第332話 柱の5階層

[まえがき]

エドモンドの『脱! 素人童貞』をコメントで祝っていただきありがとうございます。

100万字を費やした脱素人童貞物語。完結までの残りの数話、蛇足のようなものですが最後までよろしくお願いします。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 かねてより考えていたのだが、バトンがレベルアップしたいま、柱の5階層のエアロックが開くような気がしている。それで今回新婚旅行?を兼ねてサクラダダンジョンに潜ろうと思ったわけだ。


 朝方ツェントルムから帰っていく来賓を見送った後、俺たちを乗せたウーマはツェントルムを出発して昼過ぎにサクラダの門の前に到着した。


 そこでウーマから降りた俺たちは門衛の最敬礼の中サクラダの街の中に入って行き、ダンジョンギルドを目指した。


 俺を先頭に完全武装の俺たちが大通りを歩いていると、誰が見ても俺たち***なので全員道を空けてくれる。

 非常に気持ちがいい。


 市内であまり時間を取っているとサクラダの代官があいさつにやって来るかもしれないので急ぎ足でダンジョンギルドの中に入って行き、ホールの中にいたダンジョンワーカーたちの注目を集めながらもそのまま渦の中に入っていった。


 道中何事もなく、5時間半かけて13階層に到着した。

 キューブの中のゴミもだいぶ溜まっていたので、ウーマに乗り込む前に処分のためキューブから出したら小山ができた。小山の中には金の御子の頭と胴体も入っている。



 ゴミを吐き出してスッキリしてウーマに乗り込んだ。時刻は午後7時。


「随分ため込んでたのね」

「キューブの中が狭くなった感じはなかったんだけどな」

「キューブって使えば使うほど大きくなるみたいよね」

「俺の場合、中身が一杯になった感じがしたことないからそういった実感はなかったけど、たぶんそうなんだろう」


「まあ、エドだもんね。それじゃあ、わたしたち先にお風呂に入るわね。なるべく早く出るから」

 あれ? 俺と一緒ではない口ぶりなのだが?

 夕食が先、お風呂? それとも、わ・た・し? じゃなかったのか!?


 いいけど。

 それじゃあ奥さまと、ケイちゃんとドーラがお風呂に入っている間にわたくしとペラとで夕食の準備でもしましょうか。夕食は少し遅くなるけれど、大したことはないだろう。


 女子たちが風呂から上がって、俺だけ風呂に入り早めに上がった。

 すぐに料理と飲み物をテーブルの上に並べて。

「「いただきます!」」


 夕食の時間はだいぶ遅くなって、デザートの紅茶ゼリーを食べて、後片付けが終わったら午後9時だった。これから頑張るぞー!


 と、思ったのだがお腹いっぱいで眠くなったそうです。



 翌日。


 ウーマでの移動中は基本的にはなにもすることはない。新婚なのですることは一つだけあるのだがさすがにはばかられる。

 なので、ペラを助手として料理を朝から頑張った。


 途中ワイバーンの襲撃もなく午後8時。ウーマは柱に到着した。一度ウーマを降りて柱の壁を抜けて、再度ウーマに乗り込んでまっすぐ柱の中心部に進んでいった。途中で目に着いたバナナなどはもちろん回収している。


 エリカも積極的に回収しようとしていたが、収納の射程が俺の半分程度しかないようで少し苦戦していた。なので俺は目に付く果物のうち近くはとらないように気を遣った。できる男は気配りもできるのだ。


 1時間後。1階層の真ん中の空き地に出て、空き地の真ん中に立つ黒い四阿の前でウーマを止めた。


 ウーマから降りて四阿の中に入ってみたが、台座の上に女神像はなかった。それでも一応めいめいで拝んでおいた。


 ウーマに戻って柱の反対側の階段まで1時間かけて進み、そこでウーマを止めておいた。外は明るいが時刻は午後10時なので階段を上るのは明日の朝だ。



 翌朝。

 朝食を終え、少し休んでから柱の壁に沿った階段を上り始めた。もちろんウーマはキューブの中だ。

 久しぶりの階段だったが疲れることもなく、30分ほどで階段を上り切り、エアロックを抜けて2階層に到着した。

 そこからはウーマに乗り込んで1階層と同じように2階層の中心に向けて進んでいった。


 2階層の中心には以前と同じでちゃんと泉があったのでそこの水を空き樽に採りキューブにしまっておいた。ここの水は飲んでもおいしいけれど、料理に使ってもおいしいんだよなー。



