第314話 ドリス戴冠式2
夕食会で、ドリスがウーマの風呂に入りたいと言い出したので夕食会が終わった後、着替えを持ってくるように言っておいた。
着替えはウーマまで侍女に持ってこさせるということで、夕食会を終えて、俺たちはぞろぞろとウーマに戻っていった。
ウーマに戻る間、以前ドリスたちが使っていた部屋を今は大使殿たちが使っていることをドリスにことわっておいた。じゃないと、気を悪くするかもしれないからな。ドリスは別に気にする風ではなかったので一安心。
ウーマの中に入り、ペラをのぞく女子たち10名がソロゾロと脱衣場の中に入っていった。何となく壮観ではある。
ウーマの中では外の音がほとんど聞こえないのでサイドハッチを開けて侍女がドリスたちの着替を持ってくるのを待っていたら、それほど待つことなく侍女が荷物を持ってきた。
俺は脱衣場から女子たちが浴室に入っていったころ合いを見計らって脱衣場の中に荷物を置いておいた。たぶん客観的にはガラスの向うは見てはいませんよ。
残った男3人は、何もすることはなかったので、ソファーでボーっとしていたのだが、風呂上がりに果物を出してやろうと思って、パパイヤだかマンゴーをペラに切ってもらい大皿に盛り付けた。少しの間でも冷やしておこうと食料庫の中に置いておいた。
風呂の時間は結構長くて40分ほどしてみんな脱衣場から出てきたので食料庫から大皿を取り出して食堂のテーブルに置いた。立ち食いで銘々皿を手に持ち、大皿から大スプーンですくってからフォークで食べた。
皿の中のものがなくなったところでドリスたち4人が帰っていったので、後片付けはエリカたちに任せて男子3人で風呂に入った。
今日は女王陛下と大使殿=王女殿下のエキスがブレンドされていることをオブラートに包んで二人に説明しておいた。もちろん二人とも感激していた。若いなー。
お肌ツヤツヤで風呂から上がったら、エリカたちは自室に戻ったみたいでペラしか居間にいなかった。王城内といっても何が起きるか分からないのでペラは一応警戒しておくそうだ。
もういい時間だったので、俺たちも自室に戻っていった。
翌朝。戴冠式当日。
城の本棟で7時に朝食を準備しているという話だったので、朝の準備を終えた俺たちは本棟まで歩いていき、食堂まで侍女に案内された。今日のドリスは戴冠式がらみで忙しいらしく食事は俺たちだけだった。
「「いただきます」」
結構豪華な朝食を味わい、俺たちはウーマに引き上げた。
戴冠式は10時から城の本棟内の大広間で開かれるので、式の30分前までに本棟の玄関ホールに来てくれと言われている。
ドリスの即位式の時は俺の出番があったが、今日は単純にお客さまなので気は楽だ。
ヨルマン1世の戴冠式では王さまのパレードはなかったが、今回ドリスはパレードをするらしい。あの時と比べ今の方が国が落ち着いているということかもしれない。そういえばヨルマン2世の戴冠式ってあったっけ? 多分あったのだろうが、俺たち呼ばれてないぞ! 今さらいいけど。ヨルマン2世の逃げた先はカルネリアだったのだろうが、今何してるのかなー? 元気にしてるかなー? 今度遭ったらギャフンと言わせてやるからな!
ウーマに戻った俺たちは式用の衣装に着替えた。
戴冠式には大使殿のおつきの4人は出席できないのでウーマでお留守番だ。戴冠式後のドリスのパレードを俺たちと一緒に見学するくらいだ。何も隠すようなものはウーマの中にはないので俺たちは気にしてはいなかったが、4人は律儀にもウーマの外で待っているという。そのあたりはけじめだし。好感は持てる。
各人ちゃんと着替え終わったところで全員ウーマを降り、4人を残して本棟の玄関に向かった。
ホールに入ったところまだ少し早かったがちゃんと侍女が待っていて、控室に連れていかれた。
父さんも招かれているはずだけど、控室には俺たち6人だけだった。
そうやって控室で待っていたら侍女がやってきた。戴冠式が始まるようだ。
侍女に連れられ、またもぞろぞろ歩いていって入ったことあるようなないような部屋というか大広間に連れていかれた。よく見れば玉座の間だった。
玉座の間の中は、奥の方が一段高くなったステージになっていて、既にかなりの人がステージの手前で控えていた。即位式の時とは違って今回は国内からほとんどの貴族を集めたのだろうから人数も多いわけだ。
俺たちは俺たちに気づくと深々と礼をする彼ら彼女らの間を縫ってそのステージの一番近くに案内された。俗にいうかぶりつき席、ないしは砂かぶり席だ。生前半裸の女性が棒の周りで踊るのを海外出張時接待で見に行ったことをしばらくぶりに思い出した。あれは良かったなー。その後色々あったし。
