凍死
汐海有真(白木犀)
凍死
雪の日にやさしく手首を切り刻むショートケーキは涙に似ている
幸せは絶望の白誰にでも垂れて揺らめく蜘蛛糸のよう
穏やかなねむりに落ちる夢を見てマトリョーシカの永遠だった
湖の静まり返った水面を揺らすことなく死にたい早朝
あたらしい鏡が怖いいつだって映るわたしは目が二個だから
ぼとぼとと椿の花が落ちていき葉だけが残るいつかの地球
ふうわりと湯気の漂うレモンティー濁りを帯びた紅い液面
赤色の空がだんだんと段だんと段々と来るやめて 許して
音楽に悲鳴が混ざるほっそりとした青い爪の女のひとだ
煌々と月がわたしを照らすとき見られているの すべて すべてを
急かされてバターサンドを解体しその内臓を整列させる
野良猫が気付けばどんどん増えていくでもみんな黒、胡麻 ほくろ 髪
幽霊が問う(どうしたら死ねますか?)幽霊が言う(笑うといいよ)
諦めて 霜焼けの指が痒くて数多の虫が張り付いていて
おねえちゃんつららがすごくきれいだよほらおねえちゃんのさこつのつらら!
大丈夫遍く身体が凍っても心はずっと あたたかいから?
肉塊をスノードームに閉じ込めるただそれだけでうつくしくなる
霙降る世界でひとり笑ってたべちゃべちゃの顔ぐちゃぐちゃの声
澄み渡る宇宙に溺れてしまいたい殺したい、ああ すべての星を!
目が覚めるそこにあるのは楽園で よかったと言い たくさん 泣いた
凍死 汐海有真(白木犀) @tea_olive
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