第146話 柱内、4階層モニュメント
朝6時から階段を上り始め、前回同様1時間半かかって2階層に到着した。
エアロックの先でウーマをキューブから取り出して、全員乗り込んだところで2階層の中心に向けウーマを進ませた。
ウーマはそこから1時間ジャングルの木々をなぎ倒して2階層の中心部の空き地に出た。
1階層の芝生を敷き詰めたような空き地の真ん中には女神さまが鎮座する
4人でウーマから降りて泉のほとりから泉の中をのぞいたところ、深さは深いところで5メートルくらい。
「きれいな水! 飲めるかな?」
「少しだけ口に含んで変じゃなければ飲めるだろう。もし具合が悪くなっても水薬があるから大丈夫じゃないか。ちょっと俺が味見してみる」
キューブから水飲み用のマグカップを取り出して、ほとりから泉に乗り出して泉の水をすくった。
起き上がって一口だけ口に含んだところ、やや冷たいがおかしなところは何もない水だった。
「飲んだ感じ大丈夫そうだ。
エリカ飲んでみる?」
「うん」
俺はマグカップの中の水を飲み干して、泉に浸けて軽く洗い、水をすくってエリカに渡した。
「この水、すごくおいしいじゃない。
ケイちゃんも飲んでみた方がいいよ」
エリカは俺の渡したマグカップをケイちゃんに渡し、ケイちゃんがそれに口を付けて一口飲んだ。
「ホントにおいしい水です」
ケイちゃんはそのマグカップをペラに渡し、ペラが残った水を全部飲んだ。
ペラには特に感想はなかったようで、何も言わず空になったマグカップ俺に返した。
俺は3人が口を付けたマグカップをそのままキューブにしまっておいた。口元が笑っていたかもしれないがエリカには気づかれなかった。と、思う。
「空樽があればよかったけど、今はないから桶に汲んでとっておこうか」
「そうして」
空いていた桶を2つキューブから取り出して、泉の水を汲んでキューブに入れておいた。
「それじゃあ、ウーマに戻るとするか。
思うに、各階層の中心には空き地があって、何か変わった物があるんじゃないか?」
「わたしもそう思う。
まだ早いから、3階層の中心に行ってみる?」
「そうだな。ケイちゃんはいい?」
「行ってみましょう」
ウーマに乗り込み、3階層への階段を目指してジャングルの木々をなぎ払い1時間。
ちゃんと、3階層に続く階段の登り口前にウーマは到着した。
そこでウーマから降りた俺たちはこれまで通りウーマをキューブに収納して階段を上り始めた。
1時間半ほどで、3階層のエアロックを抜けた。そこでキューブから出したウーマに乗り込んで3階層の中心に向かった。
1時間後、ジャングルを抜けた先に空き地がちゃんとあり、ウーマは3階層の中心部に到着した。到着したのはちょうど正午だったが、ウーマがジャングルの木々をなぎ払っている間に昼食を摂っている。
3階層の空き地の中心にあったのは1階層の中心にあった四阿のような建物だったが、こっちは真っ白な四阿だった。
「今度は白か」
「何があるかな?」
「きっとすごいものがありますよ」
ウーマから降りた俺たち4人は期待しつつ四阿の中に入っていった。
見た感じ白い御影石で出来た四阿の床はピカピカに磨き上げられ、床の真ん中に宝箱が鎮座していた。
宝箱はいつもの銅製の宝箱でざっと見たところカギ穴のないタイプだった。
「何が入っている思う?」
「全然見当つかないな」
「ほとんどの物が手に入っていますし、何なんでしょうね」
「何が入っていてもいいけど、使い方が簡単にわかる物がいいよな。
それじゃあ、フタを取ってみるか」
俺は宝箱のフタに手をかけて持ち上げた。
宝箱の中に入っていたのは、12階層で見つけた水薬、ポーションのガラス瓶に似たガラス瓶が3本。その瓶には液体が入っているのだが、不思議なことにその液体が輝いていた。
「何だと思う?」
「水薬なんでしょうけど、光ってるって、普通じゃないわよね」
「そうとう貴重な水薬じゃないでしょうか?」
そういえば前世で読んだことのあるラノベで、光り輝くポーションが出てきて、そいつはなんでも治してしまう究極のポーション、エリクシールだった。ただ、なんでも治すと言っても死体は生き返らなかった。もしこれがエリクシールだとすれば、相当の価値があると考えていいだろう。あくまでエリクシールとしてだが。前世なら輝く液体となると、チェレンコフだかチャランコフだか放射能を疑うのが普通だものな。
さすがに女神さまがいらっしゃった柱の中で、そんなトンデモ液体が宝箱に入っていることはないだろうから暫定エリクシールと考えておこう。万が一チームメンバーが瀕死の深手を負うようなことがあればためらわずに使う。覚えておこう。
俺についてはレメンゲンの謎の力で守られている可能性が高いので、使うことはまずないな。
「きっと、12階層で見つけた水薬なんかより格段に効く水薬じゃない? 何といってもこんなにきれいに輝いてるんだし」
液体のくせに輝くことは確かにすごいが、それが薬の効能に直結するのかというと、分かりませんと言うのが正しいのだろう。しかし、ものすごい薬だろう。と思わせる演出効果は抜群だ。
「それじゃあ、キューブに入れておこう」
3本の暫定エリクシールをキューブにしまっておいた。
「ここはこれくらいにして、4階層に行ってみるかい?」
「この感じだと、各階層の真ん中にお宝があるんじゃないかな?」
「そんな感じですよね」
「ということは、4階層に行くということでいいんだな?」
「うん」「はい」
ここからだと階段まで約1時間。階段を上るのに1時間半、階層の真ん中まで1時間。全部で3時間半。今の時刻は12時少し過ぎたところなので午後3時半くらいには4階層の中心に到着できる計算だ。
ウーマに戻ったところで出発進行!