なんであれ俺はヨーネフリッツ王国における序列一位なので席はないが特等席の位置に案内されたというわけだ。
そこからドーラと一緒になって父さんがいないか目で探したが見つからなかった。
「父さん見当たらないね」
「そうだな」
そうこうしながらしばらく待っていたら赤地のビロードに金糸で見事に刺繍されたケープをまとったドリスがステージの奥から2名の侍女を引き連れて現れた。二人の侍女はそれぞれ王冠と王笏の載ったお盆を捧げ持っている。
いよいよ戴冠式の始まりだ。
侍女が正面を向くドリス前にひざまずき、紫色の布が敷かれたお盆を捧げ上げた。ドリスはそのお盆に載った王冠を両手に取りそれを自分の頭の上に載せた。
次の侍女が王笏の載ったお盆を捧げ上げ、ドリスがその王笏を右手に持った。
そこで大広間に集まった各人が拍手をし、ドリスが椅子に座った。
拍手の中「ドリス・ヨルマン1世万歳!」が沸き起こり、俺たちも大声で唱和した。
その中をドリスは玉座から立ち上がって奥に下がり、俺たちも含めて戴冠式に参加した貴族たちが玉座の間から退室していった。
玉座の間から人がだいぶ少なくなったので俺たちも退散しようとしたら、父さんがちゃんといて俺たちを見つけてやってきた。
「みんな久しぶり」
「エドのお父さん。久しぶりです」「お久しぶりです」「父さんどこにいたのよ?」
「向こうの方に立ってたんだ。人が多くて声をかけられなかった。
これだけの貴族が集まったということは、ヨーネフリッツというかドリス陛下の国は安泰って事なんだろうな」
「そうなんだろうね」
「それで、そちらのお嬢さんは?」
「フリシア王国の王女殿下でツェントルムに大使としてやってきているケイト・エリクセン殿下」
「これはどうも。エドモンド・ライネッケの父親のカール・ライネッケです」
「ケイト・エリクセンです。エドモンド・ライネッケ閣下にはお世話になっています」
「それじゃあ、みんなで通りまで出てパレードを見物しませんか?」
「ぜひ」
結局父さんも合流して、いったん本棟を出てからウーマまで戻り、ウーマの外で留守番していた4人も合流して10人そろってぞろぞろと王城の門まで歩いていった。
昨日王城にやって来る前にも見えたが、招待状と一緒に入っていた案内によると、門を抜けて堀にかかった橋を渡って王城を囲む道に出て、新市街まで出たところにパレード見物のための貴賓席が設けられている。席は決まっていないのでどこに座ってもいい。
貴賓席エリアまでやってきたところ、招待状を見せることなく顔パスで貴賓席エリアに入ることができた。ヨルマン2世の遷都式の時と天と地ほどの扱いの差だ。
俺たちは空いていた席に10人ずらりと座って、パレードがやって来るのを待った。
楽隊がいればいいんだが、そういった物はなく、おそらく王都守備隊らしき一団が行進していった。ちゃんと足並みもそろっている。
「かなり訓練されてるな」と、父さん。
「父さんのところの領軍はどんな感じ?」
「あまりよくはない。正直、ライネッケ遊撃隊のことを覚えているせいか、自分のところの部隊のふがいなさが目に付いてしょうがない」
「ハハハハハ」
「お前のところはどうなんだ?」
「いい線いってるよ」
「聞いた俺がバカだった」
「ハハハハ」
「父さんに話したことあったかもしれないけれど、うちの領軍はエリカが本部長でドーラはエリカの副官やってるんだよ」
「ほうー。エリカちゃんは分かるが、ドーラが副官ねー。大丈夫なのか?」
「しっかりやってるみたいだよ。自分でも勉強してるみたいだし」
「そうなのか? それはドーラを見直した」
「ドーラで思い出したけれど、父さん剣術の鍛錬ちゃんとやってる?」
「俺の剣術のことを何でドーラで思い出す? 失礼な奴だな」
「そんなこと言ってると、今度は剣でもドーラに負けちゃうかもよ」
「ウソだろ?」
「さあ」
500人隊が4つ通り過ぎたあと今後は騎馬隊が50騎ほど続きその後を4頭立ての黒塗りの箱馬車が続いた。ドリスが乗った箱馬車だろう。沿道の拍手もひときわ高まった。馬車の後に騎馬隊が50騎ほど続いてそこがパレードの最後尾だった。
パレードは30分ほどかけて市街を回ってまた貴賓席の前を通り王城に戻っていった。
祝賀パーティーは正午からの予定なので、パレードが終わった後、俺たちは他の貴族たちと一緒に貴賓席を出て王城に戻っていった。
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