第261話 作戦会議2
ウーマの中の俺の執務室。
俺とエリカとペラの3人で旧ヨルマン領制圧作戦の骨子が決まったところで細部を詰めていく。
「次はもう少し詳しく考えてみることにしよう」
「うん」「はい」
「まずは、ゲルタ城塞奪取作戦だ」
「うん」「はい」
「作戦と言っているけど、すごく単純だけどな。
まずウーマに乗った俺たちはツェントルムを出てまっすぐゲルタ城塞に向かい、リンガレングを東門前に立たせたうえで降伏を迫る。平時の今、ゲルタ守備隊の兵力はおそらく1個500人隊、500程度のはずだ」
「途中の都市を無視して進んで大丈夫かな?」
「各都市に駐屯している領兵は多くて数百。こっちの兵力はウーマと領兵2個500人隊+エルフの500人隊だ。ブルゲンオイストには1000を超える兵がいるかも知れないが、俺たちは素通りするし、向うからすれば俺たちに野戦を挑むなど自殺行為だ」
「そうよね」
「早馬を出されて警戒されても別に構わないしな」
「うん。それは分かる」
「ゲルタ守備隊なんだけど、彼らの中には俺たちのことを知っている兵隊がまだかなりいるはずだ。俺たちが開門を迫れば門は開く。と、思う」
「なるほど。無駄死にしたくない者は降伏するでしょうね」
「万が一、門が開かないようなら実力行使で門を破壊して守備隊本部に向かう。旧ヨルマン領を手に入れてしまえば、東門側は内側になるわけから壊しても差し支えないしな」
「そこまでしなくても、門の前で待っていれば向こうから降伏すると言ってきそうだものね」
「うん。守備隊長がよほど無能じゃない限り降伏するだろう。
ゲルタが降伏したら、さっき言ったようにウーマを先頭に、降伏したゲルタの兵隊を連れてブルゲンオイストに向かう」
「ゲルタには兵隊を置かないの?」
「うちの2個500人隊とエルフの500人隊を置こうと思う」
「それなら1万人の兵隊が来ても1カ月は耐えられるわね」
「ウーマが迫るだけでブルゲンオイストは簡単に降伏すると思うけど、もし城にこもられたら、ウーマで門を壊してしまえばそれで降伏するだろう」
「確かにそうね」
「ブルゲンオイストが陥ちたら、騎馬隊が手に入るはずだから、ディアナ、オストリンデン、ブレスカ、カディフ、サルダナ各市庁舎に使者を送って降伏を迫る。
素直に降伏するならよし。そうでないならブルゲンオイスト同様にウーマを先頭にゲルタ守備隊を連れて行き、再度降伏を迫る」
「それでも降伏しなかったら、ウーマで市庁舎に乗り込んで市長以下を捕まえればいいんだよね?」
「そういうこと」
「細かいところで問題は起こると思うけれど、何とかなりそうだろ?」
「うん。何とかなりそう。
だけど、いつかあったように港から敵兵に上陸されたら困らない?」
「それは困るけれど、ヨーネフリッツ側がそういった対応できるようになるには俺たちが旧ヨルマン領を制圧してから1カ月以上かかるだろう。
そのころには旧ヨルマン領も落ち着いているし、港に連絡用の騎兵を置いておけば、いつかのように迎え撃てるだろう。やって来てくれれば、それはそれでいいんじゃないか?」
「確かにそうだけど、それくらいなら、いつかフリシアの海軍拠点に行った時みたいに、こっちからヨーネフリッツの北大洋と南大洋、両方の艦隊拠点に出向いてもいいんじゃない? 10日もあれば十分だし」
「沈めてしまうのは簡単だけど、フリシア、ドネスコ、どちらもヨーネフリッツ同様、戦前の水準まで軍艦の数は戻っていると思うんだよ。ヨーネフリッツの軍艦をほとんど沈めてしまうと、ヨーネフリッツ本土沿岸がフリシア、ドネスコに狙われかねない」
「あー、そうか。そうよね。
でも、ヨーネフリッツの軍艦が生きてたら、旧ヨルマン領がわたしたちの手に落ちてからのヨーネフリッツの向けの商船がヨーネフリッツの軍艦に捕まるんじゃない?」
「確かにヨーネフリッツと戦争状態になるわけだから、それはあるな。
ヨーネフリッツの軍艦をあらから沈めなくてもヨーネフリッツの軍艦が
「マスター、よろしいでしょうか?」
「おっ。ペラ何かいい案があるか?」
「ウーマでヨーネフリッツの艦隊拠点に上陸して交渉してはどうでしょう?
