら言った。


 何時何処でバレたのかはわからないが…シェズに気付かれずに【鑑定】が出来ても可笑しくない。【鑑定】は彼女の能力なのだから自由自在に使えるはず…



「否定しないの?」


「…そうだと言ったらどうする?」


「ふぅ~ん そうね、嘘でもホントでも魔女狩りには密告かな~」


「何故?」


「一生分の大金ってめっちゃ欲しいけど、人を売ってまで得たいかしら?

 アタシならコツコツ稼いで自分のお金でやりたいこと全部やりたいし」


「……」


「まぁそんな感じ、アタシの事は置いていて、否定しないって事はイエスだけどノーって事?」


「そうだな…強いて言えば…そうなるな」



 まさかの満点回答…ホントに勘が良すぎる…

 彼女が気付いたのなら…もう隠す必要はないだろう。


 クリスティナに何時気付いたのか尋ねると、彼女は笑いながら答えた。



「同行するようになってからかしらね。多分アッシュロードは気付いてないわ。

 なんで妨害魔法使ってるのかなって思ったの。

 妨害魔法って魔術師や魔法使いがサポート魔法モノなんだけど、【認識妨害の妨害】なんて天才しか出来ないった言われてる。

 アタシは魔法よりも拳だから、そこら辺の事は全くわからない。


 でも、シェズが存在を隠そうとしてる事には気付いてた。

 アタシだって【鑑定】持ちってのは命に変えてでも隠し通したいからね、そこはわかるわ」


「魔女狩りに攻撃された時じゃ無いって事か」


「あの光景はこの国じゃよく見る光景になっちゃう、実際にみたの初めてだけど

 でも、シェズは存在を隠してるのにあの魔女狩りは何で気付いたのかなってなった」


「……」



 既に気付いていたのに言わなかったのか…


 確かに人を売ってまで得た大金なんて…場合によってだが嬉しくはないだろう。

 そこはクリスティナの性格の良さだ。


 帝国の闇を知ってるからこその答え…ある意味救われた。



「で、シェズは魔女なの?」


「……」



 レア物を見つけたように目を輝かせながら残酷な質問をしてくる…

 彼女はホントにシェズを魔女狩りに売る気は無いようだ。

 あちらが聖力で攻撃してくる様子は一切無い、無駄な抵抗は止めて全て話すべきだ。


 シェズは魔女の里の事は話さずに説明した。



「確かに、君の言う通り私は魔女だ」


「ホントに!?魔女って老婆とか大人の女の人が思い浮かぶけど、アタシくらいの女の子もいるのね」


「そこは魔女による。だが、君は一つ間違えてる。という魔女は存在しない。魔女に尋ねても誰もわからないはずだ」


「えっ!?どうして?」


「シェズは偽名だ」


「えっ!?」



 ……そこは気付けなかったようだ。

 完全にシェズという魔女だと思っていたようだ。

 確かにシェズは魔女ではあるが、歯車の魔女=修理士のシェズだ、彼女を知る魔女はウィア一人だけだろう。



「じゃ、じゃあ…鑑定しても良い?」


「構わないが…誰にも言うな。良いな?」


「は、はい!!じゃあ失礼して……ギャー!!」



 クリスティナが恐る恐るシェズを鑑定した…が、そこに写し出された結果に悲鳴をあげた。


 レア物大好きなクリスティナらしくない悲鳴だ…



「レ…レア物どうこうじゃないわ!何よコレ!バケモノ!?」


「化物か…よく言われたな」



【『破壊の魔女 ギデオン』

『破壊をもたらす魔女』とも呼ばれている、危険人物 最強の魔女 能力(以下略】



「ア、アタシは…とんでもないのを見つけてしまったわ…パンドラの箱だったのね…」


「嫌になったか?」


「いや…これは隠したくなるわ。ごめんね、問い詰めちゃって…強すぎる力は隠したくなるわよね…」


「まぁ…被害が出ないようにしてるが…」



 そう言いながらシェズは片耳にのみつけられた青い水晶の耳飾りを触った。

 よく見ると金色の文字が刻まれている…



「コレが無いと色々壊してしまう…前に外して風呂に入ったら壁(の一部)を壊してしまった」


「うわぁ…御守りどころか制御装置じゃない…」



 まさに破壊の魔女だ…強すぎる力は強い力を持つ物でないと制御出来ない…



「だが修理を教えてくれた師がコレを着けてくれた」


「細かい作業をするのにチート能力は邪魔でしかないからね…お師匠様すごいね」


「師も魔女だからな。まぁ魔女だとバレるなと言われたがな」


「!!」


「でも、バレたのが君で良かった」


「!! 絶対に誰にも言わないわ!」


「本当か?」


「本当よ!!」

 


 クリスティナは真剣な表情でそう誓った。嘘では無いし、これ以上追及しても同じ答えが返ってくるだけ…

 彼女の覚悟はよくわかった、こちらもそれに答えなくては。



「ありがとう」


「!!」



 その後、クリスティナは帰って行った。


 平和に和解が出来て良かった…

 しかし意外な所でバレてしまった、まさか認識妨害魔法でバレるとは…そこは盲点だった。

 

 クリスティナがアッシュロードに話してくれるそうだが後日連れてくるとも言っていた。



 …このまま何事も起きずに開店出来れば良いが…

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