ウーマの中に入ってしまえば後1時間は何もすることがない。何か暇つぶしできるものが欲しくなるよな。4階層の真ん中には何かその手のものがあればいいのだが。
1時間、ジャングルの中を突っ切るウーマのスリット越しに、俺は果物を採集していった。もうとんでもない量のバナナとパパイヤだかマンゴーがキューブの中に入っている。
階段下でウーマから降り、1時間半かけて階段を上り切り、4階層にたどり着いた。4階層もこれまでの階層と同じジャングルで、再度ウーマに乗り込んでジャングルの木々をなぎ払いながら4階層の中心部を目指した。
ここでも1時間でウーマは中心部に到着した。
4階層の中心部も芝生を敷き詰めたような空き地で、空き地の中心にはワシントンモニュメントのような4面からなるそれほど大きくはない塔が立っていた。塔自体はネズミ色の花崗岩のようなもので出来ているようだ。
ウーマから降りて塔の前まで行き、塔を調べたところ、各面の人の高さあたりに
その文字なのだが初めて見る文字だったにもかかわらず、文字であるということがわかった上に読めてしまった。文字が読めたのは俺だけでなく、エリカもケイちゃんもだ。
モニュメントの各面に刻まれていた文字は順に、
『われを称え唱えよ。黒き常闇の女神サルム・サメ』
『われを称え唱えよ。青き夜明けの神ミスル・シャフー』
『われを称え唱えよ。白き太陽の神ウド・シャマシュ』
『われを称え唱えよ。赤き黄昏の神アラファト・ネファル(注1)』
「この文字が読めることは不思議だけれど、読めたはいいが意味が全く分からないな?
「黒、青、白、赤。何の意味があるのかなー?」
「唱えろって言うんだから唱えてみるか」
「それしかないわよね」
「唱えてみましょう」
「順番ってあるのかな?」
「全部唱えれば、順番はいいんじゃない」
「そりゃそうだよな。それじゃあ、さっきの順で。ペラはここに刻まれた文字は読めるか?」
「いえ。読めません」
「それじゃあ、俺たちを真似て唱えればいいから」
「はい」
「じゃあ、右回りで、順に唱えて行こう」
「「われを称え唱えよ。黒き常闇の女神サルム・サメ」」
「「われを称え唱えよ。青き夜明けの神ミスル・シャフー」」
「「われを称え唱えよ。白き太陽の神ウド・シャマシュ」」
「「われを称え唱えよ。赤き黄昏の神アラファト・ネファル」」
いちおう全員で唱え終わったのだが何も起こらなかった。
「何も起こらないわね」
「そうですね」
周りを見渡したものの、特に変わったことはなかった。そのとき何も起こっていないと思っていても、どこかで何かが起こっている可能性は否定できない。
「ペラ、何か変わったことに気づかなかったか?」
「いえ。何も」
「仕方ない。今日はここで一泊する? それとも上り階段前まで行く?」
「ここで、一泊でいいんじゃない」
「そうですね」
「じゃあそうするか」
注1:黄昏の神アラファト・ネファル
『闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-』https://kakuyomu.jp/works/1177354054896322020 に登場する最終ボス。作中の名称は黄昏のアラファト・ネファル
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