2.元聖女は格闘家?
「アタシは平民の生まれ、貧しくも裕福でもない、普通の家庭の生まれ。
この国では庶民でも聖女、聖職者の素質を持つ人間を見つけて引き入れてる。だから他の国よりも聖女や聖職者が多いの。
人数が多ければランクを付けられる。
優秀な人間は上級の称号を与えられて優遇される。そうでない者達は死に物狂いで働く。
アタシは下級聖女…とは言え、実は力を制御してた」
「実は上級聖女と同じくらいって事か?」
「そうよ、でもアタシは弱いフリをして昇級から逃げてた」
「鑑定持ちのアンタがどうしてそんな事を?」
アッシュロードの質問にクリスティナは笑い泣きしながら答えた。
「だってすっごく退屈なんだもん!アタシはそれが嫌だから聖女を辞めて来たの!
毎日毎日神様にお祈りして、怪我人の治療…は良いとして、監禁する形でずっと勉強、外に出さしてくれない!ご飯も食べれない!寝ることも出来ないくらい働かせられる!ブラックよ!何が人々の為の聖人になれよ!聖職者に寄り添ってよ~!」
笑い泣きしながらグラスを手にしてサイダーを飲んだ。※酒ではない
その後も何杯か注文してグイグイ飲み続けた。※サイダーです
シェズとアッシュロードは戸惑いながらも彼女の話を聞いていた
「はぁ…アタシね、自由になりたかったの。聖女だから皆からチヤホヤされると思ったら大間違い、待ってるのは超ブラックな環境…外に出れるのは上級聖女とか選ばれた子だけ。そんな環境に嫌気がさしたからアタシは力を制御して『下級聖女』を保ち続けた。勿論、鑑定を隠しながらね。コレの存在がバレたら一気に上級聖女まっしぐら…絶対嫌。
下級聖女は沢山いる、アタシが消えても代わりは沢山いるから平気なの。
結果、誰にも怪しまれずに辞めれた。
んで、金稼ぎをしようと酒場で鑑定使ってたら怒られて店主と揉めたって事。
そこからはアッシュロードと出会ってレア物の珍しさのあまり勝手に鑑定しちゃって泣かれちゃったって事」
「なるほど」
「聖女ってそう簡単に辞めれるのかよ…」
「今の時代、魔女が多けらば聖女も沢山いるわ。聖女の代わりの聖女なんて沢山いる、その人一人が消えた所で困ったりはしない…?使い捨ての駒なのよ」
「……」
残酷な聖職者達の環境…それは逃げ出したくなる。クリスティナの場合は退屈すぎる環境に嫌気がさし、刺激を求めて聖女を辞めたが…。
「で、アンタはこれからどうするんだ?オレは冒険者だがシェズは違う、この世界は魔物がうじゃうじゃ居る、生きていけるのか?」
「そこは心配しないで、こう見えて、アタシ格闘術身に付けてるの。魔物と戦うのも慣れてるわ」
「は?」
元聖女の格闘家…これまた聞いたことの無い人材…
聖女と言ったら魔法や杖を使うイメージだが…拳と蹴りで戦う聖女とか聞いたことが無い…
「下級聖女でも時々戦場に出て魔物と戦うの事も有る。アタシは治療魔法を使いたくなかったらか前線に出て魔物と戦ってた」
『オラァァ!退きなさい!!』
『ギャァア!』
「あの魔物を倒した時の快感が堪らないのよね~」
「まぁ、魔物を倒した時の達成感は共感できるが…本当に聖女かよ」
「元聖女よ。何度も言わせないでちょうだい」
「はいはい」
「……」
シェズは何か感じるのか…黙っていた。
「(なるほど、元とはいえ聖女だからこの力を持ってるのか。これは私が魔女だとバレる可能背が高まったな。聖力の耐性を強くしなければな…」
シェズは2人に気付かれぬように手の痛みを抑えていた。どうやら魔女と聖女による聖力と魔力のぶつかり合いが起きてるようだ。
シェズが認識妨害魔法を使ってなかったらクリスティナは重傷を被っていたかもしれない…。
クリスティナが苦しんでる様子は一切無い、聖女でありながら拳と蹴りで戦う格闘家…彼女なら生きていける気がする。
