第200話 再会3。久しぶりのウーマ
[まえがき]
とうとう200話。無事戦記物らしくなってきました。
フォロー、☆、コメント等いつもありがとうございます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それで、父さんの方はどうだったの?」
「お、おう。俺の方は領都で兵隊を任されて王都に向かったんだが、あまりいい兵隊じゃなかったんだ。それで途中かなりの兵隊に脱走されてしまった。戦地に行くことが分かっているから気持ちは分かるがな。
そういった状況のなか、いろいろあって本街道を離れて側道から王都の近くまで進んでたら、王都から逃げ出した王族の馬車列に遭ってしまった。馬車列を護衛する騎馬隊に、王都に行かなくていいから護衛しろ。と、言われたんだが、歩兵の俺たちじゃ移動速度も限られかえって足手まといになるから、もし追手が来るならここで阻止しますと言って断ってやった。
実際追手の騎馬隊がやってきたんだが、石を投げつけて殲滅してやった。お前たちの2万5千と比べるべくもないが、そこらへんから部隊の士気がいっきに上がって、それ以降落伍者を出すことなくここまで帰りつけたってわけだ」
「ねえ父さん、クリスおねえちゃんのお父さんも無事なんだよね」
「もちろんだ。ヨゼフは俺の副官としてよくやってくれているぞ」
「あー、良かった」
「それで、父さんたちはこれからどうなるの?」
「任務未達で帰ってきたから、領軍本部からの命令待ちは確定だが、俺とヨゼフはお役御免で、兵隊たちはここにこのままの形で配属されるんじゃないかと思う」
「そうなんだ」
「お前たちが、敵を文字通り殲滅したわけだから、敵の次の攻撃はまずないだろう。派遣隊はもともと寄せ集めの部隊だったから、しばらくしたら部隊はバラバラにされて領内の各所に配属されるんだろう。
それで、お前たちはこれからどうするんだ?」
「何も考えていないけど、とりあえず領都に戻って領主城に顔を出すことになっている」
「何かあるのか?」
「今回の活躍で、さっき守備隊長さんから感謝状をもらったんだけど、それを持っていったら領主さまから報奨金が出るらしい」
「それはそうだろうな。しかし、たった5人で3万近くの敵兵を殲滅できる戦力を野放しにはできないから何らかの形でヨルマン領の組織に取り込もうとするだろうな」
「ありそうだけど、俺たちが取り込まれるってどんな形で?」
「そうだな、一番あり得るのが叙爵だ」
「それって貴族になるって事?」
「そう」
「敵の総数は城壁の上から敵を全望できていたなら容易に予想はできるし、死体の数を数えれば確実だ。2万5千の敵を撃退しただけでも大手柄だ。それが殲滅したとなると一気に子爵、伯爵まであり得るぞ!」
「それが敵の死体はもうないんだよ」
「はあ? 2万5千もの死体はそう簡単には片付かないぞ」
「それが、リンガレングがまとめて焼き払ったんだ」
「焼き払ったー?」
「そう。見事に焼き払った」
「それで、ゲルタの西門の前が焦げ臭かったのか?」
「たぶん、おそらく」
「おまえが嘘を吐くわけないから、そうなんだろう。
そういえば、朝方ゲルタに向かっていたら、変な形の雲が見えたが、あれがそうなのか?」
「そう。一気に焼いたらあんな雲が湧いちゃった。父さんからも見えたんだ。へー」
「へー、じゃなくて。
それじゃあ、敵軍をまとめて焼き殺したってことか?」
「いや。リンガレングは敵兵を死体の回収ができなくなるほど切り刻んでしまったんだけど、それじゃあ、腐って疫病でも
「それはいい判断と思うが、その気になれば敵軍を丸ごと焼けたってことじゃないか?」
「うん。その気になればね」
「頭が痛くなるような話だが、実話なんだよな」
「ホントの話」
「それはもう済んだことだからいいとして、エドが叙爵されるとなると、エドはうちの4男だから、別の家が立つことになるな。いやー、まいったまいった。アハハハハ。
大体のことは分かった。俺は部隊の連中のところに戻るから。おまえたちも無茶はしないでやっていくんだぞ」
「「うん」」
「それではみなさん、エドとドーラのことをよろしくお願いします」
「「はい」」
そう言って父さんは部屋を出て行った。
「エドのお父さん、カッコよかったわねー」
「そうかい?」
「うん。うちのお父さんの場合、恰幅だけは立派なんだけどカッコいいってわけじゃないから」
「商会長なら恰幅も大事じゃないか?」
「本人も痩せる気はないみたいでそう言ってるわ」
「それはそれでいいんじゃないか。
そろそろ俺たちも帰ろうか」
「うん」
「それじゃあ、どっち方向に向かって行ってウーマを出す?」
「西の方向がいいんじゃない。どう見ても人は少なそうだし。臭いももう消えてるんじゃない?」
「じゃあそうしよう」
俺たちも部屋を出て、建物の前の衛兵に軽く会釈してから北市街と南市街の真ん中を東西に街を縦断する通路に向かった。
西門が開いていない可能性はあったのだが、父さんの部隊を収容したせいか門は開け放たれていたものの衛兵は立っていなかった。
西門から一歩外に出て前方を眺めると西に続く街道上には馬車も人も見えなかった。その代り、2、3人から成る兵隊の小グループが、かなりの数戦場跡を見回っていた。
変な臭いはない。兵隊たちが戦場跡を見回っているところを見ると、リンガレングが焼き払ったことで赤くなってしまった地表の熱は下がっているのだろう。
ゲルタの西門を出た俺たちは、北でも南でも、どっちに向かってもよかったが、一度まっすぐ街道上を西に進みそれから山の裾野沿いの荒れ地を南の方に向かって歩いて行った。
1時間ほど歩いたら、戦場跡はもちろん、山並みに遮られてゲルタの城壁が見えなくなったのでそこでウーマをキューブから出した。
ウーマに乗り込んですぐに女性陣は洗濯物を持って風呂に入り、ペラはペラで、しばらくメンテナンスボックスに入っていなかったので入ってくると言い、寝室に行った。
何もすることがない俺は居間のソファーに座ってエリカたちが風呂から上がるのを待った。
30分ほどで3人が風呂から上がってきたので、俺はバナナの房を応接セットのテーブルの上に置いてから風呂に入った。
フー。生き返る。
久しぶりのエキス風呂だ。エキスのおかげで俺の肌もピチピチしているようなそうでもないような。
とにかく生き返ったのは確かだ。
湯舟から上がってボディーソープで体をしっかり洗い、頭もシャンプーでしっかり洗った。俺の場合リンスはしてもしなくてもあまり差はないが、女性陣と同じ髪の匂いをさせるのも意味があるような気がしたのでリンスもしておいた。
その辺りが素人童貞の悲しい性なのかもしれない。何を俺が考えていようが、俺の内面は誰にも分らないのでセーフ。
心身の心はどうか分からないが、すっかり身の方はきれいになった俺はもう一度湯舟に入って肩まで浸かり、100数えてから湯舟から上がった。ウーマのフカフカタオルで体を拭いて下着を着けて普段着を着てから風呂を出た。
風呂を出る時、洗濯機は回っていたので、俺の洗濯はまだだ。ウーマに頼めばそのうち洗濯機が増設されないだろうか?
体がまだ少し濡れている中で服を着たわけだし頭髪も濡れているので風呂から出たところでドライヤーで体全体を乾かした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます