第147話 柱内4階層。カール・ライネッケ、領都集合
俺たちは柱内4階層の中心部に立っていたモニュメントの前で1泊することにした。
モニュメントからウーマに戻ったあと、すぐに女子たちは入浴し、続いて俺も風呂に入りエキスを再注入した。
湯舟に浸かってリフレッシュした俺は夕食の準備に取り掛かった。取り掛かる前にミソ醤油の出現を期待して食料庫の中を点検してみたが、今回は目新しいものは見つからなかった。
今日のメインディッシュは風呂の中で考えたんだが、ハンバーグを作ろうと思っている。
牛肉と豚肉をなるべく小さく刻んで練り合わせるように混ぜ合わせ、つなぎに塊パンの表面を削ぎ落として粉にしたものを入れる。そこに玉ねぎのみじん切りを加えて、塩コショウ、それに化学調味料をパッパッパ。と振る。さらに味をまろやかにするため砂糖も少々加える。
つなぎに玉子を入れた方が良さそう感じがしたのだが玉子はない。仕方ないので、とにかくよく混ぜ合わせるようにこねる、つかむ。つかむとムニュっと指の隙間からペーストが出てくる。そして、こねる、つかむ。
ペラが横で見ている中、こねる、つかむ。こねる、つかむ。
ねちょねちょになったところで、小判型に形を作ってまな板の上に並べていき、全部でき上ったところでフライパンを加熱板で熱しバターを溶かしてその上に生ハンバーグを並べていく。
フライパンにフタをしてしばらくジュージュー音を聞き、フタを開けて表側が熱で白くなってきていたらヘラとトングで潰れないよう慎重にひっくり返していく。表に返った面に薄っすらと焦げ目できている。
そしてフタをしてしばらく待つ。待つ。
そろそろいいなと思ったら、フタを取って加熱板を『強』にして約1分。
そこで加熱板切って、あらかじめ並べていた平皿4枚にハンバーグを2個ずつ並べていく。
ハンバーグのタレとして、肉汁の残る先ほどのフライパンの隅にケチャップを入れ、そこに砂糖を若干加え、さらにコショウを振りかけ一度沸騰させた。
ここで赤ワインを入れればよかったと作りながら思ったのだが、ない物は仕方ない。今度仕入れておこう。
皿に盛ったハンバーグの上にハンバーグソースをかけてハンバーグは完成。
冷めないうちに一度キューブに収納しておく。
さて、ハンバーグの付け合わせだが何にしようかと考えたところで、トウモロコシを茹でることにした。買ってきてキューブに入っているトウモロコシは皮がついたものなので、薄皮を残して外側の皮をむき、お湯を入れて塩を入れ沸騰した鍋に投入して10分。
トングで取り出し、少し冷めるのを待って薄皮をむき、そのあと厚めの輪切りにして先ほどのハンバーグの横に並べておいた。
皿の上に、黄色がいい塩梅だが、ちょっと物足りない。
俺は助手のペラに言ってニンジンを水洗いさせ、簡単に皮をむいて厚めの短冊に切ってもらった。俺が下ごしらえするより格段に速かった。下ごしらえはペラに任せられる。
出来上がったニンジンの厚手の短冊はバターを入れた中型フライパンで焼いてやった。
ニンジンに火が通ったとことで皿に盛ってやる。
彩として赤が欲しかったのだが、橙色だった。これは仕方ない。トウモロコシは薄黄色だが一応は黄色だし、ハンバーグソースは赤いので見た目はそれなりだ。ブロッコリーを入れれば緑が増えるのだが、そこまではいいだろうということで完成とした。
夕食にはハンバーグのほかにいつもの具沢山スープとパンが付く。
夕食の準備を終え、テーブルにお皿やその他の食器をペラと並べてエリカとケイちゃんを呼んだ。
俺だけ料理をしているわけだが、エリカとケイちゃんは後片付けは手伝ってくれるし朝のうち、風呂場の含めてウーマの中の掃除をしてくれている。使加えて俺自身料理を作るのが楽しいので問題は何もない。
「おいしそー」
「すごいです」
「「いただきます!」」
夕食を食べながら。
「少しだけエドが作っているところを見てたけど、すごく面倒なことしてたじゃない」
「肉を小さく切ってこねたら軟らかくて野菜も一緒に入れられるしいいかなーとか思ったんだ」
実際料理素人の俺が、レシピなど何も見ずに作ったわけだからある種の驚異ではある。
「実際、すごくおいしい。よく思いついたわよね。これもレメンゲンの力なんだと思うと本当に恐ろしくなるわよね。エドには悪いけど、こういった力の使い方はわたしには大歓迎」
「おいしいと思って食べてくれれば、レメンゲン云々はどうでもよくて俺もうれしいよ」
「それはそうと、そこのモニュメントに書かれていた文字が読めたのは、女神像に適当なお願いをしたからなんじゃない? あの時わたし、何かいいことが起きますようにってお願いしたんだけど」
「俺は何も考えずタダ拝んだだけだったけどな。知らないはずの文字が読めたわけだから、そう考えるしかないだろうな」
「わたしもエドと一緒で何も考えていませんでした。
女神像の力であの文字が読めるようになったのだとしたら、何かの意図があるのではないでしょうか?」
「「意図とは?」」
「女神像、または女神さまが、わたしたちにあの文言を唱えさせたかった。それが女神さまのためなのか、わたしたちのためなのかは分かりませんが、今まで女神さまのおかげでわたしたちは
「それはありそうな話だな」
「言えてるわね」
「とは言っても、これから先、罠が赤く点滅するといったはっきり変わったことが自分に起これば女神さまのおかげと実感できるけれど、なんかの出来事だと、それがあの言葉を唱えたから。とは、言えないけどな」
「それも言えてる。出来事だと真っ先にレメンゲンを疑うものね」
「そもそも、女神像に会えたものレメンゲンのおかげかもしれないしな」
「それもそう」
……。
大好評だったハンバーグの夕食のあとは、デザートは軽めにオレンジにしておいた。
後片付けが終わったところで時刻はまだ午後8時前だったのだが、お風呂にも入り終わっていたので、見張りはリンガレングに任せて各自ベッドにもぐりこんだ。明日は4時起きだな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
エドモンドたちが4階層のモニュメントの前で何やら唱えていたころ。
国王に兵の拠出について直談判するため領都ブルゲンオイストを発ったヨルマン辺境伯一行十数名は、馬車を連ね領境の城塞都市ゲルタを経由してし王都ハルネシアに向かって旅を続けていた。
そのころには領都ブルゲンオイストから領内各地に散らばる騎士爵へ発せられた領都への集合命令書が順に騎士爵の元に届けられ、エドモンドの父カール・ライネッケの元にも届いた。
カールは直ちに従者であるエドモンドの幼馴染クリスの父親ヨゼフ・シュミットにブルゲンオイストに向かうことを告げ準備に入った。
突然の集合命令だったが、カールは領都からの命令書を受け取った2日後、家のことは長男のアルミンに任せヨゼフを連れてロジナ村を発った。
ヨゼフは馬を持っているわけではないので最寄りの駅舎から乗合馬車に乗せ、カール自身は騎乗して馬車のあとについての移動である。
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