第20話 コンビニ
半ば引きずり込む形でフウカさんをコンビニの中に入れると、フウカさんはまず店員さんを見て驚いた。
「あの鮮やかな青の服はどうやって作ったのですか?」
「え?」
このコンビニは青と白の2本線のコンビニ。
看板には、牛乳瓶のようなマークがある青いコンビニだ。
そのコンビニの店員さんの服を見て、フウカさんはかなり興味を惹かれた様子。
「どうやって作ってる、か…普通に染めてるんじゃないかな?」
「あんな鮮やかな青の染料…一体どんな素材を使っているのですか?」
「う〜ん…流石にそれはわかんないかな」
色々な布製品の染色に使われる染料が何から作られているのか?
よくよく考えてみたら、全然知らない。
よくわからないまま、なんかキレイだから使っている。
別に悪いものじゃないんだろうけど…実際に、本当は悪いもので健康被害を受けたって話は聞いたことがある。
そう考えると、たまには調べるのも良いかも…
「随分と涼し気な服じゃない…一体どんな繊維を使っておるのじゃ?」
「う〜ん、あの服を持ってないので知りませんけど、多分コットンかポリエステル、もしくはナイロンかな?」
「…全くわからん。流石は人間界じゃ」
「あはは…」
たかが服のことでこんなに根掘り葉掘り聞かれるとは…
この調子じゃ、コンビニを出る頃にはどうなっている事やら。
そんな事を考えつつ、雑誌コーナーの前を通る。
「サユリさん、サユリさん!これは何ですか?」
「雑誌だね。後は新聞……瓦版とか風説書きって言えばわかるかな?」
「それがこんなところに?」
「うん。コンビニだからね」
サユリさんはやっぱり雑誌に目をつけた、後はこっそり話を聞いていた木仙さんが新聞を手に取っている。
「なるほどのぉ…それで、コレは何じゃ?」
「あ〜…それも雑誌ですね」
「こんな淫らな格好の写真を表紙に載せておるのにか?」
「まあ…水着と言って、泳ぐ時につける衣類なので多分問題ありません」
木仙さんが新聞の次に目をつけたのは、よくある水着の女性の表紙の雑誌。
買ったことないし、中身を見たこともないのでどんなのか知らないけれど…グラビアアイドルとかの写真集ではないはず。
多分、きっと、そうだと思う。
「ま、まあ、雑誌コーナーはこれくらいにして…!」
「じゃあ次はこっちですね!コレは何ですか?」
「日用品売り場だね。基本使い捨ての物を売ってる場所」
「へぇ〜?興味深いものばかりですね」
「フウカさんから見れば、多分全部が目新しいものだと思うよ。で、私は本題に入りたいんだけど…」
「もう少しだけ見させてください!」
いちいち説明していると埒が明かない。
早く食べ物を買ってコンビニから出ようとするけれど…初めて見るものばかりの日用品売り場に、フウカさんは釘付け。
木仙さんもあまり見たことがないのか、まじまじと売り場を見つめている。
…コレ、1時間くらい滞在することになるんじゃないかな?
うう、店員さんの目が痛い…
そうして日用品売り場を色々と物色すること10分くらい。
ようやく見終わったフウカさん達は、奥にある飲み物の冷蔵ケースに興味を持った。
「さっきから気になっておったが…コレは何じゃ?」
「この中に飲み物が入っているんです。中は常に冷たく保たれていて、いつでも冷たい飲み物が飲めるんですよ」
「ほぉ?冷たい飲み物か…しかも、酒も売っておるではないか」
「お酒ですか。いいですね~」
お酒がある事に気付いて、フウカさんも近付いてくる。
「これが人間界のお酒…とても綺麗ですね?」
「人間界のモノは大体見た目にこだわってるからね。さっき木仙さんが見せてくれた小判を使えばこのケースのお酒は全部買えるくらいには安いけど」
「安いお酒なんですか?」
「まあ、庶民が簡単に使える店に売られているお店のお酒だから…」
ものにもよるけど、コンビニのお酒は小学生でも買えるくらい安い。
なんだったら日本のお酒はとっても安い。
なんでそんなに安く売りたいのか知らないけど、まあとにかく安い。
でも、動画で海外の人が日本のお酒を飲んでいる姿を見ていると、安いから不味いってわけではないみたい。
だから買ってもいいけど…
「買うなら一つにしてね?私そんなにたくさんお金持ってないから」
「サユリさんは一般的な平民出身ですもんね」
「今も平民だけどね」
「できる限り買うものは少なくします。…なのでこれとこれとこれを買ってください!」
「…話聞いてた?」
フウカさんは平気でかごに缶のお酒を三つ入れてきた。
出来る限り買わないようにするとは一体…?
あと木仙さん?
あなた何しれっとおつまみをポコジャガかごに入れてるの?
絶対知ってるよね?
人間界のおいしい食べ物知ってるね?
しかも結構な額になりそうだし。
このままだと不味い…買えなくなっちゃう。
「ごめんフウカさん。次はちゃんとお金を用意するから、今はこれだけで…」
「分かりました。ではもう少しだけ店内を回ってから…」
「はい、すぐにお会計するよ。それに、終ったらすぐ出る!!」
「ちょっ!サユリさん!」
私は二人を置いてレジに向かうと、すぐに会計を終わらせて2人を連れてコンビニを出た。
そして、すっかり少なくなってしまったスマホの電子マネーを見て、ちょっとガッカリしていたのは、2人には内緒。
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