4.魔女狩り
☆(少しだけ)閲覧注意です
シェズ達が洞窟を出たのは夕暮れ前だった。
満足した彼女達だったが…直後…黒い影がシェズ目掛けて飛んできた。
「……」
「っ!?」
「ヒッ!!」
「っ!……」
流れるように黒いツルハシで攻撃を防いだシェズ、アッシュロードとクリスティナは動揺している。
シェズに攻撃してきたのは黒い衣服を纏った顔がわからない者、何も言わず、ただ剣を構え直して再度シェズに攻撃した。冷静なシェズは黒いツルハシを黒い長剣へと変形させて応戦した。
刃物がぶつかり合う音が響く平原…2人がやめるよう言うが相手は止まらない。
此処で力加減を間違え相手を殺めてしまったら魔女だとバレてしまう可能性がある。
冷静に攻撃を受け流し、敢えて防御に専念するシェズ、対する相手は無我夢中で剣を振っている。
狙いが定まっていない…素人なのかもしれない…いや違う、相手も同じだ…
敢えて素人のように振る舞い、シェズの行動を探ってる、その者の黒いフードと口を覆う黒いマスクの間から…深紅の瞳がシェズを見た。
「!!」
何かを察したシェズは相手の剣を弾いて強制的に戦いをやめさせた。
黒衣の者は剣を構え直したが襲っては来なかった。警戒してるようだ。
「何者だ、一般人を襲うのがお前の仕事か?」
「……」
「シェズ!ソイツは【魔女狩り】よ!」
「魔女狩り!?コイツが!?」
答えない黒衣の者だったが、クリスティナの発言に一瞬だけ反応した。
アッシュロードも驚いた表情をしながらも剣を構えた。
魔女狩り
魔女と思われる異端な女性を尋問し処刑する…理不尽な裁判を行ったり、斬殺…火で炙り生き延びれたら魔女、死んだら人間とか…残酷な方法で尋問と言うなの処刑を行う…
もう一つは…組織の名前だ。
【魔女狩り】という名の組織は上記の事を実行する組織、国に認められてたり非公認だったりと国によって扱いは異なる。
「【魔女狩り】、そんなヤツが何の用だ」
「魔女を処刑する、それだけだ」
「っ!!」
「やめろ!!」
黒衣の者は再びシェズを攻撃しようとしたが、アッシュロードが叫んだ途端黒衣の者の動きが止まった。苦しそうな様子で胸元を押さえている。
どうやらアッシュロードの新たな能力のようだ。
この隙にシェズ達は逃走した。このまま帝都に逃げても捕まるだけ、仕方がない。あそこなら相手は来れない。
そう思った彼女はアッシュロードとクリスティナの手を掴んで異空間に消えた。
黒衣の者は一瞬で消えたシェズ達に驚き、周囲を探したのだった。
★☆★☆★
「わっ!!」
「あで!」
「すまないな、此処なら奴に捕まる事はないだろう」
「いてて…此処は?」
クリスティナが辺りを見渡す、近くに森があり、夕日に照らされ、静かな空間に一軒の横長の家…異空間にあるとは思えないほど自然な場所だ。
「私のアトリエだ。勝手に連れてきてしまったが、此処の事は誰にも話さないように」
「「は、はい!…」」
見えない圧を感じたのか、アッシュロードとクリスティナは何も言わずに返事をしたのだった。
とはいえ、しばらくはヘルゲ平原に行けない、【魔女狩り】とやらに見つかった以上、此処を離れなくては行けない。
…そもそも組織の魔女狩りとは何なのか…アッシュロードも耳にした程度のようで詳しいことは知らないそうだった。
アトリエの一室で集まってクリスティナから話を聞くことにした。
「【魔女狩り】ってのは、名前の通り魔女を狩る、魔女を処刑するのが仕事の奴らの集まりの事よ。被害者は魔女と思われる【女性】、老婆や幼い子供、淑女や主婦…とにかく女性が被害者よ。
前にも言ったけど魔女と聖女は紙一重…聖女の素質を持った女性も命を奪われてる…。
奴らは世界各地にいる…奴らの規則は地域で変わるけど、魔女と思われる異質な人物の処刑…と言う名の性的暴行をする外道もいるわ…
神殿にも居たわ…命は落とさなかったけど、人気の無い所や路地裏に連れ込まれて無理矢理襲われたっていう聖女や女性聖職者がそれなりに居た。その子達に共通してるのは『スタイルが良くて美人』って所、胸糞悪いわよね…最初からソレ目的の奴らに捕まって奴らの捌け口にされちゃっうって…最悪
国が認めてたり認めてなかったりしてるから助けてもくれない…。
一番達が悪いのは、魔女と思われる人物を組織に密告、報告すれば一生分の大金が与えられるってヤツ…一番最低な手段よね…