ライネッケ領の商船を襲うようなら艦隊を殲滅する。そうなればフリシア、ドネスコに沿岸が荒らされ、ヨーネフリッツの商船もただでは済まないと言えば向こうも考えるのではないでしょうか?」
「確かに。俺たちはいつでもヨーネフリッツの艦隊を沈められるんだものな。それでいくか」
「エド、軍艦のことはそれでいいとして、ことを構えた以上、どこで終わらせるか決めておかないとマズくない? このまま
さすがはエリカだ。戦争の本質を突いてくる。
「今はまだゲルタからハルネシアまでを占領するには兵隊が足りないからな。旧ヨルマン領を手に入れたところでいったん手を止める。
そっちはそれでいいけど、父さんのライネッケ伯爵領をヨーネフリッツがどうするかが問題だ」
「確かにそうね」
「
ヨーネフリッツの国軍は10万として自由に動かせるのはおそらく3万。領軍も合わせれば動かせるの兵力は2、3万はあるだろうが、
とはいえ、父さんのところの領都ゾーイはゲルタのような城塞都市じゃないから国軍が1万で攻めてきても防ぎきれない」
「じゃあ、どうするの? ゾーイまでウーマを進める?」
「いや、その前に停戦の使者をハルネシアに送る。
「停戦案が蹴られたら?」
「停戦を受け入れていただくため、ライネッケ侯爵が直々かつてゲルタ城塞前でドネスコ、フリシア連合軍3万を文字通り消し去った部下を引き連れ王城に直接うかがうでしょう。とでも使者に言わせておけばいいだろう」
「さすがにアノ話くらい聞いてるでしょうし、本人が知らなくても周りが知っているでしょうしね」
「それでも停戦を断るなら、ウーマで乗り込んで王城を打ち壊す」
「それもアリだわよね。こっちにはドリスだっているんだし」
「そこで、ドリスを持ちだして退位を迫るのも手だろうな。
でも、その前に俺たちが動いて旧ヨルマン領が陥ちたとなると、目先の利く領主なら、俺たちに媚を売るため擦り寄ってくるだろ?」
「とばっちりは受けたくないでしょうしね」
「そうやって揺さぶりをかけて、頃合いを見てドリスを旗印にハルネシアまで行進すれば王城を明け渡すんじゃないか?」
「いいんじゃない」
「ペラ、何かあるかな?」
「はい。いいえ、ありません」
作戦が決まったところで午後からドリスたちも入れて全員に説明した。
「作戦の決行は1カ月後。まだ麦の刈り入れの最中だろうが、大規模な戦いは起きないはずなので大丈夫だろう。
エリカは部隊に伝えておいてくれ」
「了解」
「ケイちゃんは、エルフの里に使者を送るから、兵士を500人送ってくれるよう手紙を書いてくれ」
「はい」
「ドリスの方で何かある?」
「いえ」
「地方領主とヨーネフリッツの王領の代官次第だけど、早ければ今年中にハルネシアからヨルマン2世を追いだしてヨーネフリッツ全土を回復できるかもしれないからドリスたちはそのつもりで」
「はい!」
「マスター、いいでしょうか?」
「なんだ?」
「ドネスコ、フリシアの積極的な介入はないと思いますが、カルネリアはヨーネフリッツの親交国ですので動向を注目する必要があるのではないでしょうか?」
「確かに。直接の軍事介入はないかもしれないが、神聖教会教徒を使ってなにかしでかす可能性もある。とはいえ、今の段階ではこちらからは何もできないから、意識だけはしておこう」
「はい」
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