第2章

1.鑑定持ちの元聖女

 翌日

 アッシュロードが噴水広場に向かっていた時だった。


 酒場から何やら揉めてる声が聞こえた。



「困るよお客さん。内は酒を飲む為の場所なんだよ。そういうのはちゃんとした所でやってくれ」


「え~!!そう言われてもわからないわよ~!」


「冒険者ギルド、教会や神殿とかだ。はそういう人間しか使えるヤツだ」


「だから~!それが嫌だから辞めて来たんだし~!」


「はぁ…困ったなぁ…」



 何やら酒場の店主と金髪の若い女性が揉めてるようだった。

 若い女性は痺れを切らしたのか、出入口に向かって歩きだした。



「もう良いわ!教会の人間に告げ口しても無駄だから!!アタシは絶対に戻らないから!」



 そう言って扉をバンッ!と勢いよく閉めたのだった。



「はぁ…何だったんだ…」


「あの娘も訳有りってか?」


「それっぽいよね…」



 酒場にいた人々は気まずそうな表情をしていたのだった。


 酒場を出た少女はアッシュロードを見つけた。

 彼も見ていたのがバレてしまい、気まずそうな表情をした。



「あらアナタ、結構わね」


「へっ?」



 アッシュロードを見た少女は目付きを変えた。何やら珍しいモノを見つけたかのような様子でジロジロと見ている。


 彼女をよく見ると純白の衣と金色の装飾…聖女が着るような衣服を着ていた。


 彼をジロジロと見る少女、恥ずかしさのあまりアッシュロードは彼女を噴水広場に連れていった。

 シェズはまだ来てなかった。



 再び金髪の少女はアッシュロードをジロジロと見ると口を開いた。



「相当苦労したんじゃない~?」


「まぁ…それなりに…」


「使い方、解ってなかったでしょ?」


「へ?使い方?」


「もったいない~ アタシが見てあげよっか?」


「さっきから何を言ってんだ!?」


「そう警戒しないでよ~ お金も取らないわ、サービスよ。見せてもらったし」


「レア物?」


 少女はアッシュロードにてを翳して何かを詠唱した。

 突如彼の体が光だした。不思議と疲れが消え、何かが取られるような感覚がした…

 しばらくすると光は消え、取られたモノも元に戻っていた。


 アッシュロードは少女を見た。彼女は目を見開いて驚いているようだった。



「やっぱり【超レア能力】じゃん!勇者がそっち系とか珍しい~」


「能力?そっち系?何を言ってるんだよ…」


「あっごめんごめん、つい興奮しちゃって勝手に【鑑定】しちゃった」


「はぁ…気をつけ…待て、今なんて言った?」


「勝手に【鑑定】しちゃってゴメンね」


「鑑定が使えるのか!?」



 まさかの人物だった。鑑定してもらう為に何度も神殿を訪れたが出来ずに終わっていた…。それが目の前の少女一人で解決してしまった。

 しかし彼女の言うレア物、そっち系とは何なのか…



「そっち系の勇者って滅多にいないのよ。だから思わず興奮しちゃって…!?」


「教えてくれ!オレは何の力があるんだ?!」


「お、落ち着いて、今教えるわよ」


「おっと…すまねぇ」


「アタシも悪かったわよ、それであなたの能力は…珍しいヤツよ

【革命の戦旗】自身の防御力を使って仲間の全能力を70%近く上昇させるサポート型の能力よ」


「革命の戦旗?サポート型?つまり…オレがクソザコで仲間がめっちゃ強かったのはそれのせいか?」


「事情はわからないけどそうかもね、基本勇者って攻撃型が多いのだけど、あなたみたいな仲間を鼓舞してサポートする裏方タイプって滅多にいないのよ」


「はっ!」


『実はお前と組んでから俺とコイツ…めっちゃ力が付いたんだ。攻撃力はもちろん、体力や防御力、更には急所が狙いやすくなってる…これはただ事じゃない。

 これまで様々な鍛練をしてきたがどれもイマイチだった、だがお前が来ただけで引くほどパワーアップしてるんだ』


『あっ!やっぱりお前も感じてた?!だよな!?アッシュさん来てからマジで動きやすくなったよな!?』



 此処で出会った2人の青年冒険者達に言われた事を思い出した。あの2人は様々なトレーニングをしても全く強くならなかったと言ったが、アッシュロードが来たら一気にパワーアップしたと…



 名前も知らない【鑑定】持ちの少女、きっかけをくれた2人に感謝しきれない…静かに涙を流すアッシュロード…



「ちょ、ちょっと!泣かないでよ~」


「ありがとう…本当に…」


「もう…あっ」


「?…あっ」


「失礼、邪魔したな」



 感動的なやり取りをしていた時に…シェズがやって来たが…謝罪して去って行った。

 シェズを見た2人は顔を青くして彼女を追いかけた。



「待ってよお姉さん!誤解よ!恋人ですらないわ!」

「待ってくれシェズ! 今日初めて会った同士なんだ!」

「気にするな。今日は素材集めに行かないと言いに来ただけだ」


「「でも話を聞いてぇぇ!!」」



 とんでもない速さで歩くシェズをダッシュで追いかける2人だった。



 ★☆★☆

 その後カフェにて  昼頃



「改めまして、アタシは『クリスティナ・プルーム』、【鑑定】持ちの聖女よ」


「聖女!?」


「元よ!元!聖女って今じゃ貴重な存在じゃないわ。アタシは聖女でも『下級聖女』っていう下級ランクのよ。で2人は?」


「…シェズ=アルスディア、修理士をしてる」


「初心者冒険者のアッシュロードだ」


「シェズさんとアッシュロードさんね」


「シェズで良い」


「わかったわ」



 防音結界を張ってるので会話は聞かれない。



「アタシは聖女を辞めたの」


「何故?聖女ならそれなりに良い生活が出来るのでは?」


「まぁね…でも退屈なのよ」


「退屈?」


「そうよ、退屈…」



 クリスティナはアッシュロードを見ながら話を続けた。



「アタシは普通の家庭の生まれ、庶民よ。

 今の時代、魔女が多く存在するのと同じで聖女も沢山存在してる。

 でも知ってる?聖女と魔女は紙一重よ…こちらで聖女でも敵国からしたら魔女なんですって…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る