実際に、悪しき魔女も居て処刑されてるから正義だとは言われてるけど、魔女でもない一般の女性も沢山襲ってるから人々からの信頼は五分五分って感じ…」
「聖女も対象だった…よく無事だったな」
「まぁね、不細工に見える化粧をして偽ってたからね。逆顔面詐欺って奴?アタシはこんな性格だし、美人ではないから、ノーメイクで奴らの隣を歩いてても捕まらなかったわ」
「無茶を…まぁ、確かに良い意味で聖女とは思えないな。活発な女格闘家って感じだ」
「ありがと ただ単にアタシは奴らの好みじゃなかった、それが一番の理由ね」
「だが、一部の人間でお前みたいな活発なの好む奴もいるんだぞ…ただでさえ変態が多い【魔女狩り】だ…ソレが居ても可笑しくねぇぞ」
「友達にも言われたわ…ホント会いたくないわ…マジで…」
「……」
魔女と思われる異質な女性を襲う組織【魔女狩り】、実際に悪しき魔女も倒されてると言う事は…優しき魔女も倒されてしまったと言う事だ。
魔女達が恐れていたのは『処刑の魔女狩り』だけでなく、『組織の魔女狩り』もなのだ…
魔女を密告、報告すれば一生分の大金が与えられる…恐らく組織はソレを大元に動いてる。
中には自分の欲を満たしたいが為だけに魔女でない一般の女性を襲ってる者もいる…
だがそれを聞いても妙だ…
シェズは認識妨害魔法を全体にかけてる。エルフの村長のように、存在を感知、強力な魔力を感じる者じゃない限り魔女とは気付かれない…はずだ…
何故…あの深紅の瞳の魔女狩りの者はシェズに襲いかかってきたんだ…
活発なクリスティナが組織の好みじゃないとはいえ、何の迷いなくシェズ一人に剣を振りかざして来た。
…その者はシェズを…破壊の魔女ギデオンだと見抜いていたのか?…
あり得ない…シェズは、ギデオンは普通の人間ではない…元人間の魔女だ。
この世界には生まれながらの魔女と、人間でありながら魔女の素質を持った人間が生まれる事が有る。
シェズは後者だ、赤ん坊の時は普通の人間だったが人間を辞めて魔女になった。
魔女同士なら「あっ、コイツ魔女だ」とお互いに感知出来る、たとえ認識妨害魔法を使っても…
全てからの認識を妨害する強力な魔法を全身にかけていたのに…あの者は襲いかかって来た…
「でも、何でシェズが狙われたんだ?」
「それが不思議よね、まぁ…襲ってきた奴が外道って訳じゃ無さそうだからマシよ。
確かにシェズは女のアタシから見ても目を奪われる容姿をしてる、黙ってれば美少女なんだけどね…
話を戻して、シェズを襲って来た奴は何かしらの感知が出来るのかもしれない。
噂で聞いたんだけど、魔女狩りの中にエリートチームみたいのがあるらしくて、そのエリート全員が特殊能力持ち、自分で魔女を感知して排除する。さっきの奴、きっとソレに入ってると思う」
「魔女発見器みたいな能力か、それは逃げても無駄だな」
「そうだな、帝都に逃げてもいずれは捕まる。
別に悪行をした訳では無いが、早い内に此処を離れないと行けなくなった」
「そうねぇ まぁ此処は帝都の【東エリア】は冒険者とか荒くれ者で賑わってる場所だからね、物静かな【西エリア】や【南エリア】とかに行けばワンチャン逃げ切れるかも」
「(【西エリア】と【南エリア】か、地図を見ると帝国は左側にある大国、右側にある【ローゼンベルク】からは一番近い帝都、一番遠くなるのは【西エリア】だ。
もともと開店出来る状態になったら離れる予定だったから問題ない、後は安い物件を見つけるだけだ)
なるほど、もとから離れる予定ではあったが、【西エリア】に行けば良いかもしれないって事だな」
「確かに大事になる前に動いた方が良いかもな、オレとクリスティナは此処のギルドに入っちまってるから一緒には行けないが、やれることは全部やる」
「アタシも協力するわ!魔女狩りは一度狙った魔女を仕留めるまで追い続けるからホントに移動した方が良いわ」
「ありがとう」
【ローゼンベルク】のクラウスと言い、【ラナリア帝国】の魔女狩りと言い…認識妨害魔法を使ってるにも関わらず厄介な人間がシェズに引き寄せられてる…
その後、扉をそれぞれの宿屋の部屋に繋げて2人を帰した。
1人になったシェズはアッシュロードの時計の修理を始めたのだった。
修理の半分は終わってきた、あと一つの希少素材を見つけて部品にすれば完成だ。
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