「それで、君はこれからどうする?ギルドで冒険者登録しないと冒険者にはなれないぞ」
「そうねぇ、冒険者も良いかもしれない。でもシェズみたいのんびりした生活も良いなって思ってる。
…よし、鑑定はお金にならないってわかったし、アタシも冒険者になろうかな。アッシュロード、一緒に来てよ」
「わかったよ。で、話し変えて悪い、オレの能力【革命の戦旗】って何なのか教えてくれないか?」
「そうよね、さっきはザックリとした説明だったからね。
まず、さっき話した通り自身の防御力を代償に仲間の全能力の70%上昇させる能力。
ただし、仲間の体力とかは回復しない、本当にパワーアップさせるだけ。
使い方が難しいから【自分に付与】しにくい、コツを掴めば、自分の防御力を下げる代わりに自分もめっちゃ強くなるわ。
発動条件は、アッシュロードが仲間を励ます言葉を発した時や仲間を鼓舞する時、戦闘中に(無意識に)発動しやすいサポートタイプの能力、使うのが魔力じゃなくてアッシュロードの防御力だから魔力切れが起きる事も無い。
効果時間は約5分くらい、5分後に効果が切れたら再度使うことが出来る。
ただし一度目よりも使う防御力が多くなるから、気を付けて使いなさい」
「なるほど…本当にサポートタイプだな。仲間を鼓舞してパワーアップさせる…。オレがクソザコだったのは使いこなせてなかったからか」
「かつて大きな戦争があった時に剣ではなく旗を持って戦士を鼓舞した戦士がいたそうよ。結構有名な話だから覚えておいて損は無いと思うわ。
アナタの能力もその人が由来、だから革命の戦旗なのよ」
「ありがとう、それでオレ自身に付与するにはどうすれば良いんだ?」
「そうね…それはアナタ次第なのよね~ うぅん、アナタが無意識に使ってた時はどんな感じだった?」
「仲間を助けたい、魔物に勝ちたいって思ってたな」
「なるほど、仲間を優先していたのね。それなら自身に付与は付かないわね。
仲間を守りたいから自分に力を!って意識すれば上手く行くかもね、ただし本当に難しいから特訓が必要よ。
基本サポートタイプって自分よりも仲間のパワーアップを優先する系だから自分には付きにくい、自分にも効果が付くように能力をコントロールしないと付かない、だから難しいって言われてるのよ」
「なるほどなぁ…納得だ」
その後もアッシュロードとクリスティナは色々話していた。
シェズは2人に明日の事と別れを告げてアトリエに帰って言った。
★☆★☆
アトリエに戻ったシェズはアッシュロードの懐中時計を取り出した。
コレを直すための希少素材はまだ足りない。しかしどれも近場で入手出来るモノ、今日は採取せず部品を作る事にした。
【
まずは歯車、適した大きさになるよう切断機で切り、精密ヤスリで形を作って研磨機で磨いて行く。
とても脆くて割れやすいので力加減しなくてはいけない…ガルダクスよりも難しい、あれはミスしても調節が出来るがミトラフィアは一発勝負だ。
採った時からヒビが入ってたモノは歯車には出来ない、装飾が出来るか出来ないかだ…
素材が底をついてから1ヵ月以上経った今、だいぶ集まってきた。
アッシュロードの依頼が終わる頃には修理屋を開ける事が出来るかもしれない。
素材集めは定期的にやらないと本当に痛い目に合う…この身で体験したあの絶望…もう二度と味わいたくない。
この日の夜、魔力切れを起こす事も、眼を失う事もなく無事に作業を終えられた。
壊れた懐中時計の地板には金色に染色されたミトラフィアの歯車がはめられていた。完成はまだまだ先だが、ちょっとずつ進んでるようだった。
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