 水を汲み終えてウーマに戻ってさらに1時間ジャングルをなぎ払って進み3階層への階段に到着した。


 午前10時。3階層のエアロックを抜けて3階層に到着。

 3階層の中心にあるのは前回は白い御影石で出来た四阿にエリクシールの入っていた宝箱があったがさすがにそう簡単に高級品の入った宝箱が復活することはないだろう。それでも何かあるかもしれないと期待を込めてウーマを進ませ中央の空き地に出たところ、白い四阿が空き地の真ん中にちゃんと建っていた。


 ウーマを降りて四阿に駆け寄ったところ、磨き上げられた白い御影石の床の上に銅の宝箱が置かれていた。


「またあった!」

「やっぱりあの輝く水薬かな?」

「そうじゃないかな。開けて見よう」


 宝箱にはカギはなくフタを開けたら中にちゃんとエリクシールが3本入っていた。

「良かったじゃない。これでエドもドーラちゃんも輝く水薬を持てるから」

「うん。それじゃあ、俺は要らないから、エリカたち3人で1本ずつ」

「エド。なんで自分で持たないの?」

「この前も言ったけれど、俺はおそらくこの水薬が必要となるようなケガも病気もしないから。エリカたちの方がそういう意味では危険なわけだから持っててくれ」


 なんのかんのと言って結局エリカたちにエリクシールを渡しておいた。


 その後、ウーマに乗り込んで階段までの1時間で昼食を済ませておいた。


 午後零時。階段前に到着したウーマから降りて階段を上って行き30分で4階層のエアロックを抜けた。


 最初に来た時はモニュメント、前回来た時は4階層の中心には石板があったが、今回は何があるのかはちょっと想像がつかない。


 1時間のウーマによるジャングルのなぎ倒しの後、4階層中央の空き地に到着した。

 モニュメントは予想通りなく、前回同様石板が置かれているようだった。


 遠目では変わったところはなかったが、とりあえず石板の前まで行ってよく見たら、石板の文字が今まで4柱の神を称えていたが、今回は、

『われを称え唱えよ。青き夜明けの神ミスル・シャフー』

『われを称え唱えよ。青き夜明けの神ミスル・シャフー』

『われを称え唱えよ。青き夜明けの神ミスル・シャフー』

『われを称え唱えよ。青き夜明けの神ミスル・シャフー』

 と刻まれていてあとの3柱の神々を称える言葉はどこにもなかった。


 俺はミスル・シャフーの使徒なんだし、嫌も応もない。

 なんであれ5人で呪文を唱えておいた。


 再度ウーマに乗り込んで階段を目指し1時間後、5階層への階段前に到着した。時刻は午後2時半。

「いくぞ!」

「ちゃんと通れるかな?」

「今回は通れるような気がするんだよなー」


 30分かけて階段を上りエアロックの前のたどり着いた。バトンの穴に腰に下げたバトンを挿入したところ、カチリと音がして後ろの扉が音もなく閉まり、正面の壁が音もなく開いた。


「やったわね!」

「ただの勘だったけど当たって良かった」


 扉の先はどうもこれまでのジャングルとは毛色の違う森だか林のようだ。

 扉を抜けてよく見ると確かに普通の雑木林。

 上を見上げたところ、今までの階層と違って天井がなかった! 代わりにあったのは青空だった。


「天井が見当たらないんだけど?」

「天井が空!」


 13階層の戻ってしまったのかと思って後ろを振り返ったら、ちゃんと扉はあるし、13階層の壁とは明らかに異なる壁があった。その代り、何というか柱の壁と感じがなんとなく異なるようなそうでもないような。


 なんであれこの感じだと、向こう側まで行って階段があったとしても、上り切ることはまず不可能。つまりこの5階層が柱の最上階層ということになる。


「とにかくこの階層の真ん中を目指して行こう。そうすれば何かが分かるかもしれない」

「それしかないわよね」


 ウーマをキューブから出して乗り込み、まっすぐ真ん中と思われる方向に向けてウーマを進ませた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る