第199話 領主城。再会2
エドモンドたちとカールが会議室で話しているころ。
ここは領都ブルゲンオイストの領主城にある辺境伯の執務室。
室内の応接セットで、ヨルマン辺境伯は向かいに座る領軍をまとめるヘプナー伯爵から敵軍の来寇についての報告を聞いていた。
「今朝がたご報告した通り、昨夜ゲルタの物見が敵を発見しており、今日の朝には城壁前に現れるとの予想です」
「うむ」
「現在のゲルタ守備隊の兵員数は1800。敵の初撃を持ちこたえてくれれば、ゲルタへの兵力増強と物資の蓄積は順調ですので持久は可能と考えます」
「了解した。
もし、今日ゲルタが破られた場合、敵を防ぐ手立てはあるのか?」
「敵の規模にもよりますが、ゲルタが陥落するまでに、どれだけ敵を削れるかに依ります」
「それはつまり、ゲルタが徹底抗戦するということではないか?」
「その通りです。
現在のゲルタ守備隊員は領軍の最精鋭部隊です。そして守備隊長のホト子爵は信頼できる男です。間違いはありません」
「そうか。分かった。きみの言葉を信じ、彼らの奮戦に期待しよう。
敵の攻撃が朝方から始まっていたなら、そろそろ初報が届けられてもいいころだが」
「そうですね」
『失礼します。ゲルタから早馬で伝令が到着しました。至急の報告だそうです』
「通せ」
当番兵に案内され伝令が会議室に入室した。
「失礼します」
「それで、報告内容は?」
「報告します。
今朝がたゲルタの西方に現れた敵軍の概数は3万。わが方はこれを殲滅しました。なお、敵の兵力の概数以外の詳細は不明です」
この報告に対して、ヘプナー伯爵が
「今、敵軍は3万との報告だったが確かなのか?」
「はい。いいえ約3万であります」
「分かった。それで約3万の敵兵を殲滅した。という報告内容でいいのかな?」
「はい。その通りであります」
「ゲルタには今現在1800の兵しかいないと思ったが、1800で3万の敵を撃退でもなく殲滅したというのか?」
「はい。いいえ、守備隊が敵と交戦する前に傭兵団によって殲滅されました。従って守備隊は一切戦闘には関与していません。
この件につきましては、ゲルタ守備隊隊長からの報告書が本日中に届けられます」
「きみは、その傭兵団が敵を殲滅する様子を見ていたのかね?」
「はい。ほんの短時間で敵軍が文字通り殲滅されて行く様を城壁の上から見ていました」
「その傭兵団の規模は?」
「5人です」
「今わたしの耳に5人と聞こえたのだが、もう一度その傭兵団の規模を教えてもらえるかな」
「はい。5人です。間違いありません」
「ふー。
5人で3万人を殲滅する。しかも短時間で? きみは何かの病気なのかね?」
「はい。いいえ、自分はいたって正常です。さらに付け加えると、実際に戦ったのはその5人のうち一人だけのようでした」
「はー。よく分かった。下がって休んでくれ」
「はい」
伝令が退出した後しばらく会議室に沈黙が続いた。
「ふー。
領軍の最精鋭をゲルタに置いていたつもりでしたが申し訳ありません」
「いや、きみのせいではないから」
「しかし、今の報告のどこを信じろと」
「まあ、事実であって欲しいのは、わたしも同じなんだがね」
「それはまあ、わたしもそうです」
「しかし、状況が分からないでは問題だな。
もう少ししたらゲルタの守備隊長から報告書が届くというのは本当だろうからそれを待つしかないようだな。とにかく持ちこたえてくれ。それだけだ」
「そうですね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
守備隊本部で俺とドーラは父さんと再会できた。
さらに守備隊長の計らいで本部の一室を借り、父さんと話ができ、とりあえずエリカたちを父さんに紹介したところだ。
「しかし、美人ばかりどうやったんだ?」
「たまたまが重なっただけだから」
「まあいいが。
それで何がどうして、どうなったんだ?」
「まず俺たちはサクラダダンジョンのトップチームなんだよ」
「トップチームという意味は、トップチームだよな?」
「ダンジョンワーカーの中で一番深いところまで潜っているのが俺たちだってこと。俺たちが普段いる階層にはおそらく俺たち以外たどり着けない」
「とにかくすごいチームということだ」
「うん。そういうこと」
「たった数カ月で?」
「いろいろあって成っちゃったんだ」
「成っちゃったんだな」
「いちどロジナ村に帰ったとき父さんが領都に行ったって話だったんだ。
それでダンジョンの方は一段落したんで父さんもいるし領都に行ってみようかって行ってみたら、領主城で父さんは兵隊を連れて王都に行っているって聞いたんだ。
そのあと王都はひどいことになっているんじゃないかってうわさをきいたもので、何でもいいからどうなっているのか知りたくて傭兵ギルドに登録したわけ。そこでゲルタに敵軍が攻めてきそうだって話を聞いて今度はここにやってきたんだ。
俺たちで敵軍を何とかしようと思って敵が来るのを待っていたら今朝やってきたので、殲滅した。というのが俺の方の話」
「なあエド。その、敵軍を殲滅したというのはどういうことなんだ?」
「敵が攻めてきたから文字通り皆殺しにしてたってこと。ちょっとやり過ぎたかもしれないけどやっちゃったものは仕方ないし」
「敵って、どれくらいいたんだ?」
「数えていないけど2、3万くらいはいたんじゃないかな」
「マスター。正確ではありませんが、わたしは2万5千までは数えています」
「それくらい、いたみたいだよ」
「それをここの守備隊とこの5人で」
「守備隊の人は結局城壁の上に石とか矢を運んだ以外何もしなくて、俺たちというか、ここにはいないというかちょっと複雑なんだけど、リンガレングというクモ型のカラクリがいるんだけど。そのリンガレングとペラとで殲滅しちゃったんだ」
「しちゃったのか?」
「うん。しちゃったんだ」
「ドーラ?」
「うん。しちゃったの」
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