第300話 発展。温泉保養所。神聖教会2、魔王討つべし
[まえがき]
とうとうだらだらと300話。
フォロー、☆、コメント、レビュー、ギフト、諸々ありがとうございます。
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順調にわがライネッケ領は発展している。
これまでちまちまと鍛冶工房の隅の炉で鉄を作っていたのだが、溶鉱炉の建設が完了して銑鉄の生産が始まった。
現在は反射炉の建設中だ。この反射炉で作った銑鉄から鋼鉄を作る。
社会科見学で反射炉見学しててよかったぜ。レメンゲンの力なのか、ミスル・シャフーの加護のおかげかどうかわからないが、ほとんど忘れていたはずの記憶がはっきり思い出せるんだよな。
鋼鉄の生産と並行して旋盤、フライス盤といった工作機械の製作だ。
もちろん前世での先端的なものではなく初期的なものだ。それでも機械の部品精度は一気に上がるはず。
その先は、転炉での鋼鉄の大量生産だ。この辺りについてはさすがに真面目に調べたことなどないのではっきりしたことは分からないが、
鋼鉄の生産に目途が立てば鉄道用レールの試験的生産を始める。あと2年もあれば……。
さらに進めば溶鉱炉から直接転炉で鋼鉄の大量生産につながっていくはず。
文明が加速するぞー!
研究所がフル回転だ。
この研究所だが、うわさを聞いた物好きがドンドン集まって農林水産業から鉱業、そして現在の最先端技術である鉄の生産、基礎学問としての数学、物理学、化学、生物学など裾野がドンドン広がっている。
ヨーネフリッツでも大学はあるのだが、主な学問は哲学、音楽、天文学だそうだ。それではちょっと実用的ではない。
高等教育の土台もでき上って来たので、そろそろ領立大学を作ってもいいかもしれない。
懸念している神聖教会からの干渉も全くないまま7月となった。
俺の誕生日は7月1日なのでこれで俺は22歳だ。
誕生日が俺より1日早いエリカは当たり前だが昨日22歳になっている。
全然関係ないけど22歳になったからといってエリカと別れるわけでもなく、仲良くやっていますよ。
22歳といえば前世なら大学4年生。あの頃はよかったなー。とか少しだけ当時のことを思い出したが、良ーく考えなくても今の方が100万倍充実している。
夏になれば役立つかもしれないと思って捨てずにとっていた除雪で集めた雪を中央広場周辺の飲食店や酒場に配り歩いた。雪で肉類や飲み物を冷やすのに大好評だった。
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先日、大使殿たちと温泉保養所に行ってリフレッシュした。
温泉保養所までの移動はウーマだが、お風呂については公開しなかった。だってお風呂に入りに来られたら断れないでしょ?
大使殿とお付きの女性2人までなら許せるけど、お付きの男二人と一緒に風呂に入りたくないもん。
ドーラじゃないけど『ないもん』だもん。
その代り、ウーマの基本スペックである陸上時速30キロ、海上時速10キロについて大使殿に教えておいた。大した理由はなかったんだけど、そのとき教えていた方がいいような気がしたんだよな。
温泉とはいえ、男と一緒に湯舟に浸かることは俺の場合結構珍しいのだが、今回は大使殿のお付きの男二人、マキシミリアム・ミューラーとルーカス・シュミットの3人で風呂に入り、男と男の会話をした。ということもなく、普通の会話をして湯舟に浸かりました。
お風呂の中で彼らに聞いた話だが、大使閣下は8月末に開かれる王太子の成婚式典に参加するために本国に帰り、式典が終わり次第、
ブレスカから、以前俺たちがフリシアを襲撃した時の港、ヘルムスへ船が出ているそうなので比較的旅は楽になるそうだ。ヘルムス-ブレスカ航路は先々月開かれたばかりの航路だそうだ。
大使殿の尽力があったのかは不明だが、なんにせよフリシアとヨーネフリッツの友好関係の証だな。
その船に乗ったとしても式典参加も含め、往復2カ月かかるそうで。帰りは9月末になるという。
飛行機の無いこの世界。大使という仕事も楽じゃない。と、つくづく思うよ。
成婚祝いにポーションでも持たせてやってもいいか。少しでも大使殿の地位が本国で上がるなら安いものだしな。
サウナについては現在男女脱衣場につなげて2棟建設中で、来月オープンの予定になっている。
「「かんぱーい!」」
夕食は完全に飲み会だ。大使殿たちも完全に俺たちのペースになじんでいる。
願わくは、この文化をフリシアに広げてもらいたい。
エールを飲みながら、先ほどの風呂場での話を大使殿下に振ってみた。
「はい。兄上がわが国の有力貴族の娘と結婚することになり、わたしにも成婚の式典に出るよう陛下から書状が届きましたので」
「それを聞いた以上、何かお祝いの品を用意しないとな」
帰省土産にポーションを考えていたが、王太子の成婚祝いにちょうどいい。
「そのようなお心遣いは無用です」
「ここはいなかですから大したものは用意できないので、そちらこそ遠慮なさらず」
「わかりました。お気遣い感謝します」
「ところで、フリシアの名物料理ってなんです?」
「際立っておいしいものはないかもしれません。
といいますか、
特に閣下の作られる料理にかなう料理はフリシアに限らずどこにもないのではないでしょうか」
「ハハハハ。それはどうも。単純に素材がいいだけなんですけどね」
「またご謙遜を」
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そのころ。神聖教会の総大主教の呼びかけ『魔王討つべし』『魔王領を解放する』に応える機運が西方諸国で急速に高まっていった。もちろんタダで魔王を討とうという酔狂な国など存在しないため、ニンジンが用意されている。すなわち、魔王の国への経路上の国の略奪、蹂躙だ。
どの国も真面目に魔王と戦うつもりはさらさらなく、どこかの国が魔王と戦えば十分と考えていた。さらにいえば、適当に略奪、蹂躙したあとはそのまま帰国することも視野に入れていた。ただ、欠けていたのは自分たちが何の成果も得ずに敗北するかもしれないという一点だけである。
どこかの世界史における宗教戦争そのものである。
盟主不在のまま、各国は派兵の準備を進めていった。そして各国だけにとどまらず、各地の傭兵団、個人で一攫千金を狙うならず者までこの聖戦に参加する準備を進めた。
神聖教会は15万の兵がフリシア、ヨーネフリッツ本土を蹂躙しつつライネッケ領に押し寄せるとみていた。
この情報をフリシアではある程度掴んではいたが、西方諸国といえども国内を他国の兵を黙って通過させることは考えづらく、その信ぴょう性について疑問をいだいていた。
さらに8月末には王太子の成婚が控えていた関係でフリシア国内はその祝賀ムードが漂っていたこともあり、王城からは西側の国境に警戒を強めるよう通達するにとどめ、従前を超える対策がとられることはなかった。
こちらはハジャルの丘のふもと。
金の御子は錬成なった赤、青、黒の3人の御子をライネッケ領に派遣してエドモンド・ライネッケと彼の眷属、できれば大グモについて探らせようと考えていた。しかし、総大主教は西方諸国連合軍がフリシアを蹴散らしヨーネフリッツになだれ込んだ時十分錬成された3人の御子を投入することでライネッケに打撃を与える腹積もりだったため、ライネッケ領への3人の御子の派遣は取りやめ、さらなる錬成を続けることになった。
[あとがき]
風 22歳の別れ https://www.youtube.com/watch?v=5Cj4UlfzSVc
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