5.歯車の魔女

 ★ 評価 レビューありがとうございます!

 ゆっくり更新ですがこれからもよろしくお願いします!




 アッシュロードが追放され普通の冒険者に戻ってから数日後


 緑豊かな平原をアッシュロードと2人の冒険者が駆けていた。



「はぁ…はぁ、ヤバい!逃げろ!」


「ひぃぃ!こんなの聞いてないっすよ~!」


「【カルド平原】に【ワイバーン】とかあり得ないだろぉ!!此処は初心者向けのエリアだぞ!!」


「ギャアアアア!!」


「「ヒィィ!!」」


「帝都に戻ろう!魔物は帝都には入れないから!」


「おぅ!」

「うっす!」



 赤いワイバーンに襲われながらも彼ら帝都に戻って行った。

 そんな彼らの様子を離れた所から見ていたシェズ、彼女の足元には動かないワイバーンが何匹も積み重なっていた。

 どれも動かない、見た目に傷は無いが体内を殺られたようだ。



「確かに此処は初心者向けのエリアみたいだな。ワイバーンを除けばあちこちにいる魔物はどれも低ランク、私が小石を軽く蹴ってぶつけただけで倒れる魔物ばかりだし」※シェズが最強チートだから…


 大量のワイバーンを倒したシェズに傷は一切ない。全て無傷で倒したのだ…強すぎる…まさに【破壊をもたらす魔女 ギデオン】だ…。



「とにかく、此処でのガルダクスはそこそこ集まった。次のエリアに行くか。此処でコイツらを解体しても怪しまれるだけだし」



 魔法の鞄に大量のワイバーンを吸収し、彼女は森に向かったのだった。



 ★☆★☆★

 時刻は昼過ぎ 

 1本の細長い菓子を口にしながら森を歩いてるシェズ、

 菓子に見えるが回復アイテムだ…

 回復薬と魔力回復用のポーションを組み合わせ、細長い棒状のスナック菓子にしただけ、つまり味は回復薬とポーションと同じで苦くて美味しく無い…作り手による。


 ちなみにこれは【魔女専用の回復アイテム】

 クッキーだったり飴玉だったり、なんならケーキの形にする事も可能だが…味は回復薬激マズ



 今いる森【ヘルゲの森】には神秘の存在がいるらしい。エルフやドワーフ、妖精、沢山の動物等がいる神秘の森だが、生息してる魔物は狂暴

 ガルド平原が初心者向けなら、此処は上級者向け。中級者だと生きて帰る事が出来るか出来ないかとか…



 そんな神秘の森に魔女が平然と歩いてる。当然動物や妖精達は警戒し、怯えてるモノもいる。


 しかしこの魔女の目的は彼らを傷付ける事ではなく、森の奥にある小さな洞窟だ。国が所持してる土地なので森の民の許可はいらない。

 その洞窟にはお目当てのガルダクスが沢山ある。オマケに今日全て採り尽くしても明日にはまた採れる状態になってる…。


 そこを何日か訪れ続ければ大量に採れるはずだ。


 顔には出してないがワクワクした様子で洞窟に向かってる時だった。



「止まれ!」


「!!」



 …当然森の住民は魔女を野放しにはしない、無害とは言え、今の時代でも魔女は悪しき存在でもある。いくら法が緩んだとは言え、悪しき魔女が多く、善の魔女は少ない…



 菓子を食べ終えたシェズは声の主の方を見た。気付かない間に前後が塞がれていた、目の前にはエルフの青年が弓矢を構えており、彼の後ろに数名のエルフの姿もあった。またシェズの後ろには警戒している動物達が道を塞いでいた。


 リーダーと思われる男は弓矢を構えながら近付きシェズに話しかけた。



「魔女よ、ニンゲンにはバレないだろうが、この森の住民にはその細工は効かないぞ」


「細工…私の認識妨害魔法の事を言ってるのか」


「認識妨害だと?何を企んでる」


「この森の奥にある洞窟に用がある、こう見えて職人なんだ。納得しないのなら監視でもすれば良い、私は構わない」


「ハッ 口では何とも言える。今すぐ化けの皮を剥がしてやる!」


 男が矢に光魔法を溜めて放とうとした時だった。



「止せ!!その者に手を出してはならん!!」


「「!?!?」」



 突如背の低い老人のエルフが間に入ってきた。

 リーダーの男に止めるよう言い、シェズの方を向いて頭を下げた。



「ご機嫌麗しゅう魔女殿、ワシはエルフの村の長だ。この度は民がご無礼を」


「長!魔女相手に頭を下げてはいけません!我らが魔女以下と言ってるのと同じです!」


「黙れ!お前は大罪を犯す手前だったのだぞ!恥を知れ!」


「!?!?」



 どうやら話が通じる相手のようだ。村長むらおさがエルフ達に帰るよう告げ、弓矢を構えていた男のみ残して話を続けた。



「このような場で話すことではないが、魔女殿を村に入れるのは危険じゃ。この場で話させてほしい」


「構わない、先程も彼に言ったが私は森の奥にある洞窟に用がある、そこで採れるモノが必要でな」


「ガルダクスですか、対して珍しくもない鉱石ですが…」


「こう見えて職人なんだ、その鉱石がどうしても必要でな、鉱石採掘だけがしたい、森には危害は加えないと約束しよう」


「ははぁ~ かしこまりました。奥の洞窟は帝国の所有地モノです。我らが拒否する権利はございません。

 差し出がましいですが、魔女殿の名をお聞きしても」


「そうだな…」



 今のシェズには【○○の魔女】という二つ名は無い。機械と時計の魔女ウィアの弟子であり、時計と魔法具専門の修理士なので…それっぽい二つ名にした。



「【歯車の魔女】シェズ=アルスディアだ」


「歯車の…魔女…」


「魔女シェズ殿、森の民を代表して歓迎いたします。我らと他の種族も貴女に危害を加えないと約束いたします」


「感謝する」



 問題が起きること無く洞窟を訪れる事が出来た。ガルダクスが沢山採れるだろう。



 エルフの長が森を代表して約束してくれたとは言え、その場にいなかった精霊やドワーフは危害は加えて来ないが遠目から警戒している。


 それにしても、あの長は良い眼をしていた。

 誰よりも早くシェズの恐ろしさに気付き、争いを止めさせた。

 見た目からは感じとる事は出来ず、破壊をもたらす魔女ギデオンの名に相応しい力を宿しているシェズ…彼女に喧嘩を売ったら最期だと思った方が良い。




 ガルダクスのある洞窟に辿り着くと、直ぐ様ツルハシとその他の道具を取り出して中にある全てのガルダクスを採掘したのだった。

 魔女と修理士(職人)の差が激しすぎる…



 それからの事、シェズが森を歩いてるとあのエルフの男が怯えながら頭を下げるようになった。

 あの後長から色々聞いたのだろう…

 彼女がこの世で最も恐ろしい危険人物とでも…

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