第313話 ドリス戴冠式
大使殿たちをサクラダダンジョンに接待して無事ツェントルムに帰った翌日から、日常が始まり、エリカとドーラは領軍本部に出かけていき、俺とケイちゃんとペラはツェントルムの見回りに出かけた。
年が明けた。
ドリスから手紙が届き3月末に戴冠式を開くとのことだった。招待状が俺たち5人の他、大使殿にも送られてきたと聞いたので一緒にブルゲンオイストに行こうということになった。
招待状には式後のパレード、祝賀パーティーなどについての案内も添えられていた。いつぞやの遷都記念とはえらい違いだ。また嫌なことを思い出してしまった。
宿については、王城に用意してくれるということだったので、王城の広場のどこかにウーマを置いてそこで寝泊まりすることにした。そのことについてドリスには手紙を書かなかったが、特に問題はないだろう。
これまで俺たちはこういった正式な席などでいつも同じ服装だったので、そろそろ新しい服を作ろうということになった。
ツェントルムにも服飾店はオープンしてはいるものの、庶民向けの服飾店のため荷が重いかもしれないと思ったが、領内振興のためその店で新しく服を作ることにした。
大使殿も新しく服を作りたいということだったので、一緒にその店に行って寸法を測った。
生地については、オストリンデンからの取り寄せになるということだったので、でき上るまで10日かかったが、縫製もしっかりしていて満足いく仕上がりだった。大いに結構。
ツェントルムの都市としてのサービス力が確実に上がってきている。それを実感できた。
それで、俺の衣装だが、前回のものと見た目はほとんど同じ。寸法を測ってもらって生地見本や形の大まかな見本を見せてもらって適当に選んでいたらそうなってしまった。
出来上がりを届けてもらいウーマで試着したところ、エリカはちろんのことドーラにまでひとこと言われてしまった。ペラだけは似合っていますと言ってくれたんだけどな。ケイちゃんはノーコメントだった。
そういうエリカとドーラの衣装も俺からいわせれば前回のものとそっくりだったが、当然そういったコメントは控えている。人生経験がなせる業だ。
それはそうと、そろそろ新しい胴着を何着か買わないとな。
装飾品については、レメンゲンに頼むのをすっかり忘れていたのだが、カルネリアのハジャルに討ち入った時手に入れた指輪、ペンダント、ネックレスなどの宝飾品を会議室のテーブルに並べて4人に好きなものを選ばせた。
俺には、左手に漆黒の指輪があるから何もほしくないんだモーン。
宝飾品をテーブルの上に並べている時に思いついたのだが、大英博物館は世界各地から略奪した戦利品を飾っているという。ちゃんとした対価を支払った物もあるかもしれないが少なくとも俺の認識ではそうなっている。
ということなので、将来、戦利品博物館を作ってやるのも面白ろそうだ。
ただやみくもに戦うだけでなく、文化的な側面を強調することで俄然やる気が出てくるのだ。
2月に入ってドネスコ大使が着任してきた。大使以下6名の人員でツェントルムでの最上級の宿を提供した。
もちろん歓迎会を開いた。場所は大侯爵邸の食堂だ。
ドネスコ側はなぜか大使以下6人とも女性で、いずれも貴族の子女だった。思惑があるようなないような。
2月中旬。サクラダダンジョンで見つけたトマトとジャガイモについて研究所でトマトから種を取り、ジャガイモは種芋としてそれぞれ植えもらった。俺が栽培したんじゃどんなものでも枯らしてしまうが、研究所に任せておけば夏の初めごろにはジャガイモが、そのあと立派なトマトが収穫できるはず。
どんどん増やしてライネッケ領の特産品にするのだーー! 今のところ領外に積極的に進めるつもりはないけれど、どうせ話題になるなら領外の人間が持ち出して勝手に作ってしまうだろう。だからといって何も文句は言いませんよ。
もちろん、トマトとジャガイモを料理に使っていますよ。トマトは単純なところでトマトサラダ。サンドイッチの具材。スープに入れてちょっとすっぱめのスープ。ジャガイモはポテトチップス、そのまま蒸かしてバタージャガ。純正ポテトサラダに各種のスープ。もう引っ張りだこだ。
特にトマトを入れたサンドイッチが好評だ。生前食べたことがある
わがライネッケ領内はいたって平穏。
そういった中、ドリスの戴冠式の日が近づいてきた。ドリスには戴冠式の前日にフリシア大使一行5人を連れて王城に行くと伝えてある。
3月に入ってハグレア大使が着任してきた。こちらも大使以下6名の人員でツェントルムでの最上級の宿を提供した。ちょうど、ドネスコの公館が完成したので、宿から見れば入れ替わりになった格好だ。ハグレアの公館は4月に入れば完成する。出先でケンカすることはないと思うが両国の公館は少し距離を空けて建てている。
もちろん今回も大侯爵邸の食堂で歓迎会を開いた。
なぜかハグレア大使以下6人とも女性で、いずれも貴族の子女だった。思惑があるようなないような。他国のことなので好きにしてくれとしか言えない。
なんであれ、ドネスコ、ハグレアの大使の件はフリシア騒動の後急いで使者を送ってきた以上、彼らの目当ては、何か起こった時にわれわれの助けを求めたいというところなのだろう。
もちろん助けを求められれば助けに行きますよ。それも見た目だけは無償で。俺の影響力が高まることくらい安い物でしょ?
