1部 第1章 素材収集

1.時計と魔法具専門の修理士

 ※鉱石、植物等は全て架空のモノです!


 あれから2年後、大陸の隅にある魔法使いの国【ローゼンベルク】の片隅、街中に今にも潰れそうな店が有った。

 ほとんどの人々は気味が悪いと感じ誰も近づかないが…一部の人間は訪れていた。



「こんにちは~魔法具の修理を専門にしてると聞いたのですが~」


「ん?少しお待ちを」


「!?!」


 ローブを被った男が店に入り、目にしたのは18歳くらいの若い女性だった。

 紺色の髪に金色の瞳、片耳に青い水晶の耳飾りをした美少女だ…とても修理士には見えない。



「え、えっと…魔法具の修理をお願いしたいのですが…修理士の方はいらっしゃいますか?」


「自分が修理士だ」


「えっ!?お、お嬢さんが!?」


「何か問題が?まぁ、不安がられてもしょうがない。モノを見せてくれ、あとコレに記入を。魔法具と時計では費用と時間が異なるよ」


「は、はい!」



 男性客は見た目と口調が合わない目の前の美少女を少し警戒しながらも紙に記入をした。



「ふむ、ローゼンベルクの宮廷魔法師か。そうなると短期間での修理が希望か。わかった、では期間は2週間後、そして費用は後払いで良いかな?」


「に、2週間で修理が出来ちゃうのですか!?王都のギルドに依頼したら3ヵ月はかかるって言われたんですよ!?ぼったくりですか!?」


「うちの店、分かってて来たんじゃないのか?お客さん、ここは【時計と魔法具専門の修理屋】だ。そこらの修理屋よりも魔法具を触ってきてる。自惚れではないよ。

 それと代用品も渡しておこう、モノはお客さんのと同じ種類のだから使い方は困らないだろう。一応ボタンを押せば何時でも私の店に連絡が出来る。どうしても早めに仕上げて欲しい時に連絡してくれ」


「は、はい…。それにしても、こんなに神対応なのに…何で店はこんなにボロボロなんですか?」


「安い物件が此処しか無かったんだ。ちなみに、近いうちに此処を離れる予定だ。3週間後かな、そろそろ潮時だからね…」


「えっ!?って事は自分が最後の客って事ですか!?」


「それは分からないよ、急に依頼が入れば長居するし、目的地が見つからないと移動も出来ないからな」


「ひぇ~ 修理士さん、訳有りなんですか?」


「追われてる身ではないから安心を、まぁ…訳有りなのは確かだな。

 さて、手続きはこれで終わりだ。あとは代用品の操作確認だ」


「ひぇ…(入って数秒で手続きが終わってしまった…この美少女修理士は何者なんだ!?絶対普通の修理士じゃないよね!?)」



 男性客は修理士から代用品を受けとり、操作確認をして店を出ていった。

 次に彼が来るのは2週間後だ。それまでに依頼のモノを仕上げなくては。



 修理士の名は『シェズ=アルスディア』、かつてギデオンという名前の魔女だった。

 破壊をもたらす魔女、破壊の魔女ギデオン等と魔女達に呼ばれていた…生まれた頃から魔女の素質を持っていた。

 魔女の里の入口に捨てられていた赤ん坊だ…魔女に育てられ魔女の里で育った。


 幼い子供ながらに宿っていた力が強すぎて里の魔女達を困らせていたが、この技術の師である機械と時計の魔女ウィアのおかげで力の調整に成功した。


 追放された後、シェズはギデオンの名を捨て、シェズ=アルスディアとなり店と収入を得た。

 金色の瞳はよく人間以外の種族の象徴とも言われているが、この世界では普通、人間でもいるので怪しまれる事はない。


 そして先程の男性魔法師のように、シェズの店に訪れるのが魔法使いや魔法具師だ。時々普通の時計の依頼も来るが、ほとんどが魔法具の依頼だ。

 幸いローゼンベルクが魔法使いの国であったから店も怪しまれる事なく得られたし、収入も簡単に手に入った。

 実際、この国にはシェズの店以外にも魔法具の修理屋は沢山ある。しかし何処も費用がバカ高く、修理期間も長かったり、後から知らされるとか…基本は修理が終わった後に連絡する

 しかしシェズの場合は修理を依頼した当日に知らされる、いくら天才でも短期間で修理は無理なはずだ…


 そもそも修理は短期間で出来ない…なのに何故彼女は出来るのか…


 何故なら……



 シェズは依頼された腕輪型の魔法具を手にして工場に戻った。

 そして…隣の扉を開けると…



 素材と部品でいっぱいの部屋が有ったのだった…。


 そう、修理に使う部品は沢山ある。だからすぐに直せるし調節も出来る。

 そもそも、シェズの扱う部品は全てシェズ本人が素材を作ってる、商人から取り寄せる必要は無いが、その材料が底をついたらヤバい…



「えっと、このタイプは『プロファ岩』の部品が適合してるから…あった。

 次に…ん?此処も壊れてるな、直しておこう」



 ☆プロファがん…滑らかな肌触りで主に腕輪の材料として扱われてる岩石。もとから肌触りが良いので加工をしなくても良い。加工をしてしまうと岩の素質がダメになるとも言われている。

 割れにくいが攻撃アイテムにはならない。

 素材は安い、鉱山からも採れる。



「魔法具だから魔鉱石が必要だな、同じ色のは有ったかな…あった」



 小さいモノから大きなモノまでの魔鉱石を取り出した。


 ☆魔鉱石 魔力が宿った鉱石

 人口魔鉱石も存在してるが、鉱山から採れる天然の魔鉱石の方が効果が良い。

 店では高額に扱われているので鉱山からの採掘の方が安いが…モノによる。


 シェズの扱う魔鉱石は人口タイプだが、効果は天然モノ以上…だって魔女が作った魔鉱石だから。


 しかし効果が良すぎると逆に怪しまれるので天然モノと同じ効果になるように調節している。


 その後も必要な素材を揃えて腕輪の魔法具の修理に取り掛かった。



 1日で出来る修理には限りがある。

 素材から部品を作り出すのにかなり体力と魔力を使う、たとえ天才で最強魔女のシェズでもコレには限界がある。

 シェズがウィアに渡された懐中時計をまだ直せていないのが何よりの証拠だ。 

 魔女の懐中時計型の魔法具なんて…絶対に短期間で終わらない…6年後経っても半分も行ってないのだから…


 彼女は細かい作業が苦手なタイプではない、本当に難しいのだ。

 大きな歯車や部品を作るだけで1日を終えてしまう程…シェズがこうなのに機械と時計の魔女ウィアが凄いとわかる…。


 気絶はしない、だが魔力を多く失うのは魔女にとってかなり危険な状態。そうなったら昼間でも店を閉めて横になるしかない。

 魔女としては一人前だが、修理士はまだまだ見習い以下だ。



 限界が来る前に修理を少しずつやっていき、自分で決めたノルマを超えたら部品を作る作業に移り、それでも体力と魔力があったらウィアの懐中時計を修理する…これがシェズの1日だ。


 そしてこの日の夜、客の魔法具の修理、部品作りを区切りが良いところまで終えて入浴して就寝した。


 そもそも、追放された前まで男性口調でなかったシェズことギデオンが…何故男性口調になったのだろう…

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