それに傘下候補を守るのはやがて世界を統べる俺の義務だし。
こうして3月も過ぎていき、ドリスの戴冠式前日となった。
朝食を食べて一度ウーマを降りてから、道に出て、そこでウーマに乗り込んでフリシア公館前で大使殿たち5人を乗せ、オストリンデン、ディアナ経由でブルゲンオイストに向かった。
ドネスコ、ハグレア両国の大使の招待は間に合わなかったらしく招待されていない。それは仕方がないよな。
午後5時過ぎブルゲンオイストの市街に入ったところでウーマから降りてそこから王城に向けて大通りを歩いていった。
通りは明日の戴冠式に向けてすっかりそれらしく春の花などで飾り立てられていて、通りに面した建物の3階からヨルマン王家の旗がはためいていた。
午後6時前に王城に到着した。
顔パスで王城の中に入っていき、先に駐ウーマ場を見つけてそこにウーマを出しておいてそこから王城の本棟に向かった。
本棟の中に入ったらすぐに城の侍女が俺たちを迎えてくれて部屋に案内してくれた。
夕食会を用意してくれているという。
大使殿たちは遠慮していたが、俺が王城に連れていくとドリスに連絡している以上5人も当然人数に入っている。もしそうでなければ、侍女が平然と俺たちを案内するはずないものな。
通された部屋にはドリスと、サリー・ジルベルト以下3人が揃っていた。
俺たちが部屋に入ったらドリスたちが立ち上がって迎えてくれた。
「ドリスも3人も久しぶり」
「久しぶりです。みなさんお元気そうで何より。
フリシアの大使殿もお元気そうで何よりです」
「陛下、ありがとうございます」
席順は、ドリスを中心として4人が並んで座った。
俺たちの方は侍女に勧められる席に着いてたところ、ドリスの向かいに俺が座って、俺の左側にエリカたち4人。俺の右隣が大使殿でその右側があとの4人という並びだ。
料理はテーブルの上に並べられていて、後はグラスにお酒を注ぐだけ。
侍女たちにお酒を注いでもらってまずは、
「「かんぱーい!」」
『かんぱーい』が全員揃ったところが実に喜ばしい。つまりここにいるのはわがファミリーということだ。
乾杯の後は適当に歓談しながら酒を飲み料理をつついた。
ドリスにはフリシアに行って来た話をしておいた。
「リンガレングが20万敵をたおしてしまったんだけど、死体はフリシア軍に丸投げしてしまった。20万体の死体の片づけは大変だったと思う」などど夕食会ではちょっとだけ不謹慎かもしれない話題もあったが、その程度で何か感じるようなヤワな人間はこの場にはいないので全然平気だ。
その後、ドリスが神聖教会の動向について話してくれた。
前回のドリスからの定時連絡からほとんど変わったことはなく、見た目はおとなしくしているという話だった。
ドリスに俺のフリシアに対する戦略を特に伝えていなかったが、俺がフリシア国王につながる大使殿を連れ歩いていることから大まかなことは察しているから大使殿たちがいるこの席で話したのだと思う。俺のこの予想が外れていても大勢には影響はないので構わないけど。
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